『「地形舞台」-中山間地過疎地域に寄り添う

集落づくり拠点-』が東北建築賞作品賞に輝く

東北建築作品賞2014image002建築学科浦部智義准教授と浦部研究室が計画・設計に携わったプロジェクト『「地形舞台」-中山間地過疎地域に寄り添う集落づくり拠点-』が、一般社団法人日本建築学会東北支部の第34回東北建築賞作品賞に選ばれました。この賞は、東北地方においてその建築文化や環境形成の向上に貢献し、地球環境時代に相応しい優れた建築作品、東北地方で発表された将来性が期待される研究活動、その他建築分野にかかわる重要な業績を顕彰するものです。

浦部准教授に受賞の喜びの声とともに、プロジェクトの詳細についてお話を伺いました。

 

―この度は東北建築作品賞受賞おめでとうございます。感想をお聞かせください。

 活動拠点が郡山にあるためか、ここ数年は研究室活動としても震災関連の話題が多かった中で、震災前から将来に亘る大きな課題とされていた、過疎地における暮らしやそこでの建築のあり方で評価されたことは、個人的には大きな意義があると感じており、学生さんはじめ仲間の方たちともそういった意味で喜びを共有しております。また、それは震災復興と全く関連がない訳ではなく、被災地の一部では急速に高齢・過疎化が進むことも予想され、ある意味ではその先行モデルと言えるかも知れません。私たちが取り組んだ古民家とその周辺の改修は、ただ元に戻すのではなく、伝統的な良さを大切にしながら現代的な要素を取り込み、日常的な集落の拠点として生まれ変わらせたもので、復興過程でもそういった手法は避けて通れない問題かも知れません。

また、このプロジェクトは、土地・建物の所有が行政と民間にまたがっており、官民が互いに協力し合って地域にとって良いものをつくるという、既成の枠組みを超えた取り組みとしても大きな効果であったと思っています。

研究室として、最近の建築単体での「ロハスの工学」的取り組みとしては、「ロハスの家」・「木造住宅技術モデル」等、環境、工法的側面で主に取り組んで来ておりましたが、今回の古民家の改修は、「再生ロハス」・「コミュニティ拠点施設」といった点で、地域コミュニティの再生・維持に直結する様な、今までとはちょっと違った意味があるかなと思っております。私たちが、郡山市内で現在取り組んでいる、小規模コミュニティ型木造住宅モデル群を中山間地に適応した場合の拠点施設としてもイメージ出来ます。

また私事で恐縮ですが、もともと専門としてきた劇場・ホールなど文化施設の研究分野の提案を、日大工学部の学生さんと一緒にできたことは、工学部に赴任した甲斐がありました()

 

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―作品について詳しくお聞かせいただけますか。

 東北建築作品賞2014image010『地形舞台』は、福島県の中山間地天栄村湯本地区にある築100年を超えて空き家となっていた茅葺の古民家を改修・用途変更して、日常的にも気軽に集落の人が集まる場所・舞台に再生したものです。背景や客席となる斜面と庭による「舞台」、間仕切りを取り払いシンプルで広い平面とした約10畳の「土間」、住人の記憶を留める居心地のよい2間の「座敷」からなる施設です。梁や柱など構造も工夫をして、人が寄り付き集まりやすい空間をつくりました。また、この地区は茅東北建築作品賞2014image008葺屋根の家が多く残っていましたので、景観を形成する上でも茅葺は重要な要素でしたが、茅葺を全て表わしにして維持していくことは集落の人にとって負担となります。そこで、軒先の部分をある程度表わしにして、人の目線では茅葺が見え意識できる様な工夫をしました。

裏庭は隣接する宿屋さんの土地とつながっており、公共の施設と個人の私有地が一体化されて『地形舞台』を形成しています。文化・風土がにじみ出るよう東北らしさも大事にしながら、その様に新たな工法、プログラムを取り入れていることが特徴と言えるかも知れません。

東北建築作品賞2014image006暮らしという意味では、今後、この施設がどの様に運営され、どう使われていくかポイントですかね。計画段階からある程度運営の想定をしておりましたが、折しも作品賞の審査で頂いたご講評「山間の過疎地において古民家を後世に伝え、場所の記憶を継承しながらも、新たな活用の可能性を示す好例」をより長く持続できれば良いですね。地域活性化の拠点として、日常的な寄り合いの場はもとより、落語や神楽などの伝統芸能や文化財の催し物、また朝市が行われるなど、新規に観光客・外部の方々といった交流人口を取り込んだ新たな形のコミュニティ施設となり、山間地の魅力を発信する拠点として上手く機能すればと良いな、と思っております。

 

―プロジェクトを進める上で苦労されたことはありますか。

このプロジェクトは、震災を挟んで約4年の月日を費やしていますので、改修前の建物の現地調査と周辺調査を手伝ってくれた学生さんは終了・卒業してしまいました(笑)。その後、どのように改修するかの計画も含め、集落の方々とのワークショップも地道に重ねました。ワークショップに参加される集落の方々がご高齢であったこともあり、時間をかけて丁寧に説明する必東北建築作品賞2014image011要がありました。当然、建築図面だけでは理解していただけず、大小様々な模型を作って何度も説明に出向きました。

さらに、この古民家は100年以上集落の中心にあり、集落の方々にとっては思い入れのある建物です。我々、第三者的立場の者の提案を聞きいれてもらうためには、集落の暮らしを理解する姿勢を示さないとはじまりません。そこで私たちは、集落の祭りや日常風景などを織り込んだムービーを制作したりして、集落の方々とコミュニケーションを取らして頂く中で風土や暮らしを勉強させて頂きました。

その上で、こういったコミュニティ施設をつくる意義と目的をお伝えしたりしました。お陰で相互理解が深められただけでなく、私も含め学生さん達も足繁く通ううちに、高齢・過疎の実態や中山間過疎地域に求められているものや、そこにどの様な居場所を作るべきかを考える契機になりました。逆に見方を変えると、学生さんが集落にとっては若者の交流人口になっていたという面もありますかね(笑)。時に、工事中に学生さんが三味線やギターなど楽器を演奏したりして、集落の方が集まって来てくれたこともありました。そういう意味では、特に建築でなくても質が高くなくても何でも良いと思うのですが、こういった場所では何かが動いているということがちょっとした活力になる大事なことなのかも知れませんね。

 

―今後の目標についてお聞かせください。

 現在も、別の場所で社会的な施設づくりに取り組んでいます。地域資源を活かしワークショップを積み上げた様な今回のプロジェクトの経験はもちろん活きてきますが、当然、個別の問題も多く含まれます。プログラムの構築や有効的なスタイルも違って来ていますので、また新たな経験ですね。

今回もそうでしたが、場合によってはソフト面にまで踏み込まないと解決できない問題も多く、それらにも合わせて取り組むことで建築の価値も高まるのかな、と思っています。また、こうした機会は学生さんにとっても良い経験になると思いますので、できるだけ体感してもらえればと思っております。

 

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―ありがとうございました。今後ますますご活躍されることを祈念いたします。

 

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