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「インフラに依存しない自立型トイレ洗浄水循環システム(e6s(エシックス)システム)」設置セレモニーが開催されました

断水や停電でも使えるトイレを開発
災害時の避難所の課題解決に大きく貢献

 この度、土木工学科環境生態工学研究室の中野和典教授が開発した災害時対応トイレ洗浄水循環システム『e6s(エシックス)システム』が郡山市のビッグパレットふくしま(指定避難所)に導入され、12月2日(月)に設置セレモニーが行われました。このトイレは、中野教授がロハス工学を駆使して研究開発を続けてきた『ロハスのトイレ』をベースに、災害時に断水や停電等のインフラが寸断した場合でも洗浄水を循環処理して水洗トイレを継続して使用できるシステムです。製品化を目指し、中野教授は大手素材メーカーの執行役員を務めていた高波正充氏とベンチャー企業『株式会社e6s』を立ち上げ、令和4年度から福島イノベーション・コースト構想の「Fukushima Tech Create(FTC)」の採択を受け、福島県、福島イノベ機構等のご支援により実証試験と改良を重ね、ついに公共施設への導入初となる第1号機がここビッグパレットふくしまに設置される運びとなりました。

 当日は関係者を代表して、福島県危機管理部長 鈴木竜次氏、公益財団法人福島イノベーション・コースト推進機構専務理事 戸田光昭氏、株式会社e6s代表取締役社長 高波正充氏、日本大学工学部次長 浅里和茂教授がご挨拶し、設置までの経緯や災害時の衛生的なトイレの確保の重要性、関係各位への感謝の言葉が述べました。浅里教授(写真)は、ロハス工学により開発されたトイレが社会実装されたことを大学としても大変喜ばしいと述べるとともに、災害時だけでなく世界中で活躍するトイレになることへの期待を語りました。そして中野教授を加えた5名によるテープカットが行われ、駆け付けた関係者からも歓喜の拍手が送られました。

 その後、システムの仕組み、処理能力、メンテナンス方法などについて、中野教授(写真右)と高波社長(写真左)が説明しました。『e6sシステム』は水洗で流した汚物を不織布に通して固形物と水に分離・処理するシステムで、汚水は活性炭を利用した三層の水処理装置を使ってトイレ洗浄用に再利用する仕組みになっています。平時は通常の上下水道を使用し、災害時に断水等でトイレが使用できなくなった場合に汚水・洗浄水をe6sシステム側へ切り替えます。ロール状になった不織布に汚物が自動で巻かれていき、それをトイレのユーザー自身で回収・処理し、不織布を交換できるため、まさに持続可能なトイレだと中野教授は強調しました。能登半島地震の際には、断水でトイレが使えなくなり、衛生的なトイレの確保が課題となったこともあり、非常時でも快適なトイレをつくりたかったと話す高波社長からは、「このトイレを世界に広げていきたい」とさらなる抱負も語られました。

 セレモニー終了後には、地下ピットに設置した『e6sシステム』の見学が行われました。実際に1階の多目的展示ホールAの障がい者用トイレから水を流して、装置が稼働する様子を見ていただきながら、中野教授が仕組みについて解説しました。



 固液分離装置では固形分のみを分離して不織布が自動で巻き取り回収するため、汲み取り式と比較して汚物量が10分の1以下に減容化されます。三層の水処理装置でろ過された水は塩素の入ったタンクに溜められ、配管を通って再度トイレ洗浄水として利用されます。装置を動かすバッテリーはリチウムイオン電池を使用。充電できていれば停電になっても使い続けられます。今後は太陽光発電につなげることも視野に入れています。

 中野教授は「東日本大震災を経験した我々が開発したことに加え、災害時の避難場所となるビッグパレットに設置されたことに大きな意義がある。これから災害が予測されている地域には、ぜひe6sシステムを標準装備してほしい」と呼びかけました。また、工学部の役割として、研究成果を実用化し社会に役立つところまで取り組む必要があると話しています。環境生態工学研究室の学生も、「自分の研究が社会貢献につながることにやりがいを感じます」と言い、今後の研究活動への意気込みを見せていました。

 災害時およびSDGsの観点からも注目を集めている『e6s』。世界中に普及される日もそう遠くないかもしれない、と大きな期待が寄せられています。

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