柔らかいものの粘弾性特性を測定できる機器の開発が高く評価される

 11月16日(金)・17日(土)に行われた公益社団法人日本設計工学会東北支部『平成30年度研究発表講演会』で、機械工学専攻博士前期課程2年の山田悠人さんが学生優秀発表賞を受賞しました。日本設計工学会は、主として機械工学分野の設計に従事する技術者・教育者・研究者・学生等で構成される学会です。東北支部主催の本大会は、製品設計・製図教育・機構といった設計工学に関する多岐にわたる研究発表を目的に2年ごとに開催されています。今回はエントリーされた13件の発表のうち、2件が学生優秀発表賞に選ばれました。山田さんが発表した『空気噴流を用いたヒステリシスループ法による動的粘弾性特性に関する研究』は、計測・診断システム研究室で独自に開発した柔軟物の粘弾性特性評価試験装置を使った実験結果を報告したものです。
 山田さんの喜びの声とともに、研究について詳しくお話を聞きました。

独自に開発した装置を使って、豆腐やハンドクリームなど
異なる材料の特性を評価できたことが受賞につながりました。

 

―優秀発表賞受賞おめでとうございます。感想をお聞かせください。

 ありがとうございます。同じ研究室から3名で参加していた大会で、互いに切磋琢磨しながら発表に臨みました。私にとっては学外での最後の発表でしたから、賞をいただけて大変嬉しかったです。今後の励みになるとともに、社会に出てからの自信にもなります。

 

―研究について詳しく説明いただけますか。

 私たちの研究室では、食品などの柔らかいものの硬さを測るための測定機を開発しています。通常行われている測定方法は、試料に治具を押し当てて応答をみる引張・圧縮測定になりますが、柔軟物の形状に合わせた治具の選択が必要で、負荷・除荷の速度は治具の可動速度に依存することになります。当研究室で開発した測定装置は、柔軟物表面に噴き付けた空気圧により形成されたくぼみ深さから、粘弾性特性が評価できます。治具の選択が不要で、瞬間の負荷や除荷に伴う変形の測定が可能です。非破壊・非接触なので衛生的な面でもメリットになります。本研究では、この試作機を使って、柔軟物の動的粘弾性特性を測定し、定量的に評価することを目指しました。
 時間によって変化しない、一定歪みまたは一定応力のもとで、応力または歪みの変化を測定する静的粘弾性測定に対し、動的粘弾性測定は、周期的に変化する歪みや応力のもとで測定する方法です。実験には、寒天、絹豆腐、ハンドクリーム(A・B)、金属用補修剤の5種類の試料を用いました。それぞれの柔軟物のヒステリシスループによる粘弾性特性等を測定した結果、弾性的か粘性的か、また硬いか柔らかいかといった特性をこの試作機でも評価できることを実証しました。

―どのような点が評価されたと思われますか。

 独自に開発した試作機によって得られた成果だという点が最も評価されたと思います。異なる材料の粘弾性特性が評価できたこともポイントになっていると推察しています。口頭発表の時間は質疑応答を含め20分でしたが、プレゼンテーションを聴いている方にもわかりやすく伝わるように要点を絞って発表しました。高等専門学校の学生も私の説明に頷いていましたから、理解してくれたのではないかと思います。多くの方がこの研究に興味を持っていただけたとしたら、研究へのモチベーションも高まります。今後はくぼみの深さだけでなく、横への広がりも評価値に取り入れて実験していきたいと考えています。

 

学会発表などを通して伝える能力が身につきました。
大学院で学んだ今なら、自信を持って社会に出られます。

 

―どんなところが研究の魅力ですか。

 身の回りにあるものを測れるのが面白いところです。豆腐は絹と木綿の触感の違いもわかりました。ハンドクリームのようなペースト状のものの塗り心地を評価できる点もユニークだと思います。食品の歯ざわり、こし、きめといった食感を測定するテクスチュロメーターに替わる測定機器として実用化できたらと思います。また、医用への応用も期待できます。医者が患者を診察するときの触診は、硬さや柔らかさ、つまり粘弾性を診ているわけです。だから、この装置を応用して臓器の特性を測定することも考えられます。プラモデルなどを組み立てるのが好きで機械工学科を選びましたが、今はものを測ること、硬さ・柔らかさの感覚を数値化することに面白さを感じています。

―大学院に進学した理由は何ですか。

 3年次のゼミの配属の時に、研究室の先輩方から説明を受けたのですが、やはり院生と学部生とでは伝える能力に差があると感じました。自分もそういう力を身につけたいと思ったのが、進学した一番の理由です。大学院で学んできて、改めて学部時代を振り返ってみると、学の浅さを感じます。今更ながら、あの時、社会に出ていなくてよかったと思います。就職先はゴム製品を扱う会社に決まったので、研究してきたことを活かして社会に貢献していきたいです。

 

―後輩たちにメッセージをお願いします。

 大学院進学で悩んだ時、私も先輩から助言を受けましたが、重要なのは、“折れない心”だと思います。諦めずに、自分がどうしたいのかを考えれば、何かしらの答えが見えてくるはずです。大学院に行けば、それだけで貴重な経験になると思います。私も今まで挫けずやってきたからこそ、受賞できたのかもしれません。皆さんも、自分のレベルアップのために、ぜひとも大学院進学を目指してください。

 

―ありがとうございます。今後の活躍も期待しています。