第7回福島地区CEセミナーにてポスター発表優秀賞受賞しました

 平成28年12月17日(土)に、日本大学工学部で開催された第7回福島地区CEセミナー(主催:福島化学工学懇話会、共催:日本大学工学部、協賛:化学工学会東北支部)において、生命応用化学科4年の土屋ひかるさんが、ポスター発表優秀賞を受賞しました。今回参加したのは、日本大学工学部の他、福島大学、福島高専、山形大学、小山高専で、化学工学に関連した研究を進めている学生による28件の対象発表から、5件が表彰されました。
 土屋さんの発表題目は、「水素製造を目指した新奇イリジウム(III)錯体触媒の合成とスクリーニング評価」で、(国研)産業技術総合研究所(産総研)福島再生可能エネルギー研究所(FREA)の水素キャリアチームとの共同研究によるものです。本研究では、ギ酸からの水素製造に必要とされる脱水素化触媒の固定化を目標に、イリジウム(III)錯体触媒の合成とギ酸脱水素化反応によるスクリーニング評価を行いました。現在土屋さんは、FREAの産業人材育事業の技術研修員として本研究に携わっています。
 土屋さんの喜びの声とともに、FREAでの研究活動について詳しくお話を聞きました。

 

―ポスター発表優秀賞受賞おめでとうございます。感想をお聞かせください。

 ありがとうございます。初めてのポスター発表だったので、賞をいただいた時はビックリしました。あまり予行練習もできていなかった中で受賞できたのは、ご指導いただいた皆さまのおかげだと感謝しております。学会等で学部生が発表する機会はなかなかないので、大変貴重な経験ができました。賞は今後の励みになりますし、残り僅かとなった卒業研究も気を引き締めて取り組んでいきたいと思います。

 

―研究の概要について説明いただけますか。

 本研究は、水素をエネルギーとして利用するための研究です。日本は発電に必要なエネルギー源のほとんどを海外からの化石燃料に依存しているため、エネルギー自給率6%という非常に低い状況になっています。また、化石燃料はCO2排出量が多いことも問題視されています。そこで注目されているのが水素です。水素は、再生可能エネルギーから製造可能で、CO2を排出しないクリーンなエネルギーとして利用できます。しかし、水素は取り扱いを十分に注意しなければ危険だとされているため、水素を安全に貯蔵できる媒体が必要なのです。本研究では、水素を安全に輸送し、長期間貯蔵できる水素キャリアについて検討を行いました。今回、私たちが着目したギ酸は液体で、水素の含有量が多いことや水素の出し入れが容易に行えるという特徴があります。また、ギ酸は水素とCO2を合成してつくられることから、CO2を有効資源化できる利点もあるのです。これまでギ酸を介した水素の出し入れには、均一系触媒(錯体触媒) を用いた研究がされてきましたが、煩雑な合成過程と高度な合成技術が必要になることや実用化する際のコスト面での課題がありました。錯体を固定化した固定化触媒を開発することによって、取り扱いも容易になり、触媒の回収や分離ができると考えられます。実用化を目指した固定化触媒を開発するために必要な検討事項として、簡単に錯体合成ができるか、高い触媒活性が得られるかに焦点をあて、錯体触媒の合成とその評価を実施しました。使用した錯体触媒は8種類で、常温下で合成可能、水のみを使用、原料が容易に入手できることを条件にしました。結果、過去の文献よりも高い活性が得られたものや簡単には合成できないものもありました。なぜできなかったのかについても検討し、合成後、実際にギ酸の脱水素化反応を行い反応性の高いものがないかを調べました。今回は、それらの実験結果についてまとめたものを発表しました。

 

―どのような点が評価されたと思われますか。

水素は次世代のエネルギーとして期待されているので、多くの方に興味を持っていただけたのかなと思います。特に、国の研究機関で進めている研究だから、注目度も高かったのでしょう。ポスター発表は、近距離で質疑応答を受けるので大変緊張しましたが、こうした場面で就職活動の面接の経験が役に立ちました。全く知らない人にどうしたら伝わるのか考えながら、わかりやすく説明できたのも評価された点だと思います。なぜギ酸を使うのかと質問されたり、指摘を受けたりもしましたが、研究の目的や意味を再確認し、実験内容について振り返ることができたので、今後研究を進めるうえでも良かったと思います。

 

―なぜ産総研の技術研修員になったのですか。

 昨年の秋にFREAを見学した際、産総研の研究者の指導の下に技術を習得できる技術研修制度があることを知りました。ちょうど水素キャリアの研究が進められていて、所属する環境化学工学研究室の児玉大輔先生に承諾を得て、技術研修員として研究に従事できるチャンスをいただきました。10月からだったので研修期間が短いこともあり、平日はずっとFREAで研究し、土曜に大学に行くという日々を過ごしています。実際に研究を進めながら、研究に必要な技術を学べるほか、最先端の実験・分析技術などを習得できます。本研究では実験で扱う薬品の量が少なく、1_mg単位で計量したり、薬品が漏れないよう手早くきれいに処理したりするのが難しく、最初は失敗の連続でした。自分はなんて不器用なのかと気づかされました(笑)。何度も実験ノートを見て、何度も同じことを繰り返していますが、いまだ試行錯誤しています。その他、スケジュール管理も自分で行うので、時間の使い方や、ON/OFFのスイッチの入れ替えなど、企業人としての資質も磨くことができます。大学とは違う環境のFREAでの経験は内容が濃く、社会に出てから役立つことばかり。もっといろいろなことを吸収して、自分自身の成長につなげたいと思います。

 

―今後の目標や夢についてお聞かせください。

 4月からは社会人になりますが、何になっても、どこに行っても、向き不向きがあり、なるようにしかならないのが常です。まずは、自分の目の前のことに全力で取り組んでいきたいと思います。もともと、化学の中でも材料系に興味があったのですが、大学に入ってから化学工学の分野に出会い、この研究室に入りました。FREAでの研究を通じて幅広く化学の知識を得られたのも、学べることは何でもトライし、視野を広げながら大学生活を送ってきたからです。どこで、どの知識が役立つかわかりません。これからもその姿勢を貫くとともに、大学で学んだ経験を活かせるように働きたいと思います。また、自分の行動はご指導いただいた方々の結果として見られるので、その教えに恥じない人になれたらと考えています。

 

―最後に後輩たちにメッセージをお願いします。

 何事にも全力で取り組むことが大事です。単位を取ることが大学での目的ではありません。自分でやり切ったと思えるように取り組んでほしいと思います。いろいろ学べる環境があるので、ぜひチャンスを活かして将来につなげてください。

 

―ありがとうございました。今後益々活躍されることを祈念しています。

 

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