産総研との共同研究によるCOの分離・回収技術の
研究が高く評価される

 9月4日(火)~9月7日(金)に開催された『8th International Symposiumon Molecular Thermodynamics andMolecular Simulation(第8回分子熱力学と分子シミュレーション国際会議:MTMS’18)』において、生命応用化学専攻博士前期課程1年の高橋広大さんが、Student Poster Presentation Award を受賞しました。MTMSは、最新の分子熱力学及び分子シミュレーションについて科学者や技術者等で議論する国際会議です。今年8回目の開催となり、世界各国から著名な研究者が多数参加し、招待講演の他、口頭及びポスター発表が行われました。高橋さんがポスター発表した『CO2 Solubilities in ether functionalized phosphonium-based ionic liquids at 313.15 K (313.15K.におけるエーテル鎖を有するホスホニウム系イオン液体のCO2溶解度)』は、国立研究開発法人産業技術総合研究所(産総研)の金久保光央グループ長(日本大学客員教授)らとの共同研究の成果を報告したものです。
 高橋さんに受賞の喜びと研究についてお話を聞きました。

海外の研究者の方々に評価していただき大変光栄です。

 

―Student Poster Presentation Awardおめでとうございます。感想をお聞かせください。

 ありがとうございます。まさか賞をいただけるとは思っていなかったので大変驚きました。同時に初めての受賞で素直に嬉しく思います。これも、指導教員である児玉先生や共同研究者の方々の指導あってこそだと思います。ポスター発表は3日目でしたが、1,2日目は国内外の研究者の方々・学生の発表を聞き、お話する機会もありました。国際会議という場で緊張もありましたが、なかなか経験できないことなので、新鮮でとても勉強になりました。M1(大学院博士前期課程1年)としては、大変貴重な経験でした。

 

―研究について詳しく説明いただけますか。

 環境化学工学研究室では、地球温暖化対策の一つとしてイオン液体を利用したCO2の分離・回収技術の研究に取り組んでいます。私はイオン液体の中でも、カチオン中心原子がリンで、耐熱性に優れるホスホニウム系イオン液体に焦点を当て、ガス吸収溶媒への応用を期待し研究を行っています。これまで[P4441][TFSA]: Tributylmethylphosphonium bis(trifluoromethanesulfonyl)amideや[P2225][TFSA]: Triethypentylphosphonium bis(trifluoromethanesulfonyl)amideといったホスホニウム系イオン液体についての研究が行われてきましたが、カチオンのアルキル鎖の一部が酸素やエステルに置換されたホスホニウム系イオン液体のCO2溶解度の報告例は今までありませんでした。一方、ポリマー中にエーテル鎖を導入することでCO2との親和性が増加するという報告があり、イオン液体についても、カチオンにエーテル鎖を導入することでCO2との親和性すなわちCO2溶解度が増加するのではないかと考え、エーテル鎖を有するホスホニウム系イオン液体について研究を行いました。本研究では、2種類のホスホニウム系イオン液体[P222(1O1)][TFSA]: Triethyl(methoxymethyl)phosphonium bis(trifloromethanesulfonyl)amideおよび[P222(2O1)][TFSA]: Triethyl(2-methoxyethyl)phosphonium bis(trifluoromethane)sulfonylamideを合成後、密度・粘度・CO2溶解度を測定し、エーテル鎖の導入されていない構造が類似した[P2225][TFSA]と比較することでエーテル鎖の効果を検証しました。吸収液に溶解しているガスの比を表すモル分率基準で見たCO溶解度は3種類のイオン液体ともほぼ同じでしたが、吸収液の単位体積あたりのガス吸収量を表す体積濃度基準で見たCO溶解度は、[P222(1O1)][TFSA]および[P222(2O1)][TFSA]の方が[P2225][TFSA]よりも高い結果となりました。このことから、カチオンにエーテル鎖を導入することによって、CO2溶解度はわずかに増加し、体積濃度基準で見るとその増加率は大きくなることが分かりました。

 

―どのような点が評価されたと思われますか。

 イオン液体のCO2溶解度を測定している研究者が少ないので、そこにチャレンジした点や実験の精度に留意していた点が評価されたのだと思います。審査員は外国の先生方でしたので研究内容を上手く伝えられるか心配でしたが、ディスカッションする中で今後の研究に活かせるヒントをいただけただけでなく、研究に関して評価していただけたのは大変光栄で嬉しかったです。それに恥じないように、これからもっと研究に尽力し、成果を出していかなければと思っています。

実社会に役立つ研究に挑戦できるから、やりがいがあります。

 

―なぜ大学院に進学されたのですか。

 3年生の2月に、研究室行事で化学メーカーや火力発電所などを見学する機会がありました。会社で化学工学がどのように役立っているのかを実感し、また、エンジニアの皆さんと交流する中で化学工学を専攻した大学院生が求められていることを改めて知りました。さらに、現在エンジニアリング会社で働かれている研究室の先輩のお話を聞く機会もあり、自分もそんな先輩のように活躍したいと刺激を受けたことが大学院へ進学しようと思った大きなきっかけです。大学院に進学しましたが、教科書だけでなく様々な論文や専門書を読むことで、学部の時と比べてより専門的な知識が身についているなと感じます。また、企業との共同研究や客員教授の先生方とのディスカッションを通して、勉強しなければいけないこと、求められていることが何かを今まで以上に考えるようになったと思います。さらに、企業で化学プラントの設計や操作などのために利用されているプロセスシュミレータの講習会もあり、化学工学の知識を活かして会社で働くことをイメージすることもできています。結果が求められる厳しい環境に身を置く大変さもありますが、その分、充実感や達成感を味わえるのは大学院ならではの醍醐味かなと感じます。誰も知らない、わからないことを研究していく中で、思った通りの結果が出れば嬉しいし、思い通りにならなかったとしても、その原因を探るのは凄く楽しいです。そういうところが化学の魅力でもあります。特に、私が研究している化学工学の分野は産業との関わりが深く、実社会に役立つ可能性のある研究に挑戦できるので、とてもやりがいがあり刺激になっています。

 

―今後の目標についてお聞かせください。

 実験もまだまだこれからなので、研究を推進して、その成果を学会で発表しながら、自分たちが行った研究を論文として発信していくのが目標の一つです。そして、大学院で学んだことを活かし、プラントエンジニアとして活躍することが将来の目標です。

 

―ありがとうございました。今後の益々活躍されることを期待しています。

 

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