橋梁工学の発展に大きく貢献

  本学部土木工学科岩城一郎教授、子田康弘准教授(他4名)が公益社団法人土木学会平成22年度「田中賞(論文部門)」を受賞しました。「田中賞」とは、橋梁・鋼構造工学に関する優秀な業績に対して授与されている学会賞で、「研究業績部門」「論文部門」「作品部門」の3つの部門があります。「論文部門」は、土木学会刊行物に発表され、計画、設計、製作・施工、維持管理、考案、歴史などに関連して橋梁工学の発展に大きく貢献したと認められる論文、報告の中から選ばれます。今回発表された論文「著しい塩害を受けた道路橋PC桁内部のコンクリートおよび鋼材の物性評価」は、塩害を受けたPC橋の健全度評価等の貴重な情報を提供し、今後の橋梁の維持管理に貢献していることから、土木学会田中賞に値すると認められたものです。
 受賞の喜びの声とともに、発表された論文の内容や研究については、岩城教授にお話を伺いました。

 

―「田中賞」受賞おめでとうございます。受賞の感想をお聞かせください。

 ありがとうございます。私たちの暮しを支える社会基盤である橋などのコンクリート構造物の耐久性を高めることは、重要な課題となっています。構造物の寿命をいかに延ばし、健全な状態を維持させるか、その基本となる劣化のメカニズムを解明する貴重な研究であると評価されたことを大変嬉しく思います。

 

―論文の内容についてお聞かせください。

 この論文は、地方自治体の管理する著しい塩害を受けたPC道路橋を対象に、目視と非破壊試験による現場調査、撤去桁の解体による内部損傷の分析、コンクリートと鋼材の物性や力学的性質の評価を行い、体系的にまとめたものです。その中で、次のような工学的に有用な情報を提示しました。

①サーモグラフィ等の非破壊試験の現場での有用性の検証

②対象とした橋梁のコンクリートの品質やかぶりの施工誤差が損傷の支配的要因であることの明示

③鋼材腐食量と各種機械的性質の関係の定式化、鋼材腐食の空間的ばらつきの評価、構造解析や信頼性評価に資する貴重なデータの提供

 現在、地方自治体の橋梁の多くは、目視点検に基づき外観による診断・対策が行われていますが、内部の劣化状態や、どの程度構造性能が低下しているのかはわかりません。そこで本論文では、劣化が著しく架け替えることになった橋を解剖し、コンクリート中の塩分濃度や鋼材腐食状況を詳細に調べることにより、実橋における目視による健全度、内部の劣化状態、構造性能の3者の相互関係を解明しました。つまり人間でいう「病理解剖」をコンクリート構造物で行ったというわけです。

コンクリート構造物を守るドクターを目指して

 

―コンクリート構造物の病理解剖とはどのようなものですか。

 コンクリート構造物も時間が経てば劣化していきます。交通作用の繰り返しによる疲労、二酸化炭素や酸性雨による化学的劣化、凍害による劣化など原因は様々ですが、今回は、海水による塩害を受けた道路橋を診断しました。
 例えば人間も、見た目でこの人は具合が悪そうだなとわかったりするように、コンクリート構造物も見た目で劣化していると判断することができます。しかし、どんな病気なのか、どの程度進行しているのかは精密検査により内部を調べなければわかりません。そこで、実構造物に対して目視による診察を行った後、サーモグラフィを使った非破壊検査を行い、解体後にEPMA(電子線を対象物に照射する事により発生する特性X線の波長から構成元素を分析する装置)を使って、コンクリート中の塩分濃度分布を調べ、さらに写真のように鋼材1本1本の腐食状況まで詳細に調べました。その結果、劣化の原因、劣化の過程、外見への影響の因果関係を明らかにすることができたのです。

 

―まさに医者のようですね。

 私たちの研究は構造物を診る「コンクリートドクター」と言えます。実構造物の調査・点検、診断評価を行う臨床、劣化要因の究明や劣化のメカニズムの解明を行う病理、適切な対策を施す治療といった「医療行為」によって、患者である構造物の健康を維持していくのです。コンクリート構造物の寿命延命化は、持続可能な社会の実現にもつながっています。「ロハスなインフラが、ロハスな人間社会を守る」と私は考えています。

 

―最後に、土木工学を学ぶ学生たちにメッセージをお願いします。

 土木の分野は幅広く、多彩です。今回の震災においても様々な分野で土木技術が生かされています。人々の暮らしを支え、我が国の産業と経済を支えるために、土木工学の果たす役割は今後ますます重要度を増していくでしょう。その分、やりがいのある実践的な研究に携わることができるのも、土木工学の魅力の一つです。
 社会と環境の保全、防災力向上を目指し、持続可能な社会の実現に向けて、ともに学んでいきましょう。そして将来、社会に貢献できる人材となって人と地球の未来を守るエンジニアになることを期待しています。

 

―ありがとうございました。

 

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