説得力のある復興へ計画と独特の表現手法に高い評価
平成24年10月19日(金)、せんだいメディアテークにて、第16回JIA東北建築学生賞公開審査が行われ、建築学科4年 中井奨太さんの作品「水と暮らす つかずはなれず」が見事奨励賞(東北専門新聞連盟賞)を受賞しました。
公開審査に選ばれたのは34作品。それぞれの講評を審査員が分担で実施し、第一次審査および第二次審査を行った結果、10作品が第三次審査のプレゼンテーションに臨みました。その10作品に残った中井さんは、プレゼンテーションで作品のコンセプトや表現手法などについて説明しました。
「水と暮らす つかずはなれず」は、福島県で津波の被害が比較的大きかった相馬市の港町を取り上げ、これから福島に必要な生き方や社会の在り方について提案したものです。中井さんは、高台の開発と低地利用をセットで考え、「淡水による養殖」や「水耕栽培」によって生業を成立させ、海の浄化が進んだ後に震災前の港町としての機能(漁業)を復活させるというシナリオを考えました。
審査員からは、仏教美術のような表現手法が建築の分野でもあるのかという質問も飛び出しました。それに対し中井さんは「復興に元気や明るさはもちろん必要でしょうが、一見地味な表現で、時間と付き合う粘り強さや日常を見据える地道さがないと真の復興に結び付かないという意識を伝えたかった」との思いをプレゼンしました。
また、復興関係のグランドデザインを取り上げたプランでこれだけ説得力あるものはなかなかないという意見も出されました。 課題担当でご指導頂いた先生はもとより、作品表現のエスキスもして頂いた研究室の先生などのアドバイスもあり、図面だけではわからない意図やしっかりと組まれた復興への道筋についての的を射たプレゼンテーションが評価され、奨励賞につながったものと思われます。
中井さんは「震災で家を失っただけでなく、職を失った人もいる。何もなくなった場所に建築物だけ建てても意味がないと思います。また、津波への意識が薄れていく中で、改めて対策を認識することも大切だと考えました。審査員の方々には、津波の跡の街の新しい在り方と捉えていただけて嬉しかったです」と喜びをかみしめていました。
★水と暮らす つかずはなれず(PDF)
自分のやりたいことを叶えられる、やりがいを感じられるのが建築の魅力と語る中井さん。将来は設計事務所を立ち上げ、店舗設計などオリジナルブランドを確立するのが夢―。
夢の実現に向けてますます技術を磨いてください。