堆積物燃料電池の研究から新たな防虫手法につながる成果を生みだす

 1月27日(土)に仙台で開催された第10回廃棄物資源循環学会東北支部・第5回日本水環境学会東北支部合同研究発表会において、「堆積物燃料電池が下水汚泥からのチョウバエの発生に及ぼす影響」の演題で口頭発表した土木工学科4年の浅見雄紀さんが、優秀発表賞を受賞しました。本会では27件の口頭発表があり、浅見さんの発表は大学生部門の優秀発表賞に選ばれました。浅見さんが所属する環境生態工学研究室では、下水汚泥を用いた堆積物燃料電池の研究に取り組んでおり、その中でチョウバエ発生を抑制する現象が起こったことから、検証を進めてきました。今回は、その成果について発表したものです。
 受賞した浅見さんの喜びの声とともに、研究について詳しくお話を聞きました。

 

―優秀発表賞おめでとうございます。感想をお聞かせください。

 ありがとうございます。口頭発表は初めての経験で大変緊張しましたが、発表後、指導教員の中野和典先生から「よかったよ」と言われて安堵しました。授与式で名前を呼ばれた時は、「取れてよかった」と思いながらも実感はありませんでしたが、後から徐々に嬉しさが込み上げてきた感じです。ご指導いただいた中野先生には深く感謝しております。

 

―研究について詳しく説明いただけますか。

 発電する微生物の働きを利用して有機物から直接電気エネルギーが得られる技術として、今、注目を集めているのが微生物燃料電池です。この原理を使って、私たちの研究室では下水汚泥をろ過処理すると同時に発電も行う堆積物燃料電池の研究を行っています。その実験を進める中で、ある発見がありました。配線がない開回路では下水汚泥から衛生害虫であるチョウバエが発生したのに対し、電圧計を接続した開回路では、なぜかチョウバエは発生しなかったのです。この現象が偶然なのか、必然なのかはわかりませんでしたが、殺虫剤を使わず害虫を駆除することができれば、安全で環境への配慮にもつながります。そこで本研究では、電圧測定状態の開回路の堆積物燃料電池でチョウバエの発生が抑制される現象の再現性を検証しました。そして、閉回路の堆積物燃料電池のチョウバエ発生抑制効果についても明らかにすることを試みました。
 まず、絶縁ろ材としてリサイクルガラスを用いた開回路と電圧測定状態の開回路の堆積物燃料電池を準備し、下水汚泥を90日間で5回投入し、発生する電圧とチョウバエ数をモニタリングしました。配線が未接続で電圧がゼロである開回路では、堆積物燃料電池から発生したチョウバエの総数はおよそ300匹に達しました。 開回路でも電圧は下水汚泥投入回数に伴い増加し、 安定して0.3V前後の電圧が得られました。これは、接続しているデータロガ―が無限大の抵抗として働いたため、電圧が維持されたものと推測できます。90日間の実験期間におけるチョウバエ発生数はゼロで、チョウバエの発生が完全に抑制されたことが確認できました。 この結果より、電圧測定状態の開回路の堆積物燃料電池でチョウバエの発生が抑制される現象の再現性を検証できたことになります。
 次に、閉回路の堆積物燃料電池のチョウバエ発生抑制効果について明らかにするために、 10kΩの抵抗を接続した閉回路の堆積物燃料電池を2系列(絶縁ろ材:リサイクルガラス又は銅スラグ)準備し、下水汚泥を90日間で5回投入し、発生する電圧とチョウバエ数をモニタリングしました。絶縁体ろ材に銅スラグを用いた閉回路の堆積物燃料電池では、5回の下水汚泥投入全てで電圧が発生しました。 そして90日間の実験期間で発生したチョウバエは1匹だけでした。 リサイクルガラスの閉回路では、1回目の下水汚泥の投入で電圧が最高の0.1Vになりましたが、3回目の投入以降は電圧が発生しませんでした。電圧が発生しなくなった33日目に最初のチョウバエが発生し、57日目以降に急激に発生したチョウバエの総数は670匹に達しました。電圧の発生が持続した銅スラグの閉回路では、チョウバエ発生数がわずか1匹だったことから、チョウバエの発生抑制には電圧が必要であり、電圧の発生が持続した閉回路の堆積物燃料電池でも、チョウバエの発生は抑制されることが明らかとなりました。また、堆積物の色とチョウバエ発生の関係にも注目すべき点がありました。チョウバエが発生した開回路や90日目の閉回路(ガラス)の堆積物が下水汚泥と同様の黒色であったのに対し、チョウバエの発生が抑制された電圧測定状態の開回路、閉回路(銅スラグ)では赤褐色でした。これは、鉄酸化物の発生が関係しているものと考えられます。

 

―どのような点が評価されたと思われますか。

 独創性に富んでいてインパクトもあったのが大きかったと思います。防虫につながる可能性があるので、将来性も評価されたのではないかと思われます。近年では殺虫剤の使用そのものが制限されるようになってきているので、この研究により、微弱な電気で害虫の発生を抑制する手法を開発できれば、大いに役立つことが期待できます。研究では、発生したチョウバエの数を一匹ずつ数えたり、下水汚泥の臭いなど大変なこともありましたが、賞をいただけて苦労も報われました。

 

―どんなところが研究の魅力ですか。

 土木は測量や水理、防災など幅広い分野を学ぶことができます。特にこの研究室では、微生物を扱うなど生命応用化学科のような研究だったり、燃料電池の研究は電気電子工学科と共同で進めたりするので、面白くてとても刺激的でした。高校の時、森林科学科の土木の授業で興味を持ったのが、この道に進むきっかけになりましたが、やはり土木を学んでよかったと思っています。

 

―将来の目標をお聞かせください。また、後輩へのメッセージをお願いします。

 道路系の会社に就職するので、将来は、一つでも交通事故を無くせる道路をつくりたいと思っています。また、この研究はまだ始まったばかりなので、後輩たちにはチョウバエの発生抑制のメカニズムを解明してほしいと思っています。そして、他の害虫にも効果があるのかを検証して、新しい防虫システムの確立につなげてほしいです。

 

―ありがとうございました。今後の活躍を祈念しています。

 

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