固体高分子型燃料電池への実用化が期待される
非白金触媒の研究が高く評価される

 7月7日(金)、8日(土)に行われた、第45回東北地区高分子若手研究会夏季ゼミナールで、生命応用化学専攻博士前期課程1年の新貝昇大さんがポスター賞を受賞しました。公益社団法人高分子学会東北支部では、学生を含む若手研究者が自身の専門領域にとどまらず、高分子科学の基礎から最先端にわたる幅広い研究分野に触れ、新たな視野を広げることを目的にゼミナールを開催しています。また、参加者間での情報や意見を交換する場としてポスター発表やディスカッションを行う機会を設けて、特に優秀なポスター発表に対し賞を授与しています。今回は、発表者52人のうち4人が選ばれました。新貝さんが発表した、『固体高分子型燃料電池用カソード触媒の創製と電気化学特性』は、企業との共同研究による成果でもあります。新貝さんに喜びの声とともに、研究について詳しくお話を聞きました。

 

―ポスター賞受賞おめでとうございます。感想をお聞かせださい。

ありがとうございます。学会等で発表するのは2回目ですが、今回は賞があることを知らなかったので、閉会式で自分の名前がモニターに映し出されたときは、「何であるんだろう?」と思ったくらい驚きました。賞をいただくのは初めてのことで大変嬉しく思うとともに、励みになりました。ご指導いただいた根本修克教授や共同研究者の企業の方々に感謝いたします。さらに研究活動に尽力していきたいと思います。

 

―発表した研究について詳しく説明いただけますか。

 環境汚染や化石燃料の枯渇が危惧されている今日、高効率でクリーンなエネルギーが供給できる燃料電池に注目が集まっています。中でも、固体高分子型燃料電池(PEFC)は、室温で起動するため起動時間が短いことや、電解質が薄膜で小型軽量化が可能であることから、電気自動車や携帯機器、エネファーム等への実用化が期待されています。しかしPEFCはカソード(正極)のエネルギー変換率が低いため、酸素還元触媒として、希少かつ高価なプラチナを含有する白金触媒を使用してい

カーボンブラック含有ポリコバルトフタロシアニン

る点がデメリットになっています。白金と同等またはそれ以上の酸素還元活性を示す、非白金触媒の開発が強く求められているのです。そこで、私たち有機材料化学研究室では、非白金触媒に求められる広い表面積、高い炭素含有率、高い導電性、金属を固定化する配位子を持つ金属フタロシアニンに注目しました。これまでの研究で、700℃から900℃の高温における焼成と王水処理よって、酸素還元活性が向上することを明らかにしました。本研究では、さらに活性を向上させることを目的に、金属フタロシアニンにカーボンブラックを合成し、焼成と王水処理によって得られた触媒の電気化学特性を検討しました。

 

―どのような結果が得られましたか。

酸素還元活性のCB含有量による影響

 合成したカーボンブラック含有ポリコバルトフタロシアニンは、焼成による触媒活性の向上を確認することができました。これは、600℃以上で焼成することで元の構造が消滅し、より高い活性を示す構造に変化したためだと考えられます。しかし、王水処理による向上は見られませんでした。カーボンブラックを含有したことで、金属脱離量が少なく、表面積の拡大が見られなかったことが理由として挙げられます。また、カーボンブラックの含有比を[10:1]、[20:1]、[30:1]に変えて、含有量による影響を調べましたが、[10:1]のものが最も高い活性を示しました。                              

 

―どんなところが評価されたと思われますか。

 他の研究者や企業でも力を入れている研究なので、注目度が高かったことが一番の理由だと思います。また、物質の構造自体がきれいだから目を引くというのもプラスに働いているかもしれません。多くの方が発表を聞きに来てくださいましたが、あまり高分子分野では扱わないテーマでもあったので、反応を見ながら説明の仕方を変えたり、わかりやすく丁寧に説明したり工夫しました。それで、より深く研究内容について理解いただき、多くの方の共感を得られたのだと思います。

 

―どんなところが研究の魅力ですか。

 この研究に関して言えば、まず物質の構造が面白くて興味をそそられます。その上、性能が良ければ自動車の燃料電池として製品化される可能性もあるので、大変やりがいを感じます。自分のつくったものを実際に企業の方から評価していただいた時は嬉しかったですし、モチベーションもあがりました。競争の激しい業界にあって、世界を相手に挑戦できる環境の中で、自分で考え、自分で実験を進めていけるのは、とても面白いです。“これぞ研究の醍醐味”と言えるような気がします。

 

―なぜ、化学の道に進んだのですか。

幼い頃から洗剤や調味料、化粧品などを混ぜ合わせて遊んでいました。小学生の時、たまたま重曹とクエン酸を混ぜ合わせて水を入れたら、炭酸水ができたんです。それでますます実験の面白さにハマってしまったというわけです。母方の祖父が企業の研究者で特許を持っているそうですが、その遺伝子を受け継いだのかもしれません。いずれは化学に携わりながら、世の中のためになる仕事がしたいと思いました。高校の先生に相談したら、工学部の応用化学系学科への進学を勧められました。それが、この大学に入るきっかけになりました。

 

―今後の目標や夢をお聞かせください。

 これまでも、フタロシアニンを使って触媒をつくり、様々なものを組み合わせることで、活性の向上を目指してきましたが、さらに活性の高い触媒をつくることが目標です。将来は、今、取り組んでいる研究の知識を活かして、世界の中でもトップレベルを争う企業に入り、研究開発に携わる技術者になりたいと思っています。
 研究は人のため、地球のために役立つその一歩につながっています。一人ひとりの努力が成果を生みだす力になるので、後輩たちにも頑張ってほしいと思います。

 

―ありがとうございました。今後の活躍も期待しています。