学生の活躍

建築学科4年の和久井亘さんが『第5回甍賞 学生アイディアコンペティション』で佳作を受賞しました

建物のファサードに変化を与える面白さを重視した
瓦ブラインドの提案が評価される

この度、全国陶器瓦工業組合連合会、一般社団法人全日本瓦工事業連盟が主催する『第5回甍賞 学生アイディアコンペティション』において、建築学科4年の和久井亘さん(建築計画研究室/指導教員:浦部智義教授)の作品『KAWARA BLIND』が佳作を受賞しました。この賞は、「粘土瓦」を使用した建築物や構造物の優れた実施例を表彰するとともに、次世代の建築を担う学生を対象に、これまでの「瓦」にとらわれない新しい「瓦」の使い方に関するアイディアを募集するものです。「新しい瓦が生み出す未来の日本」をテーマに、大学院、大学、高等専門学校、各種専門学校に在籍する学生たちがアイディアを競いました。大学院生が多くの賞を受賞する中、学部生の和久井さんが受賞するのは大変稀有なことです。
和久井さんに作品や受賞の感想についてお話を聞きました。

―甍賞受賞おめでとうございます。感想をお聞かせください。

初めてコンペに応募しましたが、入賞できて大変嬉しいです。コロナウイルスの影響で外出ができなかった時期に、コンペなら自宅に居ながら一人でも取り組めるので、この機会に挑戦してみようと考えました。いろいろなコンペをチェックしていた中で、面白そうだと思ったのが「甍賞」でした。瓦は木材と同様に長い間使われてきたものです。それに対して何かよいアイディアを考えられたらと思い応募しました。コンペはプレゼン力が問われるため、大学院生が有利と言われている中で、学部生の私が受賞できたことは今後の励みになります。他の人にも受け入れられる建築が評価に結びつくものだとすれば、いろいろなコンペで評価される作品を作り続けることで、建築の意義を理解できるのではと考えています。今回の賞だけで終わらないように、これからも挑戦していきたいと思います。

―作品について詳しく説明いただけますか。

瓦と言えば屋根に使われ、雨や風から内部空間を守り、時に、その造形から風土に合った美しい街並みをつくっています。一方で、劣化しにくいこともあり、他の屋根に使われる材料と比べて歴史を感じられることも瓦の魅力だと感じていました。建物の長寿命化を考えた時、耐久性の高い瓦は環境にも配慮した建築材料と捉えることもできると思います。そこで私は、この瓦の耐久性・機能性・美観性に着目し、瓦を用いたブラインドを提案しました。屋根は透明の波型スレート葺きとし、抑えるボルトに回転軸となる管を取り付けます。一体となる形で瓦を葺くことでブラインドを構成します。歯車のようにワイヤーを巻いて回転する手動のウィンチでブラインドの開閉を行います。手動にしたのは、瓦の角度によって、内部に入り込む日射量を調整すると同時に、その角度の変化が建物のファサードに変化を与える面白さを重視したからです。人の手による角度の違いは、建物の表情の変化につながります。また、時には店の開店や閉店の合図になったり、瓦を通した柔らかな光が道を照らす夜には、人々を誘い込む看板にもなります。環境によって様々に変化することが、この『KAWARA BLIND』の大きな特徴になっています。

―どのような点が評価されたと思われますか。

瓦の可能性を広げるアイディアの一つとして、面白いと思っていただけたのではないでしょうか。私の作品よりも技術やデザイン性に優れたものはたくさんあったと思います。だから、自分としては作品に込めた思いが魅力的に伝わったのではないかと思っています。どうプレゼンテーションしたらよいか、そこが一番苦労した点でしたので、他の方にも共感いただけたとしたら、大変嬉しいですね。

瓦のように長く使える材料を取り入れた建築を提案していきたい

―建築を学んでみて、どんなところに魅力を感じますか。

建築学科を選んだ理由は、理工系でありながら文系的要素も兼ね備えていることです。構造や材料などの工学分野の学びに加え、文化や芸術、歴史まで学べることが面白くて魅力を感じます。子どもの頃からいろいろな街に行って、城や寺などの文化財・文化遺産を観るのが好きでした。それが建築に興味を持つきっかけにもなっています。サークルは卓球部なので、大会で全国各地に行くことがありますが、試合よりも有名な建築家が建てた体育館のデザインや構造に関心が向いてしまいますね。
いずれにしても、建築は社会や人々の暮らしについて常に考える分野だと思いますので、結果的に建築を通して、より社会全般について学び意識できる様になったこと、また、今回のコンペ作品もそうですが、自分なりに勉強や研究を重ねた上で、考えたアイディアを表現し意見交換できる機会もあることが大きな魅力だと思います。

―将来の目標についてお聞かせください。

規模としては大きくても小さくてもよいので、魅力的な建築をつくりたいと思っています。よりよい建築をつくるためには、つくるに丁寧に計画・設計し築いていくことが大事だと思っており、それが後世に残る建築の条件の1つかな、と何となく考えています。将来は環境問題を意識しながら、瓦のように長く使える材料を取り入れた建築の提案もできればと考えています。

―ありがとうございました。今後益々活躍されることを期待しています。

甍賞の結果はこちら