日本セラミックス協会秋季シンポジウム特定セッションで優秀発表賞を受賞

 平成23年9月9日に行われた日本セラミックス協会第24回秋季シンポジウム特定セッション「水溶液反応場に基づいたセラミックプロセス」において、物質化学工学専攻2年の橋本憲一さんが優秀発表賞を受賞しました。 

 全国規模である日本セラミックス協会の特定セッションにおける発表53件から選出された5件の一つに、橋本さんの研究発表も選ばれました。橋本さんが所属する機能性材料研究室では、毎年優秀発表賞を受賞しており、今年で4年連続の快挙となりました。今回受賞した研究について、橋本さんの受賞の喜びの声とともにお届けします。

4年連続優秀発表賞受賞につながったことが一番の喜び

 

―おめでとうございます。受賞した感想をお聞かせください。

 正直驚きました。でも、今まで先輩方が3年連続で受賞されてきたので、その伝統が守れたことが一番嬉しかったです。今回のセッションの中でも、薄膜(非常に薄い膜)というテーマは数少なく、理解してもらえるか不安もありましたが、時間切れになるまで質問が出るくらい、研究内容についての理解と賛同が得られたことが、評価につながったのだと思います。

 

―どのような研究について発表されたのですか。

 「ナノファイバー状アルミナゾルの長さによるアルミナ薄膜の硬度変化」というテーマの研究です。共同研究を進める独立行政法人産業技術総合研究所で作製したアルミナゾルは、ファイバーの長さを1,000nm(ナノメーター)から3,000nmまで制御できる特徴があります。その繊維状のゾルを用いて作製したアルミナ薄膜の物性を評価しました。これは、傷がつきにくく汎用性の高い薄膜を創る技術開発につなげていく研究です。

 

 

―研究内容について詳しくお話いただけますか。

 ナノファイバーゾルを、スピンナー法(基板を高速で回転させ塗布する方法)を使って、均一な薄膜を作ります。その基板を100℃、300℃、600℃および900℃で焼成して、できあがったものがアルミナ薄膜です。どのくらいの硬度があるのかを、鉛筆引掻塗膜硬さ試験機を使って調べました。ファイバー長1,400nmのゾルを用いて、600℃または900℃で焼成したアルミナ薄膜の硬度は9H以上で最も高く、次いで1,000nmのものという結果になりました。2,000nmや3,000nmのゾルを用いた場合は、思ったより硬度が低かったのです。
 「なぜだろう?」という疑問が湧いてきました。そこで、表面のファイバーがどう並んでいるのか、電界走査型電子顕微鏡(FE-SEM)で観察してみたのです。すると1,400nmのゾルを用いた場合は、ナノファイバーが一定方向にきれいに並んでいました。外部からの衝撃に強い性質であることがわかります。それに対して、2,000nmや3,000nmのゾルでは空隙があり、このすき間が原因で表面に傷がつきやすいのだと考えられます。長さの違いでこのような大きな変化が現れたのは興味深いです。
 ナノファイバーの間に含まれる有機物が低温で燃焼することにより硬化するのではと考え、昇温脱離ガス分析装置(TPD)を使って有機物の脱離温度を調べました。1,000nmのゾルから作製した膜には、有機物が最も多く含まれていましたが、低温で燃焼したので、高硬度になったと考えられます。

 

―この研究の魅力はどんなところですか。

 ガラス基板に膜を作るだけで、さまざまな機能に発現させられるのが凄いと思います。自分の予想していたものと違うデータが出た時は、「なぜ?」と悩むこともあります。でも、そこからまたいろいろ実験したり解析したりしながら、より深く追究していくプロセスが研究の面白さ、魅力でもあります。
 今後は、膜を表面処理して、水をはじく撥水性と水が濡れ広がる親水性の両方の機能を、一つの膜上に発現させることが目標です。そうすると、いままで考えていなかった機能が生まれると思っています。
 もともと化学が好きでしたが、今までにない別の機能を持った物質を作る研究ということに魅力を感じています。

 

―後輩にメッセージをお願いします。

 今回、賞をいただけたのも1年近く努力を重ねてきたからだと思っています。研究だけでなく何事においても、努力を怠らず、いつも100%の力で挑戦することが大事です。失敗しても腐ることなく、前を向いて進んでいく―その先にはきっと、感動や喜びがあると思うので、皆さんも頑張ってください。

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