地域の新たな架け橋となるプラットフォームの設計が高く評価される

 9月27日(金)にせんだいメディアテークにて、『第23回JIA東北建築学生賞(公益社団法人 日本建築家協会東北支部主催)』の公開審査が行われ、建築学科4年の澤畠優さんの作品『生彩を放つ蕎麦』が奨励賞(みやぎ建設総合センター賞)を受賞しました。応募作品41作品が公開審査に進み、コンセプトの導き方、社会性・歴史性、空間性・造形力、表現力の4項目に加え、学生として将来の可能性に期待できる観点などを基準に審査が行われました。ポスターセッション、審査員の講評による第一次・第二次審査を経て、第三次審査のプレゼンテーションに進んだのは10作品。澤畠さんは作品の設計趣旨やポイント、作品に込めた思いなどをアピールしました。審査員の講評後行われた投票の結果、僅差の争いの中で、澤畠さんの作品は4番目の支持を受け、奨励賞に選ばれました。
 澤畠さんに受賞の喜びとともに、作品について詳しくお話を聞きました。

木造の良さを引き出しながら、美しい建築を表現した作品『生彩を放つ蕎麦』

―奨励賞受賞おめでとうございます。感想をお聞かせください。

 ありがとうございます。3年生だった昨年も参加させて頂き、第三次審査までいけたのですが、入賞することはできなかったので、今回リベンジできて素直に嬉しいです。自分の建築を知ってもらいたいという思いを込めて発表しましたが、やはりプレゼンテーションは緊張しました。自分より質の高いプレゼンテーションをしている学生もいて、自分の実力不足を少し感じた部分もありますが、賞を頂けたことは今後の自信にもなりましたし、課題が明確になったので、次につなげていきたいと思います。また、4年前期の授業や所属する研究室において、丁寧にご指導頂きました先生方にも感謝しています。

―作品について詳しく説明いただけますか。

 自然に人が集うプラットフォームになる滞在型の建築を組み立てることが課題でした。それに対して、『農村の復興』をテーマに、フラリと通った農村に立ち寄ってみたくなるようなプラットフォームをつくりたいと考えました。選定した場所は私の地元でもある茨城県の常陸太田市大里町です。ここは、古くから蕎麦作りが盛んで、『金砂そば』で有名な地域で す。現在はブランド化されて『常陸秋そば』と呼ばれていますが、私の実家でも金砂そばを作っていたので、蕎麦打ちを手伝ったこともありました。それに課題への回答につながる可能性を感じ、また自分にとっては身近な題材で、等身大で取り組みやすいと思いました。
 その金砂地区の現状は、他の農村と同様に人口減少が進み、後継者が少なくなっています。過疎化が進むことで後継者が数少なくなり,農業等の地域産業も衰退するでしょう。このままでは,商業などの施設や住居が地域の中心である駅周辺に集約される一方,田畑(農地)を所有し容易に住まいを移動・集約できない農村の暮らしを再考することが喫緊の課題だと考えました。そこで、地域に根差し日常性を持つ蕎麦の可能性に期待しながら、居住地となる駅 周辺と蕎麦畑のある農村の境界に、それらを繋ぐ地域の新たな架け橋となるプラットフォームを設計しました。


 選定した場所はなだらかな傾斜になっていて、中央の窪みに道があり人々が行き交っています。生活の場である住居地と仕事の場である田畑をつなぐことで、農家の人たちにとっても生活しやすい場所になると考えました。蕎麦の栽培は約3か月間と期間が限られるので、蕎麦畑に近いところ(模型右側)に蕎麦の乾燥兼事務所を置き、1年の間で入れ替えができるようにしました。真ん中の部分は建築の表情がよく見えて、生彩さが一番感じられる場所なので、大開口を取り地域全体を見渡せるようにし、蕎麦粉を作る製粉所を設けました。コミュニティセンター(兼カフェ)としても利用することで、助成事業の対象となり運営資金の獲得にもつながります。そして、住居地側(模型左側)には地域特産物の販売、蕎麦レストランを設けて、観光客にも蕎麦の一連の流れが見える施設としてプログラムしました。構造は地形に合わせながらスラブ(床)の高さを少しずつ変え、真ん中は道路に合わせて高くしました。そこに水車を置き、その動力で石臼を回し蕎麦粉を製粉します。柱は両脇を密にし、壁を支える梯子も設置することで、耐力壁としての役割を持たせました。梯子は蕎麦の乾燥棚としても活用します。
 このように、現状を理解しつつ田畑を所有する方々の新たな生活と農村の躍動感を表現できるように設計するとともに、何十年後かの日本の状況も見据えた未来型設計を提案しました。

『生彩を放つ蕎麦』プレゼンボード(PDF)

―どのような点が評価されたと思われますか。

 自分で言うのも何ですが、プレゼンテーションボードや模型は時間をかけて丁寧につくりました。その中で、地域の木を使う地産地消はもとより、木造建築の魅力を何とか表現している点は評価されたように思います。公開審査では動線という機能面についての質問がありましたが、ここで働いている人の動線と観光客の動線をなるべく近づけることで、蕎麦を身近に感じられるようにしたことも上手く伝えられたと思います。また、蕎麦粉に詳しい審査員の先生から、蕎麦の乾燥についても問われました。蕎麦粉にするためには、収穫して15%まで含水率を下げないといけないので、施設としてはなるべく西日が当たらないようにしつつ、乾燥に有効な西日を利用して蕎麦を乾燥できる仕掛けを上手く引き出して頂きました。さらに、ある審査員の先生が、この作品は先々のことまで調べながら、地域の特色である蕎麦を活かした都市計画を考えてしっかり設計していると強調してくださったのは、とても嬉しかったです。

問題解決能力が身についたことが
建築を学んで成長できたことだと思います

―建築の魅力は何だと思いですか。

 昔から建築が好きで、有名な建築家が手掛けた建築物をよく見に行っていました。今は、朝起きたらパソコンを立ち上げてCADで設計していたら、いつの間にか日が暮れていたというくらい建築に没頭してしまいます。形になるまでが大変ですが、ちょっとずつでも形ができてくると嬉しくて、もっとカッコよくしたい思いが強くなり、どんどん楽しくなっていくのが建築の面白いところです。2年生の設計課題からずっと木造の作品を作ってきました。建築の魅力の1つは美しさを求めることにあると思っていて、ある面では今回の作品で、今、自分なりに考える木造建築の美しさを表現できたかな、と思います。その様に、それまで積み上げてきたものが、一つのモノとして表現されるところも、建築の魅力だと思います。また、授業や研究などでは、当たり前のように取り組んでいますが、何が不足しているのか、何をしたらよいかといった問題を自ら見つけ出し、それに対しどうすればよいか解決方法を考えていく問題解決能力が、建築に取り組むことで自然に身についた様に思います。これは建築の世界だけでなく、社会に出てから役立つスキルだと思っています。

―今後の目標についてお聞かせください。

 大学生活も残りわずかですが、今取り組んでいる卒業設計に注力し研究室で色んなことを吸収して、結果はともかく、最後にもうひと伸び成長できればと思っています。

―ありがとうございます。今後の活躍も期待しています。