920日・21日に行われた平成26年度化学系学協会東北大会(公益社団法人日本化学会東北支部主催)において、物質化学工学専攻博士前期課程2年の滑川瑛央さんが物理化学部門で、同博士後期課程4年の花村仁嗣さんが高分子/繊維化学分門で、それぞれ優秀ポスター賞に選ばれました。花村さんは一昨年に続き2回目の快挙です。二人の喜びの声とともに、研究について詳しくお話を聞きました。 

 

★優秀ポスター受賞 滑川瑛央さん(物質化学工学専攻博士前期課程2年)

「色素を吸着させた半導体ナノ微粒子膜における励起子の拡散」

H26日本化学会優秀ポスター賞image002近年、化石燃料に代わるエネルギーとして再生可能エネルギーが注目され、実用化のためにさまざまな開発・研究が進められています。太陽電池の研究もその一環で、特に最近では色素増感太陽電池の研究が活発になってきました。低コスト、低エネルギーで生産でき、カラーバリエーションが豊富でデザイン性にも優れている点が特長です。しかしながら、その発電効率はまだ低く、発展途上の技術であるといえます。そのために光エネルギーを効率的に変換する材料を系統的に研究し、より高効率な太陽電池の開発につなげる必要があります。我々の研究室では、より効率の良い色素増感太陽電池を開発するために必要な情報を提供することを目標に、色素増感電極の中で起きている光化学反応メカニズムの解明に取り組んでいます。

私は色素増感太陽電池が発電するために必要な反応メカニズムを研究室オリジナルの分光法を用いて研究してきました。一つの例はレーザーを使った高感度近赤外可視過渡吸収分光法という技法です。目視では捉えることのできない、分子と光との相互作用によって起きる化学反応の微小な時間変化でも、このレーザー光を使った“過渡分光”によって観測できます。H26日本化学会優秀ポスター賞image004分子から半導体へ移動した電子の発生効率を評価できるとともに、色素増感太陽電池の中で起こっている反応のメカニズムを明らかにすることができるのです。

今回は、Al2O3ナノ微粒子半導体膜に色素増感に使われている色素を吸着させ、発光強度の励起光強度依存性を観測した実験結果から高密度励起による励起子消滅反応(Annihilation)を観測した事について発表しました。ポスター発表は、審査員とどれだけ議論できるかが大きなポイントになります。正確かつ論理的で矛盾がないことが求められるため、質問を想定しながら準備をして臨みました。特に改善点に関する質問に対して、明確に説明できたことが評価されたのだと思います。しかし取れると思っていなかったので、受賞した時は大変驚きました。自分の力だけではなく、指導教員の加藤隆二先生や研究室の仲間、共同研究スタッフの皆様のおかげだと思っています。

H26日本化学会優秀ポスター賞image006互いに助け合うことが当たり前のような研究室の中で、社会に出て仕事をするうえでの大切な姿勢を学びました。また、研究を通して物事を深く考え追求する力も身につきました。まだまだ遠いですが、研究者の道に一歩近づけたような気がします。

将来は就職が内定した企業で新しい研究にチャレンジし、社会とその業界の役に立つものを開発することが目標です。


 

★優秀ポスター賞 花村仁嗣さん(物質化学工学専攻博士後期課程4)

「ベンゾチアジアゾール骨格を有するポリ(テトラメチルシルアリーレンシロキサン)誘導体の合成とその物性)

H26日本化学会優秀ポスター賞image008有機ELや発光ダイオード、太陽電池の材料などの発光材料に活用できるような高分子材料をつくることを目標に研究を行っています。

世界で最も普及しているシリコーンであるポリジメチルシロキサン。その主鎖骨格に剛直なベンゼン環を導入した高分子であるポリ(テトラメチル-14-シルフェニレンシロキサン)は、ポリジメチルシロキサンよりもさらに高い耐熱性を有することが知られています。また、芳香環上の置換基としてシリル基を導入することにより、発光波長の長波長シフトや蛍光量子収率の向上についても報告されています。一方、蛍光化合物は特に有機発光ダイオード(OLED)のような分野で広く使用されており、OLED の構成要素の可能性として π 共役分子の発光特性や電子・光電子機能が注目されています。これらの中でもOLED 技術の利用に必要な比較的高い還元電位及び電子親和力を示すのがベンゾチアジアゾール。このベンゾチ H26日本化学会優秀ポスター賞h.image004アジアゾール誘導体は秩序だった結晶構造を得ることができ、効率的な蛍光色素分子であることも知られています。これらを踏まえて本研究では、ベンゾチアジアゾール骨格を有する新規ジシラノール誘導体を合成し、その重縮合反応により得られるポリ(テトラメチルシルアリーレンシロキサン)誘導体の熱物性や光学特性について検討しました。

熱したり冷やしたりしながら約24時間かけてポリ誘導体の合成を行いました。目的の物質ができるまで有した期間は約4か月。ようやく完成したもので実験を試みましたが、光ったり光らなかったりと物性的にあまり良い結果が得られませんでした。今後の展開次第ですが、少し手を加えて改良することで、有用な材料にできる可能性はあると考えています。

H26日本化学会優秀ポスター賞image010受賞に関しては全く期待していなかったので驚いています。しかし、評価していただけたことは大変嬉しく思います。

研究は上手くいかないことばかりですが、その分、目的のものができた時の達成感はとても大きいものです。化学の魅力は、自由な発想でオリジナルのものづくりができること。特に有機化学は伸び代のある分野で研究の遣り甲斐もあります。楽しみながら研究に励み、成果を積み重ねていきたいと思います。