自動車の安全技術デザインコンペで最優秀賞受賞!

 平成23年3月1日(火)に行われた社団法人自動車技術会主催による「学生安全技術デザインコンペティション日本地域決勝大会」で、本学部機械工学科バイオメカニクス研究室(西本研究室)生体班が、2年連続最優秀賞(1位)の快挙を達成しました。この結果、6月に米国ワシントンDCで開催される国際大会に、日本代表チームとして派遣されることが決定!!
 世界大会出場を果たした生体班の皆さんの喜びの声をお届けいたします。

(写真:右から、吉田諭史さん(修士課程2年)、木村清隆さん(修士課程1年)、寺島征哉さん(学部4年)、望月康廣さん(博士課程1年)、吉住朋紘さん(修士課程1年)、北村啓多さん(学部4年)、西本哲也先生

 

■頭部傷害メカニズム解明のために、進化させたダミー開発とは!?

 自動車事故の時に生じる脳のひずみが、神経細胞の損傷に深く関わっていることは明らかになっていますが、現状のHIC(頭部損傷基準)は古く、定量的に測定できる新しい評価方法の確立が必要とされています。そこで、バイオメカニクス研究室では、独自の手法により「代替脳」を装備するダミーの開発に取り組み、脳組織における損傷発生の危険性について新しい評価手法を提案しました。

 今回のポイントは、どのようにして実際の脳の損傷状態に近づけるかということでした。今までは、加速度による計測実験を進めていましたが、脳の神経損傷についても測定できるダミーを作りたいという思いから、新たな研究に挑戦したのです。それは、機械工学の分野を超えて、化学の知識も必要とされるものでした。
 脳にひずみが生じた時、一定ラインを越えると細胞体がCa(カルシウム)イオンを急激に分泌します。その現象をダミーでも再現するために、代替脳の主成分にゼラチンを用い、その中に人工イクラのようなマイクロカプセルを埋め込みました。マイクロカプセルは、圧縮ひずみ率30%の衝撃によってCaイオンを放出するしくみになっています。
 昨年のメンバーでもある吉住さん。当時の苦労をこう話しています。

吉住さん:「カプセルの作り方にもいろいろあるのですが、どの方法が最も容易で適しているかを検討し、人工イクラの製造方法を参考に最適な薬品の配合を導き出しました。カプセルを作る器具も自分たちの手作りです。最初は管が太すぎてうまくいかなかったり、何回も調合を変えたりして調整に1カ月くらいかかりました」
 化学の知識を要する薬品を使ったカプセル原理については、生命応用化学科の平山和雄教授にもご指導いただいたそうです。

 脳の型は鋳造技術を用い、粘土で型を作りシリコーンを注入して制作。こうして出来上がった代替脳をダミーに装備し、ようやく落下実験へと進みました。

 

 

■より安全な自動車づくりに役立つ技術

 側突実験、頭頂実験、回転実験を行い、 脳のどの部位で損傷するのかを見るために8分割し、Caイオンの分泌を測定。平山先生にご協力いただき、環境保全・共生共同研究センターにある誘導結合プラズマ発光分光分析装置(ICP-AES)を使って分析しました。
 すると、真上から落下させた頭頂実験では、局所的に分泌があらわれ、真横から落下させた側突実験では反対側にも、回転実験では広範囲にCaイオンが検出されました。この結果、実際と同じ検出量をダミーでも再現できるという有効性を明らかにすることができたのです。
 研究を振り返り、メンバーの皆さんに感想を伺いました。

吉田さん:「小学生の頃に戻ったような化学の実験も、ある意味新鮮でよい経験になりました。今まで継続してきた研究をさらに発展させながらも、この実験を通して工学の基礎を改めて再構築できたと思います」

望月さん:「より安全な自動車づくりにつながることを目標に、新たなHIC(頭部損傷基準)確立のために研究してきました。みんなからいろいろな意見を出してもらって、少しずつ段階を踏みながらようやく形にできたので、大変でしたがとても楽しかったです。自動車の細かな設計技術に適応できればいいなと思います」

北村さん:「先輩たちのサポートをしていましたが、発想の斬新さに驚嘆しました。全て一から自分たちの力で成し遂げていく姿は、エンジニアを目指すものとして羨ましくもありましたね」

 国際大会に参加予定の北村さんは、“次は自分の力で”という意気込みをみせていました。

 

■国の代表として国際大会に臨む

 審査当日は、書類選考による予選を通過した3チームが、技術アイデアの提案とそれを具現化したスケールモデルでデモンストレーションを行いました。

寺島さん:「見せ方も工夫しました。プロジェクトの立案からダミーの制作・実験のプロセス、試作ダミーの構築までわかりやすく説明しながら、練習を重ねたデモンストレーションをそつなく披露できたのがよかったです」

北村さん:「この日のために用意したユニホームで、チームワークの良さをアピールできたんじゃないかな。胸のマーク“T・A・S・C(The Artificial salmon caviar)、”人工イクラの発想も審査員に受けたのかも」
 審査員も、発想のユニークさを評価していました。しかし、学術的な背景や実現性も必要とされるレベルの高いコンペティション。第一線で活躍する企業の方も審査員に名を連ねる厳しい審査の中で、発想だけでなく技術の高さも評価され今回の最優秀賞につながったと思われます。また、数々の苦労を重ねて見いだされた成果も、審査員を唸らせた要因です。

「日の丸を背負って、国の代表としてぜひ日本に初の優勝をもたらしてほしい」と激励されたメンバーたち。国際大会に向け、一番の課題は英語かもしれませんが、エンジニアとしての自信と誇りを胸に、実力を十分に発揮して優勝を目指してほしいと願います。

 最後にメンバーからのメッセージです。

「大変なこともたくさんありましたが、優勝できて本当によかったです。この実績を後輩たちに引き継いでいくことも私たちの使命と考えています。世界大会に向け、プレッシャーもありますが、日本代表として、また日本大学工学部の代表として世界の国々に負けないよう頑張りたいと思います。皆さんも応援よろしくお願いします!」

詳細結果はこちら

※学生安全技術デザインコンペティション国際大会-International Collegiate Student Safety Technology Design Competition は、ESV 国際会議(International Technical Conference on the Enhanced Safety of Vehicles)の中で開催されます。ESV 国際会議は、世界規模で開かれる唯一の自動車安全に関する世界会議で、2 年毎に日米欧豪等の参加国にて開催されます。主催はESV 参加国政府です。