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電気電子工学専攻2年の鈴木静華さんが2021年応用物理学会東北支部第76回学術講演会講演奨励賞を受賞しました

データサイエンスと最先端の材料実験を組み合わせた
研究成果が高く評価される

12月2日(木)・3日(金)に開催された2021年応用物理学会東北支部第76回学術講演会にて、電気電子工学専攻博士前期課程2年の鈴木静華さん(薄膜機能材料研究室/指導教員:髙橋竜太准教授)が講演奨励賞を受賞しました。この賞は若手研究者によって発表された優秀な講演に対して贈られるもので、今後の研究奨励への貢献を期待される賞です。鈴木さんが発表した「Eu:Y2O3蛍光体薄膜における濃度消光のデータ予測」は企業と共同で進めている研究で、その成果に期待も高まっています。
26回目を迎えるこの講演奨励賞ですが、本学部から選ばれるのは初めてのことです。また、鈴木さんは一般社団法人電気学会東北支部の優秀学生賞も受賞しており、各方面から高い評価を得ています。
鈴木さんに受賞の喜びと研究について詳しくお話を聞きました。

講演奨励賞おめでとうございます。感想をお聞かせください。

昨年8月に行われた電気電子工学専攻の修士論文中間発表会で最優秀発表賞をいただきましたが、学外で行った口頭発表で賞をいただくのは初めてのことでした。大変嬉しく思うとともに、ご指導いただいた髙橋先生や研究員の太宰卓朗さん、そして共著者でもあり共同研究を進めている企業の方々に深く感謝しております。

なぜ、薄膜機能材料研究室に入ったのですか。

私は以前から、統計学、数学、計算機科学などを駆使してデータ分析を行う、データサイエンスに興味を持っていました。高校時代、陸上の選手だったのですが、自分の体のコンディションをデータ化することによって記録がどんどん伸びたという経験があり、それをきっかけに興味を持つようになりました。薄膜機能材料研究室は、そのデータサイエンスと材料実験を組み合わせた研究ができるところに魅力を感じて選びました。

受賞した研究の内容について、詳しく説明いただけますか。

この研究は、効率よく短時間で蛍光材料開発を進めるためのプロセス開発を目的としています。蛍光体は光の波長を変換する材料で、電気製品やレーザー、通信技術などの幅広い分野で利用されています。紫外線を当てると赤く光ったり、青く光ったりと、元素の種類や量の組み合わせによって様々な特性を発現します。その組み合わせが無数にあるように、可能性も無限に広がっています。中でも、希土類元素(レアアース)を用いた蛍光体を薄膜材料に利用した場合、材料の組成だけでなく、実験プロセスの条件によって特性が大きく変化します。そのため、通常は膨大な実験量が必要とされます。そこで本研究では、コンビナトリアルパルスレーザー堆積(PLD)手法による薄膜手法と、統計学の計算手法であるベイズ最適化と呼ばれるインフォマティクス手法を併用することで、10分の1の実験量でパラメータの最適値を導き出しました。例えるなら、美味しいタコ焼きを作るために、タコや小麦粉、青のりなどの材料の量や調理温度などを調整することによって、どのパターンが一番美味しくなるか実験しているイメージです。ただし、100個のタコ焼きを作って検証しなくても、ベイズ統計を使ってデータ予測ができることで、10個だけ作れば一番美味しいタコ焼きの味を導き出せるというのが、データサイエンスを用いる大きな特長と言えます。まず、ターゲットとなる材料として、母体材料Y2O3にEu、Tb、Ybをドープ(添加)した蛍光体に注目しました。この材料はそれぞれ赤、緑、赤外光を発する希土類蛍光体で、ドープ量に伴って発光強度が変化する濃度消光を示す特性があります。さらに、実験方法によって発光強度の増強も期待できます。本発表では、Eu:Y2O3薄膜の合成と評価、そのインフォマティクス研究の成果を中心に報告し、コンビナトリアル手法とベイズ最適化を組み合わせた手法が、蛍光体の材料開発に有効であることを明らかにしました。

どのような点が評価されたと思われますか。

より少ない測定で目的の組成にたどり着くことができたという研究の成果が評価されたと思います。オンラインでの発表でしたが、ベイズ最適化に興味を持ってくださる方が多く、いろいろ質問もいただきました。それから、予測した過程を動画で見せるなど、他分野の研究者の方にも理解していただけるように、一つひとつ工夫して分かりやすく発表したことも評価された点だと思います。

今後の目標についてお聞かせください。

修士論文でも今後の展開として発表しましたが、コンビナトリアル手法とベイズ最適化を組み合わせた手法は、Eu:Y2O3に限らず、様々な蛍光材料にも応用できるプロセスです。より複雑な3成分以上の組成の中から優れた蛍光体を探索する実験を行うとともに、堆積レート、基板温度などのプロセスパラメーターの最適化にも応用したいと考えています。4月からは博士後期課程に進んで、さらに3年間研究に従事します。自分の研究の強みでもあるデータサイエンスを駆使して、新たな材料開発プロセスの構築を図っていきたいと考えています。まだまだ学ばなければならないことがたくさんありますが、研究成果を挙げられるよう頑張ります。

ありがとうございました。今後益々活躍されることを期待しています。

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