地震動推定手法の精度評価に関する論文が

平成25年度土木学会論文賞を受賞

2015土木学会論文賞image002 この度、土木工学科の中村晋教授が平成25年度の土木学会論文集A1(Vol.69No.2pp.186-205)に登載した論文本震観測記録を利用した地震動推定手法の精度とその向上策-2008年岩手・宮城内陸地震における震源域を対象として、土木学会の論文賞を受賞しました。土木学会は土木工学の進歩および土木事業の発達ならびに土木技術者の資質向上を図り、学術文化の進展と社会の発展に寄与することを目的に1914年に設立されました。土木賞の表彰が始まったのは1920年からで、土木分野の中では最も権威のある賞とされています。今年度論文賞には47件の応募があり、7分野7件が受賞。中村教授の論文は「構造・地震工学・応用力学」分野での受賞となりました。613()に土木学会総会にて共著者とともに表彰されました。中村教授の喜びの声とともに、研究について詳しくお話を伺いました。

 

地震による被害のメカニズムを解明し

防災対策や建物の設計に活かす

2015土木学会論文賞image004―土木学会論文賞受賞おめでとうございます。感想をお聞かせください。

 このような権威のある賞をいただけて大変光栄に感じています。また、私より若い30代、40代の研究者との共著で受賞できたことも喜ばしく思います。いろいろな年代の研究者とコラボレートして生み出された成果であり、これまで積み重ねてきた研究手法を共有しながら、次世代を担う若い方たちと新たな研究に取り組めたのは、大変意義深いことだと思っています。今後の研究の励みにもなります。

 

―研究の内容について、詳しくお話いただけますか。

 地震を予測する方法には、大きく分けると事前予測と事後予測という手法があります。私たちは、被害を受けた場所から近い地点の観測データを使って地震の揺れの強さを分析し、建物がなぜ壊れたのか、なぜ壊れなかったのかを推定する事後予測について研究しました。対象としたのは、2008年岩手・宮城内陸地震(内陸地殻内地震)における震源域での強震観測点で、強震記録が得られている地点で地震動を複数の方法を用いて推定し、様々な地震動強度指標、スペクトルや観測記録との残差などについて比較しました。地震動推定手法の違いが推定精度に及ぼす影響について検討することが目的です。推定に用いた手法の優位性について定量的な評価を行い、常時微動計測や中小地震観測を実施することで、地震動の推定精度が大幅に向上することを示しました。これまで、精度について定量的な評価というものが行われていなかったので、精度検証に基2015土木学会論文賞image0082015土木学会論文賞image006づき事後評価手法の体系化ができたのは大きな成果だと思います。地震直後から1年間にわたる観測でしたし、被害を受けた場所には電源もなく、ソーラーパネルを使って電源を確保するなど、現場での調査は容易ではありませんでした。しかし、地盤2015土木学会論文賞image009状況の影響を補正し、精度の高さについてリアリティのある検証ができました。一人の力では難しく、それぞれの役割を分担し、協力しながら遂行できたことが、研究成果につながったのだと思います。 
                        

―どのような点が評価されたのでしょうか。

 大地震後に被災地点や無被災地点で、常時微動計測や中小地震観測を実施する意義が大きいことを定量的に明らかにするとともに、地震動推定の精度を定量的に示した点が高く評価されました。さらに、本論で用いた地震動の推定手法は、内陸地殻内地震だけでなく、海溝型地震やスラブ内地震の事後推定にも積極的に適用している点なども、論文賞に相応しいと認められました。

様々な地震動を予測する手法の精度は定量的に明らかになっていないのが現状ですが、事後推2015土木学会論文賞image011定手法に対して示したように定量的な精度評価を行うことは重要です。今回、それを学術的に示しせたことにより、地震動の予測の精度向上にも大いに役立つものと思われます。

 
 

提案している手法により推定した被災地点での加速度波形

 

―今後の研究の目標をお聞かせください。

 構造物に影響を及ぼす揺れ方を知ることは、被害のメカニズムを検証するうえで重要な鍵を握っています。被害の推定だけでなく、防災対策や建物の設計にも活かすことが可能だからです。     

2015土木学会論文賞現在、東日本大震災で被害を受けた福島市あさひ台団地の造成盛土の崩壊について、被災地点の近傍で実施した余震観測に基づいて推定した本震記録を用い、MPMという地盤の破壊挙動を評価できる新しい解析手法を用いた分析を行っています。

 本論文では直下型の地震での検討でしたが、東日本大震災などのプレート型の地震についても精度に関する検証を行うことが、現在実施している被災機構の分析の信頼性向上のために必要な課題の一つです。
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造成盛土の崩壊シミュレーション(せん断ひずみの分布)
地震動の事後推定結果を用いた被災挙動のシミュレーション

 

―ありがとうございました。今後ますますのご活躍を祈念いたします。