新たなCO2吸収液の開発に関わる
研究発表が口頭発表最優秀賞に輝く

第6回福島CEセミナー口頭発表最優秀賞image002 平成27年12月19日(土)に日本大学工学部で開催された第6回福島地区CEセミナーにおいて、日本大学大学院工学研究科生命応用化学専攻博士前期課程1年の廣田光さんが、口頭発表最優秀賞を受賞しました。

 CEセミナーは、福島県内において化学工学関連の研究をしている大学や高専と若手企業研究者による発表会であり、本年で6回目の開催。今回は、福島県内だけでなく、山形県や栃木県の大学や工業高等専門学校からも参加があり、ポスター発表を含む32件の発表がありました。そのうち口頭発表は5件で、受賞者は廣田さんのみでした。

 なお、本研究の成果は、最先端・次世代研究開発支援(NEXT)プログラム、科学研究費助成事業・基盤研究(B)によるものです。

廣田さんに受賞の感想と研究についてお話を聞きました。

―この度は口頭発表最優秀賞おめでとうございます。感想をお聞かせください。

 ありがとうございます。これまで、研究室の先輩方が各学会で受賞されていましたので、いつか自分もという思いはありましたが、まさか本当に受賞できるとは思っていませんでした。今回発表した『四級ホスホニウム系イオン液体の密度・粘度・二酸化炭素溶解度』の研究は、(国研)産業技術総合研究所(産総研)や日本化学工業株式会社との共同研究によるものです。その方々からも、良い発表だったと誉めていただきました。皆さんの期待にも応えられ、受賞に結びついて大変嬉しく思っています。

―研究について詳しく説明いただけますか。

 私たち環境化学工学研究室では、地球温暖化に深刻な影響を与える火力発電所や製鉄所、石油プ第6回福島CEセミナー口頭発表最優秀賞image004ラントなどの大規模固定発生源から排出されるCO2を回収するためのガス吸収液の開発を行っています。現在、一部商用プラントで利用されている吸収方法はアルカノールアミン類を使った化学吸収法ですが、吸収液の再生に熱蒸留操作を用いるため、分離・吸収プロセスにおける消費エネルギーなどのコストが課題になっています。また、大規模固定発生源から排出される高温のガスと吸収液との接触を考えた場合、吸収液の熱安定性向上が必要不可欠です。そこで私たちは、これまでの研究報告から、耐熱性に優れているとされる四級ホスホニウム系イオン液体に着目しました。イオン液体による物理吸収法は、圧力を変化させるだけでCO2を分離・回収できる特長があり、吸収液再生コスト削減にもつながります。今回、このイオン液体をガス吸収液として利用できるかどうかを見極めるために、密度・粘度・二酸化炭素溶解度等の物性評価を行いました。

 本研究では、異なる3種のカチオン構造を有する四級ホスホニウム系イオン液体を合成し、常圧下における密度・粘度の温度依存性を解明しました。さらに、溶解度測定に使用した磁気浮遊天秤は、測定時に浮力が発生するため、補正を行う必要があります。そこで、二酸化炭素が溶解したイオン液体の飽和密度や体積膨張率をSanchez-Lacombe状態式で推算することにより、懸案となっていた磁気浮遊天秤の測定時における浮力補正を解決した結果、ガス溶解度データの測定精度が向上し、四級ホスホニウム系イオン液体の二酸化炭素吸収特性を精密に明らかにすることができました。また、本研究で測定した四級ホスホニウム系イオン液体は、報告例の多いイミダゾリウム系イオン液体の[Emim][TFSA]と比較し、低密度、高溶解度を示し、新しいガス吸収液としての可能性が示唆されました。
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―どのような点が評価されたと思われますか。

 これまでポスター発表は経験していましたが、口頭発表は初めてでした。イオン液体について知らない方にもわかるように、スライドや発表の仕方を工夫し、発表練習も入念に行いました。しか第6回福島CEセミナー口頭発表最優秀賞image010し、発表練習に付き合っていただいた共同研究者の方から様々なご指摘があり、勉強不足を痛感しました。その悔しさをばねに、多くの論文を読み返し、研究に関わる基礎知識について勉強を重ねた結果、質疑応答では予期せぬ質問にも落ち着いて明確に回答することができました。また、他大学や産総研・福島再生可能エネルギー研究所の方にも発表内容について興味深かったというコメントをいただきました。しっかり事前に準備をした上で発表できたので、聴衆に研究内容が伝わり、高い評価につながったのではないでしょうか。ご指導いただいた児玉大輔准教授(写真右)にも、深く感謝しています。

―どんなところが研究の魅力ですか。

 未知の分野に挑戦するので、新しい発見に出会えることが一番の魅力です。自分で予測を立てて実験して、その通りになれば嬉しいですし、失敗すればどうしてできなかったのかを試行錯誤していく中で、考え抜く力を養うこともできますし、研究に対する理解もさらに深まります。化学工学は様々な分野に関わりがあるので、将来性があることも魅力だと思います。

第6回福島CEセミナー口頭発表最優秀賞image012―今後の目標についてお聞かせください。

 今よりもガス吸収性に優れたイオン液体をつくることが目標です。まだ物性評価しか行っていないので、プロセスシミュレーターを利用し、実際にプラントで使用した場合のランニングコストの解析にも取り組んでいきたいと考えています。今回の受賞を励みに、チャレンジ精神を忘れず、これまで以上に日々努力していきたいと思っています。

―最後に後輩のみなさんにメッセージをお願いします。 

諦めずに頑張ればきっと評価されますし、挑戦することは価値のあることだと思います。今、自分が学んでいることに自信を持ってください。大学生活は一度きりなので、自分がやりたいと思ったら迷わず突き進んでほしいと思います。

―ありがとうございました。今後の活躍も期待しています。

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