住民主導による地域のインフラ整備に関する先進的な研究が高く評価される

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 浅野さんの受賞の喜びの声とともに、研究について詳しくお話を聞きました。

 

―年次論文奨励賞受賞おめでとうございます。感想をお聞かせください。

 受賞が決まった時は、正直驚きました。どちらかといえば構造物に関するハード面の研究が多%e7%ac%ac38%e5%9b%9e%e3%82%b3%e3%83%b3%e3%82%af%e3%83%aa%e3%83%bc%e3%83%88%e5%b7%a5%e5%ad%a6%e8%ac%9b%e6%bc%94%e4%bc%9a%e3%80%8c%e5%b9%b4%e6%ac%a1%e8%ab%96%e6%96%87%e5%a5%a8%e5%8a%b1%e8%b3%9e%e3%80%8dい分野ですから、私が取り組んでいるような人に関わるソフト面の研究が果たして受け入れていただけるものなのか疑心暗鬼でした。そうした中で評価していただけたのは大変光栄なことで、心から嬉しく思っています。論文を書くのも初めてでしたから、ご指導いただいた岩城一郎教授にも深く感謝しています。また、本研究は2012年から始まった道づくり事業が発端となり、ここまで展開してきたものです。いろいろ苦労もありましたが、受賞できたのもご協力いただいた自治体や住民の方々のおかげだと思っています。

 

―研究について詳しく説明いただけますか。

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●橋梁点検チェックシートPDF
 検討モデルは福島県石川郡平田村です。これまでにも、住民が地域のインフラに関心を持つことを目的に、住民と学生との協働による道づくりや橋守、橋の名付け親プロジェクトなどを実施してきました。本研究を進めるにあたっては、住民の参加%e7%ac%ac38%e5%9b%9e%e3%82%b3%e3%83%b3%e3%82%af%e3%83%aa%e3%83%bc%e3%83%88%e5%b7%a5%e5%ad%a6%e8%ac%9b%e6%bc%94%e4%bc%9a%e3%80%8c%e5%b9%b4%e6%ac%a1%e8%ab%96%e6%96%87%e5%a5%a8%e5%8a%b1%e8%b3%9e%e3%80%8dが不可欠で、住民への周知と理解を得るための広報活動が必要だと考えました。そこで、平田村文化祭の開催期間中に『模型を用いた橋梁ワークショップ』を実施し、インフラを取り巻く社会の動きを伝えながら、住民による簡易橋梁点検の意義を説明しました。そして、主旨に賛同した住民約70名の方に、考案した点検シートを用いた橋梁点検を依頼しました。対象橋梁が近くにないため参加できなかった住民の方もいましたが、子どもから大人まで多くの人に広報でき、直接対話して意見を聞くことができたのは、とても貴重な機会でした。
 その後、郵送にて回収した点検シートの結果と橋梁点検の実務者が同様のシートを用いて行った点検結果を分析しました。その結果、劣化が進行していない橋では住民間・実務者間ともばらつきが小さく、進行している橋ではばらつきが大きいことがわかりました。また、住民の平均値と実務者の評価値に大きな差はみられませんでした。このことから、住民であっても日常の橋梁状態を点検することが可能だという結論が得られました。今後は、道づくりや道路愛護作業を実施する際に、学生と住民が協働して橋の簡易点検や橋の歯磨き(清掃活動)を行うことで、その場で点検データを回収することも提案しました。

 

―どのような点が評価されたと思われますか。

 日本コンクリート工学会の提言の中に、初めて地域住民の手を借りて橋梁を維持していくという文言が盛り込まれていたことからも、学会の目指す方向と論文の内容が合致していた点が評価されたのだと思います。住民と協働で行っている事例はありますが、論文として発表した方はあ%e7%ac%ac38%e5%9b%9e%e3%82%b3%e3%83%b3%e3%82%af%e3%83%aa%e3%83%bc%e3%83%88%e5%b7%a5%e5%ad%a6%e8%ac%9b%e6%bc%94%e4%bc%9a%e3%80%8c%e5%b9%b4%e6%ac%a1%e8%ab%96%e6%96%87%e5%a5%a8%e5%8a%b1%e8%b3%9e%e3%80%8dまりいないのではないでしょうか。2012年から続いている活動が本研究の取り組みに発展したものであり、そのプロセスについて発表したこともポイントになりました。また、文化祭に出展し、直接住民の方にチェックシートを渡して参加いただいたことも大きな意義があったと思います。年次大会の中でも、“地方を元気にしよう”、“市民定着型にしていこう”と謳っており、土木業界全体として住民主導のインフラ整備を進める動きが活発になってきているようです。その先進的な事例であり、研究成果や今後の展開も含め、注目されているのだと思います。

 

―今後の目標についてお聞かせください。

 まずは、この取り組みに興味を示している他の市町村にも展開していく予定です。住民向けに考案した橋梁点検チェックシートですが、あまり橋梁の知識のない市役所や役場の職員の方など、インハウスエンジニアも利用できるのではないかと考えています。自治体から地域住民に広%e7%ac%ac38%e5%9b%9e%e3%82%b3%e3%83%b3%e3%82%af%e3%83%aa%e3%83%bc%e3%83%88%e5%b7%a5%e5%ad%a6%e8%ac%9b%e6%bc%94%e4%bc%9a%e3%80%8c%e5%b9%b4%e6%ac%a1%e8%ab%96%e6%96%87%e5%a5%a8%e5%8a%b1%e8%b3%9e%e3%80%8dがる可能性にも期待できます。また、現在宮城県の黒川高校と連携して、橋梁に関する特別授業や課題研究の題材として橋梁点検を実施しています。高校の教材としても大いに役立つので、全国に広めていけたらと思っています。実は、この活動に関心を持っていただいた新潟県の長岡工業高等専門学校と共同で、チェックシートの電子化を進めているところです。スマートフォンを使って気軽に点検できるようになれば、橋梁の維持管理も容易になります。若い方にとっては、“スマホでできる社会貢献”にもなるでしょう。これらの取り組みを通して、橋の長寿命化や地域のインフラ整備につなげていくことが目標です。

 

―最後にメッセージをお願いします。

 これまでは、市民の税金を使って行われる土木公共事業に対して、住民の方から好意的に受け入れられていない面もありました。老朽化が進んでいる橋をどうしていくのか、維持管理や“橋の終活”を考えるうえでも、住民と協働でインフラ整備を進めていくことは、有効的な手段であると考えます。インフラへの理解が深まり、納得していただけるようになれば、公共事業に対する印象も変わることでしょう。また、若い方には、もっと地域のインフラに目を向けてほしいと思っています。研究活動を通して、その一助になるよう、これからも尽力していきます。

 

―ありがとうございました。今後の活躍も期待しています。

 

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