次世代環境調和型イオン液体によるCO吸収の研究が
高く評価され銀賞に輝く

2016化学工学会福島大会銀賞image001 平成28年11月25, 26日に、コラッセふくしまで開催された公益社団法人化学工学会福島大会2016(3支部合同大会)おいて、生命応用化学専攻博士前期課程2年の廣田光さんが、銀賞を受賞しました。今回、北海道・東北・関東地区の博士後期課程学生も含む77件の学生賞対象講演の中から、金賞1件、銀賞2件、銅賞5件、特別賞13件、奨励賞18件が表彰され、廣田さんはベスト3に入賞を果たしました。廣田さんの講演題目は、「四級ホスホニウム系イオン液体のCO2吸収特性」で、日本化学工業(株)及び(国研)産業技術総合研究所(産総研)の金久保光央研究グループ長(日本大学客員教授)らとの共同研究です。イオン液体は、揮発しにくく、難燃性があり、CO2をはじめとする酸性ガスを選択的に吸収する性質を有しており、近年、注目されています。本研究では、イオン液体の中でも、特に耐熱性に富む四級ホスホニウム系イオン液体のCO2吸収特性について検証し、ガス吸収メカニズムを明らかにしました。
 廣田さんに受賞の喜びの声とともに、研究について詳しくお話を聞きました。

 

―銀賞受賞おめでとうございます。感想をお聞かせください。

2016化学工学会福島大会銀賞image003 このような素晴らしい賞をいただけるとは思ってもいませんでしたから、大変光栄です。賞の発表は、学生受賞者が招かれた懇親会で行われました。特別賞、銅賞、銀賞の順に発表され、表彰される形式だったため、名前を呼ばれるまで、ドキドキしながら待っていました。旧帝大等の有力大学の学生が特別賞・銅賞を受賞していく中、銀賞に選ばれた時には大変驚きました。壇上に上がる際には、緊張して足がガクガク震えたくらいです。銀賞を受賞できたということは、研究内容、発表・質疑を総合して評価いただけた証だと思っています。前日まで、指導教員の児玉大輔先生や研究室の先輩・渡邊正輝さん(博士後期課程1年)、共同研究先の皆様に、厳しくご指導いただいたおかげであり、とても感謝しています。

 

―発表された研究について詳しく説明いただけますか。

2016化学工学会福島大会銀賞image006 現在、地球温暖化が深刻化する中、火力発電所や製鉄所、石油プラントなどの大規模固定発生源から排出されるCOを回収するために、ガス吸収液の研究が進められています。レクチゾールやセレクソール吸収液を使った物理吸収法による回収方法は、一部の商用プラントで稼働していますが、吸収液を冷却するために莫大なエネルギーが掛かってしまいます。そこで、私たちが着目したのが、四級ホスホニウム系イオン液体です。イオン液体による物理吸収法は、圧力操作のみでCO2を分離・回収できる特長があります。中でも四級ホスホニウム系イオン液体は、従来のイオン液体よりも耐熱性が高く、従来の物理吸収液より冷却する必要がありません。結果として、吸収液再生時のコスト削減につながるだけでなく、高2016化学工学会福島大会銀賞 image007温でCO2が排出される大規模固定発生源向けの吸収液として利用できる可能性があります。本研究では、四級ホスホニウムイオン液体のガス吸収液としての有効性を検証するために、カチオンのアルキル側鎖とアニオンのパーフルオロアルキル鎖長の違いが、密度やCO2溶解度にどのような影響を及ぼすのか?について検討しました。
 実験では、少量の試料で測定が可能な磁気浮遊天秤を用いてCO2溶解度を測定しました。高圧下での磁気浮遊天秤によるガス溶解度測定では、浮力が発生します。今回、CO2を吸収したイオン液体の体積膨張率をSanchez-Lacombe式を用いて計算し、浮力を補正するなど実験データの精度向上に努めました。四級ホスホニウムイオン液体のCO溶解度は、カチオンのアルキル側鎖、アニオンのパーフルオロアルキル鎖の伸長に伴い増加しました。一方、CO2溶解度の序列を考察するため、量子力学計算よりイオン液体の自由体積、Sanchez-Lacombe式より体積膨張率を算出しましたが、溶解度の序列を再現するには至りませんでした。このことから、イオン液体のCO2溶解度には、自由体積や体積膨張率だけでなく、カチオン-アニオン間の静電的相互作用など、様々な因子が関与しているものと考えられます。
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―どのような点が評価されたと思われますか。

 まず、審査員の方々に、この研究に興味を持っていただけたことが高い評価に繋がったのだと思います。大規模固定発生源から排出されるCO2を分離・回収するためのガス吸収法に関する研究は注目度が高く、成果に対する期待も大きいようです。また、この大会は、通常の口頭発表と異なり、発表時間が8分、質疑応答時間が7分と、持ち時間の半分近くが質疑応答に充てられており、他大学の先生や企業の研究者の方から多くの質問・コメント等をいただくことができました。質疑応答の場面では、どういう研究なのかを簡潔明瞭に説明するのはもちろんのこと、相手の質問の意図をしっかりと理解した上で、わかりやすく回答することが求められます。前日まで、先生や先輩にご指導いただき、万全に対策を講じたので、完成度の高い発表ができたと思います。いい緊張感の中で発表しながら、だんだん楽しくなってくるのを感じました。他大学の先生から「一番良い発表だったよ」と、直接声を掛けていただいたのは、本当に嬉しかったですね。

―どんなところが研究の魅力ですか。

2016化学工学会福島大会銀賞image011 他の人が今までやってきたことを検証するのではなく、新しいことに挑戦し、その結果を自分の知識と見解で評価するところに、研究の面白さを感じています。自分で導き出した研究成果を学会で発表し、第三者の方から評価されると、粘り強く頑張ってきて良かったと思いますし、自信にもなり、研究への意欲も増します。

 

―今後の目標や夢についてお聞かせください。

4月からは、「バイオから宇宙まで」をキャッチコピーに幅広い分野に取り組んでいる化学メーカーに就職し、生産管理の仕事に就くことになりました。まだどの事業に配属されるかは決まっていませんが、世の中をよりよくするためのものづくりに携われたらと思っています。また、様々な角度から社会を支えられるエンジニアになることが、今後の目標です。

 

―最後に後輩たちのメッセージをお願いします。

 研究は、予測したとおりには進まないものです。失敗したからといって諦めず、原因は何かをとことん考え抜いて挑戦し続ければ、必ず道は拓けます。諦めることなく頑張れば成果も出て、学会等でも評価していただけると思います。考え抜くプロセスの中で得られた知識は、研究活動を送っていく上での下地になるはずです。日々の積み重ねが、学会での質問に対して的確に対処できるかに繋がってくると思います。

 

―ありがとうございました。今後益々、活躍されることを祈念いたします。

 

なお、本研究の成果は、科学研究費助成事業・基盤研究(B)によるものです。

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