世界中を驚かせた発明がこれだ!触れるだけで測れる血圧計

2013%e4%b8%96%e7%95%8c%e5%88%9d%e8%a1%80%e5%9c%a7%e8%a8%88image001 本学部電気電子工学科の尾股定夫教授は、指先で触れるだけで血圧が測れる世界初の血圧計を開発することに成功しました。血流を圧迫する必要がないため、運動時の測定、高齢者医療や救急医療、乳幼児・妊婦など周産期医療への活用が可能になるという画期的な発明です。尾股教授のもとには、すでに商品化のオファーが続々と届いており、今、世界中から注目を集めています。
 その血圧計とはどのようなものなのか、開発に至る経緯や今後の抱負について、尾股教授にお話を伺いました。

諦めない強い信念が生み出した世界初の血圧計

 

―この度開発された血圧計は具体的にどのようなものか、ご説明いただけますか。

 原理は、皮膚に接触する発光ダイオード(LED)から近赤外線を毎秒20万回前後照射し、その反射光の波形から血流量の変化を検出するというものです。血液中のヘモグロビンが近赤外線を吸収するため、ヘモグロビンの動きから血流の動きをリアルタイムに読み取れることができます。検出した波の振幅を解析し、独自の換算方法に当てはめて血圧値を出す仕組みになっています。従来の加圧式はカフ(圧迫帯)内の圧を測って血圧値を算出しますが、この血圧計では血流の変化を直接測ることができ、実際との誤差も5%以内で、従来型より高精度の測定が可能になり2013%e4%b8%96%e7%95%8c%e5%88%9d%e8%a1%80%e5%9c%a7%e8%a8%88image004ます。何より、血流を圧迫する必要がないので、家庭での利用はもちろん、今までできなかった運動時の測定や重傷者への救急医療、高齢者医療、乳幼児や妊婦など周産期医療への活用も考えられます。
 試作機は、LEDと光を電気に変える受光素子を一体化した装置で、要となる演算装置などのシステム部は1cm四方と小さく、乾電池で駆動できるのも特長と言えます。

 

―試作機完成に至るまでの道程について、お聞きかせいただけますか。

 既に特許を取得している技術なのですが、私が25年前に研究開発した「位相シフト法」という技術があります。今までにもこれを使って、超音波診断装置や乳癌チェッカーなどの医療機器2013%e4%b8%96%e7%95%8c%e5%88%9d%e8%a1%80%e5%9c%a7%e8%a8%88image022を開発してきました。新方式の血圧計のアイディアも、実は15年も前に考えていたことなのです。企業と共同で研究開発を試みようとしましたが、なかなか上手くいきませんでした。「位相シフト法」の考えを理解してもらえなかったようです。それでしかたなく、自分で試作機を製作することになったわけです。この研究成果を2005年に学会で発表しましたが、そこでも賛同を得ることはできませんでした。むしろ“できるわけがない”という否定に近い評価だったのです。しかし、私には自信がありました。それからずっと独自に開発を続けて、昨年ようやく今の形の試作機に辿りついたのです。

福島から世界に最先端の技術を発信したい

 

―瞬く間に世界から注目を集めることになりましたが、そのきっかけは何だったのですか。

2013%e4%b8%96%e7%95%8c%e5%88%9d%e8%a1%80%e5%9c%a7%e8%a8%88image010 昨年の11月14日から17日にかけてドイツで開かれた国際医療機器展示会(MEDICA)に、乳癌チェッカーとこの血圧計を出展したのがきっかけです。我々のブースは常に人だかりができるくらい大盛況でした。会期中には、血圧計で高いシェアを持つ大手健康機器メーカーが連日展示ブースを訪れていましたから、業界にとっても衝撃的な発明だったのでしょう。デザインが洒落ていたことも、人々の目を惹くのに効果的だったと言えます。乳癌チェッカーもその形を見て、“カワイイ”と大変評判になりました。2月には、アメリカで開催された医療機器関連企業の集まる大規模な展示会「MD&M WEST2013」にも出展2013%e4%b8%96%e7%95%8c%e5%88%9d%e8%a1%80%e5%9c%a7%e8%a8%88image007しましたが、同様に注目を集めました。その反響は未だに続いており、アメリカ・イギリスを始めとする欧米諸国や中国・韓国などからオファーが殺到しています。しかし私としては、血圧計のノウハウは地元福島の企業に技術移転したいと考えています。医療機器産業の活性化は、“アベノミクス”の経済政策の一つにも掲げられているもので、日本のためにも国内での商品化は必須です。同時に福島の活性化に是非とも貢献したい。世界最先端の技術を福島から発信することは、私自身の夢でもあります。

 

 

―今後の研究への抱負についてお聞かせください。

 血圧計のコア技術をチップ化すれば、スマホなどの携帯電話に付けたり、耳の中に入れることもできます。24時間、血圧測定が可能になるというわけです。また、この装置を応用して血糖測定への展開も考えています。原理は血圧計と同じで、反射波を解析し血糖濃度を検出する仕組みです。こちらも運動時の測定が容易になりますし、採血が不要で患者への負担が大幅に軽減されることから、早期開発が望まれています。
2013%e4%b8%96%e7%95%8c%e5%88%9d%e8%a1%80%e5%9c%a7%e8%a8%88image012 位相シフト法は対象物に合わせて信号を変えていく特殊な方法なので、医療機器の開発だけでなく、さまざまなものに応用できると考えています。私の目標は“死ぬまで研究する”こと。わからない、できないと言われることに挑戦するのは、私にとって喜びといっても過言ではありません(笑)。

 

国家資格である臨床工学技士という技術者を目指して

 

―本学部25年度カリキュラムから新たに「臨床工学技士課程」が導入されるそうですが。

 医療技術の進歩に伴い、医療機器も高度化・複雑化していく中で、そうした医療機器を安全に操作し維持管理まで行う医療技術者が求められています。それが国家資格である臨床工学技士です。高度な教育を受けた人材が必要だという医療現場からの要請を受けて、本学部に働きかけました。25年度より本学部も養成校(大学、短期大学、専門学校)の一つになり、この春入学す2013%e8%87%a8%e5%ba%8a%e5%b7%a5%e5%ad%a6%e6%8a%80%e5%a3%abimage014る機械工学科と電気電子工学科の1年次の学生から、その専門課程を履修することができるようになります。養成校において厚生労働大臣の指定する科目を修得し、国家試験に合格すると免許を取得することができます。将来は医療機器メーカーだけでなく、病院や医療施設など活躍の場も広がるでしょう。次世代工学技術研究センターには日本有数の医療機器と3名の医師でもある教授陣が揃っています。こうした絶好の環境の中で学べることは、学生にとっても大変魅力的だと思います。
 しかも日本政府は我が国の復興と経済発展の中で医療機器産業が重要であると、若い皆さんに期待しています。

 

―最後に学生にメッセージをお願いできますか。

2013%e5%b0%be%e8%82%a1%e6%95%99%e6%8e%88image016 大事なことはまず、工学の基礎をしっかり学ぶこと。アメリカでは技術者といえば建築でも機械でも工学全般の基礎を身につけます。但し、暗記するだけでは新しいものは生まれません。知ることは大事、でも教科書が全て正しいとは限らないということを肝に銘じてください。知識があるから頭が良い、頭が良いから独創性が生まれるのではない。独創性は疑問から生まれる。大学でも社会でも、本質を理解したうえで、新しい視点や違う視点で学び、考えることが大事なのです。今ある最先端の科学や技術を追従するのではなく、自分のこの手で生み出せば、それが最先端になる。ここには世界最先端の研究があります。ともに新しい医療機器の開発に挑戦していきましょう!