肩こり・触診治療効果計測装置の開発研究が高く評価され日本設計工学会優秀発表賞を受賞

 2013%e6%97%a5%e6%9c%ac%e8%a8%ad%e8%a8%88%e5%b7%a5%e5%ad%a6%e4%bc%9a%e5%84%aa%e7%a7%80%e7%99%ba%e8%a1%a8%e8%b3%9eimage002公益社団法人日本設計工学会2012年秋季研究発表講演会において、機械工学科長尾光雄准教授が発表した論文が優秀発表賞に選ばれ、2013年春季研究発表講演会で表彰されました。
 長尾准教授の計測・診断システム研究室では、臨床医療技術を支援する生体計測方法の提案と試験装置の研究開発を行っています。今回受賞した『人工擬似しこりを用いた筋硬度計の硬軟探索に関する研究』の論文は、肩こりなどのしこりの硬さを測定する装置の開発に関する研究について発表したものです。
 長尾准教授に受賞の喜びとともに、研究について詳しくお話を伺いました。

 

―優秀発表賞受賞おめでとうございます。受賞された研究について詳しくお話いただけますか。

 2013%e6%97%a5%e6%9c%ac%e8%a8%ad%e8%a8%88%e5%b7%a5%e5%ad%a6%e4%bc%9a%e5%84%aa%e7%a7%80%e7%99%ba%e8%a1%a8%e5%89%b5image004皆さんも一度は経験されたことがあると思いますが、肩こりや腰痛は国民的な健康を害する症状の一つ。発症部位には「しこり」や「こわばり」による痛みなどの自覚症状が伴いますが、その度合いは主観的で根拠を伝えるのは非常に困難です。また、治療を施す柔道整復師の触診も主観と経験によるものが殆どで、病状や治療法を説明する根拠が曖昧です。近年、医療現場では根拠に基づいた医療行為(EBM)が国際的な標準になっています。そのため、整体院・接骨院においても古来からの勘や経験からではなく、症状や施術効果をデータ化して患者に診療の根拠を示さなくてはなりません。
 そうしたことを踏まえ、福島県立医科大学や接骨院などとの共同研究により、柔道整復師の感覚的な触診をより正確に数値化するための筋硬度計の開発を行っているのです。従来の製品の課題であるコスト面や臨床現場のニーズに応えられるように改善を進めています。

 

―研究方法や成果についてお話いただけますか。

まず、人工の擬似しこり4種類を下層に配置し、その上に擬似表層4種類を組み合わせた4×4種類の擬似モデルを作成しました。いろいろな人の皮膚や筋肉を再現するために、表層の材料はパフやCRゴム、擬似しこりの材料はCRゴムやシリコーンゴムなどを使用し、厚さも変えています。この擬似モデルから、筋硬度計測装置の圧子の押し圧の加減により、擬似しこりの硬軟判別が可能どうか、そして験者(柔道整復師)と被験者(患者)に適用できるかどうか検証実験を行いました。
2013%e6%97%a5%e6%9c%ac%e8%a8%ad%e8%a8%88%e5%b7%a5%e5%ad%a6%e4%bc%9a%e5%84%aa%e7%a7%80%e7%99%ba%e8%a1%a8image008 擬似表層の深層部に位置する擬似しこりの硬軟を判別するには、験者、被験者両者の条件に適った押し圧の加減、つまり押し込む際の荷重を設定する必要があります。これは、本体上部に設けた調整部で行います。実験の結果、硬軟を数値化するのに有効な表示方法については、弾性定数や微分弾性定数であることが分かりました。技術的には、柔道整復師の触診と同様に、押し込む加減によってしこりの硬軟を探索検知できるという成果が得られました。

 

―今後の目標をお聞かせください。

 2013%e6%97%a5%e6%9c%ac%e8%a8%ad%e8%a8%88%e5%b7%a5%e5%ad%a6%e4%bc%9a%e5%84%aa%e7%a7%80%e7%99%ba%e8%a1%a8image012被験者、つまり施術される側の感じ方は千差万別です。実際に硬度計で測定すると施術前と施術後ではしこりがほぐれて柔らかくなっているにも関わらず、違いを感じていない人もいました。こうした場合に施術の効果を科学的に実証できるのが、筋硬度計を使用する最大のメリットです。現在、複数体の被験者に対して験者が経験する硬軟の定量化と臨床応2013%e6%97%a5%e6%9c%ac%e8%a8%ad%e8%a8%88%e5%b7%a5%e5%ad%a6%e4%bc%9a%e5%84%aa%e7%a7%80%e7%99%ba%e8%a1%a8image010用を進めているところです。この硬度計は、パソコンにデータが蓄積されていくので、治療の経過が把握でき、健康管理にも役立ちます。肩こりは筋肉疲労という近因だけでなく、遠因として関節や脊椎など整形外科に関わる病気はもちろんのこと、心臓や内蔵、循環器の病気が見つかるケースもあります。数値化することで、施術や治療を続けても改善されない場合に、それらの疾患を診つけることもできます。今後も製品化を目指して研究開発を進めていきます。

 

―学生たちにメッセージをお願いします。

 医療現場では治療結果を科学的に数値化するシステムだけでなく、最先端医療技術を誰でも実践できるシステムの開発も進められています。それには、工学技術や工学的手法を取り入れた医2013%e6%97%a5%e6%9c%ac%e8%a8%ad%e8%a8%88%e5%b7%a5%e5%ad%a6%e4%bc%9a%e5%84%aa%e7%a7%80%e7%99%ba%e8%a1%a8image014工連携が必要不可欠です。工学部の次世代工学技術研究センターはその役割を担っています。福島県でも公益財団法人郡山テクノポリス推進機構に医療・福祉機器等関連新事業創出研究会が設置され、企業、大学、行政等が連携して医療機器の開発に取り組んでいます。これから益々医工連携は強まっていくでしょう。
 今回開発した硬度計は生体用ですが、測定システムが確立できれば、食品にも応用できます。工学的手法を用いて幅広い分野にアプローチできるのは研究の醍醐味であり、魅力です。機械工学を通して、人に役立つモノづくりに挑戦し、社会に貢献できるエンジニアを目指してほしいと思います。

 

―ありがとうございました。今後ますますのご活躍を期待しております。