国際的な水資源問題に取り組む研究が学部を越えて評価される

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 朝岡准教授に喜びの声とともに、研究について詳しくお話を伺いました。

 

―最優秀ポスター賞おめでとうございます。感想をお聞かせください。

 ありがとうございます。様々な分野で最先端の研究に携わっている方々が発表した中で、私の研究に対してこのような素晴らしい評価をいただき大変光栄に感じています。開発途上国における地球環境問題の適応策支援という課題に対して、多くの方が興味を持ってくださった結果だと思いますので、今後、いろいろな学部と連携して研究を発展させられたら幸甚に思います。

 

―発表された研究について詳しくご説明いただけますか。

 年間降水量の少ないボリビア国の首都圏では、南米のアンデス山脈に分布する熱帯氷河を生活用水として利用していますが、近年の地球温暖化の影響を受け氷河の縮小が加速したことによって、水資源枯渇の危機に直面しています。都市発展と急速な人口増加もあいまって、水の需要も著しく増加しているため、熱帯氷河の縮小が人々の生活にどう影響を及ぼすのかを早急に予測して、水道施設のインフラ政策を立案する必要があります。しかし、ボリビアは開発途上国であり、科学技術のレベルが不十分なため予測する技術がありません。そうした中で、日本政府がODA(政府開発援助)の一環として協力支援することになりました。私はもともと東北地方の雪を生活用水や灌がい用水に利用する研究をしていましたから、東北地方の技術移転として技術協力に活かせるのではと参画した次第です。現地の大学に就職した教え子達も共同研究者として、観測やシミュレーションをサポートしてくれています。

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赤い○は同じ岩を示し、氷河の先端部が6年間で50m後退したことを示す

 これまでに18回ほどボリビアに赴き、気象・河川流量のモニタリング、氷河の地形測量等の現地観測、人工衛星等を使った氷河域の計測を行いました。これにより、氷河の縮小は温暖化だけではなく、エルニーニョ現象などの気候擾乱、雪氷藻類や大気中に含まれるブラックカーボンによる氷河の暗色化も影響していることが分かりました。また、観測データをもとに氷河融解量・河川流量の予測を数値シミュレーションして、飲み水や灌がい用水の取水にどう影響を及ぼすのかを調べました。これまでの研究成果から、熱帯氷河流域の気象・河川流量の観測網が構築されるとともに、氷河の融解機構の解明と数値モデルの開発に成功しています。

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ダムの貯水量シミュレーション図

 

―どのような点が評価されたと思われますか。

 同じ分野の研究者が集まる学会とは違って、医学部や薬学部、経済学部など、土木工学に馴染みのない研究者の方々にとっては、“土木=インフラ“という認識が強いと思います。その中で、熱帯氷河の縮小という地球環境問題が人間の生活にどう影響を及ぼすのかという土木の問題に結び付けている点が新鮮で、興味を持ってもらえたのではないかと思います。また、いろいろな学部と連携できる研究課題であることも大きな要因になっているのではないでしょうか。ボリビアでは21世紀に“水紛争”が起こったくらい深刻な問題となっていますから、経済問題、民族問題、国際問題など様々な側面を持った研究課題に展開できると考えられます。実際に、国際関係学部や文理学部の方が関心を示してくださいました。土木からの視点と理学からの視点とを重ねてみると、新しい発見が生まれるかもしれません。そうした学部連携への発展も期待して評価されたのだと思います。

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シンポジウムの様子

 

―先生にとって研究の魅力は何ですか。

 土木の道に進んだのは、山や川、気象など自然科学に関心があったことと、そして、人の役に立ちたいという思いからでした。その中で、水の循環を対象とする水文学を専門とし、水を利用する、水害を減らすなどの研究によって自然と人の共生を目指しています。研究していると、人間がどれほど自然の恩恵を受けているかに気づかされます。氷河や気象、河川の調査は、アンデス山脈の標高4700m以上の地域を登山して行います。フィールドワークによって、日本の山岳域では考えられない自然現象に直面しますし、研究のアイディアも生まれます。そこが研究の醍醐味というか面白さだと思っています。

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現地調査の様子

 

―今後の目標をお聞かせください。

 当面の目標は、熱帯氷河の縮小の要因を明らかにすること、そして氷河融解の予測技術の高度化です。それによって、ボリビア首都圏の水道供給にどう影響を及ぼすのかを評価します。気象や気候変動を予測する技術も進歩していますから、より正確に氷河の変動を把握できると考えています。現地での学会発表や市民講座での講演も行いましたが、ボリビアの住民たちは水に対する意識が非常に高く、改めて切迫した問題なのだと実感しました。研究を通してボリビア国の発展に貢献できればと思っています。

 

―学生たちにメッセージをお願いします。

 まずは、自分が取り組む課題に興味を持つことが大事だと思います。今、取り組んでいる研究は将来どう役立つのか、研究することで社会基盤にどう活かされるのか理解できれば、研究のモチベーションもあがるでしょう。また、土木で国際貢献することも可能です。戦後の日本は、今のボリビアと同じように貧しく、インフラが十分に整備されていない状況でした。その中で水災害や水資源の問題も多発しました。しかしながら、高度経済成長を遂げ、インフラも整備されて豊かな国になりました。国が成長する途中には政策面や環境面の問題に直面しましたが、克服してきた経緯があります。このような経験を活かして、ボリビアなどの開発途上国に技術を移転し国際貢献していくことが、日本と土木の役割になると思います。学生の皆さんには、そうした担い手として世界を舞台に活躍してほしいと願っています。

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現地の新聞に掲載されました

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ラパス市議会に召集され研究成果を説明しました

                

 

―ありがとうございました。今後益々ご活躍されることを祈念申し上げます。