企業および産総研等との共同研究による
イオン液体熱媒体特性についての発表が賞に輝く

第38回溶液化学シンポジウムポスター賞image002 この度、10月21日(水)~23日(金)に行われた第38回溶液化学シンポジウムにおいて、生命応用化学専攻博士前期課程2年の山拓司さんがポスター賞を受賞しました。35歳以下のPD(ポストドクター)を含めた発表者36名の中から選ばれたのは3名のみで、院生の山さんが受賞したことは快挙と言えます。
 発表した『ホスホニウム系イオン液体水溶液の密度、粘度、熱物性』の研究は、福島再生可能エネルギー研究所(産業技術総合研究所)の被災地企業のシーズ支援プログラムにより、同研究所および産総研・化学プロセス研究部門、日本化学工業㈱、日本大学工学部環境化学工学研究室が共同で研究を進めているもので、新たなビジネスの創出につながるのではと期待も高まっています。

 山さんの喜びの声とともに、研究について詳しくお話を聞きました。

―ポスター賞受賞おめでとうございます。感想をお聞かせください。

 ありがとうございます。さまざまな方のご協力のもと進めてきた研究なので、受賞できたのも私一人の成果ではなく、多くの方のお力添えがあってのものだと身にしみて感じています。皆さまへの感謝の気持ちを忘れず、今後の研究活動に励んでいきたいと思っています。

―研究について詳しく説明いただけますか。

 イオン液体は、難燃性、難揮発性、高イオン伝導性など、従来の有機溶媒にない特徴があり、注第38回溶液化学シンポジウムポスター賞image004目が集まっている物質です。中でも、リンを中心に持つ四級ホスホニウム塩のイオン液体は耐熱性に優れており、太陽熱利用給湯システムの熱媒体などへの応用が検討されています。この研究では、熱媒体としての特性を明らかにするために、親水性のホスホニウム系イオン液体と水からなる混合溶液を調整し、大気圧下における密度、粘度、熱物性について評価を行いました。水と混合したのは、耐熱性に優れたイオン液体と、伝熱特性に優れた水の特性を両立させることを狙ったものです。また、混合によって純液体とは異なる物性が表れるのではという期待も持っていました。

 測定の結果、物性の多くは両者の中間的な値を示すに留まり、期待を超えるような特徴はあまり見られませんでした。しかし、従来の混合系とは違う挙動も見られました。特に、低濃度側に密度の極大が現れた点と、温度増加に伴い密度の極大が移行した点はこれまでにない発見で、価値のあるものだと思われます。

―どのような点が評価されたと思われますか。

第38回溶液化学シンポジウムポスター賞image006 研究への期待も込めて評価されたのだと思います。このままでは熱媒体への応用は難しいのではという意見もある一方で、新たな物性を示したことに関心が集まり、さまざまな意見が飛び交って、白熱した議論の場となりました。溶液化学の専門家の方々から、「なぜそのような物性を示したのか解き明かしてほしい」とのご意見をいただくことができ、大変光栄でした。

 しかし自分としては、準備不足のために完璧な発表ではなかったことや、考察をもっと深めておけばよかったと反省すべき点もありました。自分なりに研究への理解を深めて臨みましたが、専門家の方々との知識レベルの違いを痛感しました。研究を続けながら、改善を図っていきたいと考えています。

第38回溶液化学シンポジウムポスター賞image008―どんなところが研究の魅力ですか。

 今回の研究では、自分の携わった研究がどのように応用されるのか、どう産業化に直結しているのかがイメージしやすく、やりがいを感じられるところが一番の魅力でした。これまで携わってきた研究とはやや異なる内容であるために新鮮さがあり、テーマそのものも興味深いものであるため、意欲的に取り組めました。

―今後の目標についてお聞かせください。

 今回の発表を通して、いろいろご指摘やご意見をいただいたので、すぐに実行して結果に結びつけたいと思います。また、研究の進め方や課題へのアプローチの仕方など、大学院で学んだことは就職先でも活かす機会が必ずあると考えています。研究を通じて学んだことを将来活かせるように、これからも研究活動に取り組んでいきます。

―最後に後輩の皆さんにメッセージをお願いします。

 “なぜ?”と思ったことは、とことん突き詰めて自分なりの答えを導きだすことが大事です。それがまた次の新しい“なぜ?”につながっていき、探究することが面白くなると思います。また就職活動にも言えますが、“備えあれば憂いなし”ということわざもあるように、何事も準備は早めが肝心です。

―ありがとうございました。今後の活躍も期待しています。

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