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情報工学専攻2年の國分悠斗さんが電子情報通信学会の『ComEX Top Downloaded Letter Award』を受賞しました

次世代型ドローン宅配サービスの実現を目指す研究が
最も注目を集めた論文として高く評価される

この度、博士前期課程情報工学専攻2年の國分悠斗さん(制御ソフトウェア研究室/指導教員:上田清志教授)が、電子情報通信学会(IEICE)の英文論文誌『Communication Express (ComEX)』において、月間ダウンロードが最も多かった論文に贈られる『ComEX Top Downloaded Letter Award』を受賞しました。ComEXは査読付きの論文誌で、筆頭著者である國分さんが投稿した『Reactive route construction for UAV delivery considering travel time and safety using wireless multi-hop network』は査読の結果、論文として採択され(採択率47%)、4月からオンライン公開されました。電子情報通信学会オンライン論文誌 IEICE Communications Expressの全論文の中で7月に最も多くダウンロードされた論文だったことから、IEICE Communications Expressより『ComEX Top Downloaded Letter Award』が贈呈されました。
國分さんの喜びの声と受賞した論文の内容についてお話を聞きました。

この度は受賞おめでとうございます。感想をお聞かせください。

夏休み中に突然知らせがきたので、最初は「何が起こったのか!?」という驚きの方が大きかったです。このような賞があることも知らず、降って湧いたサプライズのようでしたが、多くの方がこの研究に関心を持ってくれたのだとしたら、大変嬉しく思います。査読付きの論文掲載自体が初めてのことでしたから、それだけでも自信になりました。研究が評価されたから受賞につながったと言えるように、これからも研究に励んでいきたいと思います。

受賞した論文の内容について詳しく説明いただけますか。

無線マルチネットワークによる経路ナビゲーション

近年、世界的にドローンなどの小型無人移動機の自動運転技術が注目されていますが、物流や宅配の分野では、まだ人が遠隔操作しなければ利用できない状況で、人件費の削減や宅配の効率化に向けて自動運転技術の向上が期待されています。小型無人移動機を利用する場合、空には道がないので、カーナビのように衛星を使って経路を指示することができません。そこで、家と家を無線デバイスで結んで経路となるネットワークを構築する方法を考えました。現在は、遠隔で電気使用量を計測するスマートメーターが各家屋に設置され無線マルチホップ通信しており、全家屋に無線デバイスを設置しマルチホップでつなぐことが可能ではないかと考えています。このように、各家屋に無線デバイスが設置され、無線マルチホップ通信を利用することで経路が構築できるのではないかと考えました。都度ネットワークを構築するAODV(Ad hoc On-Demand Distance Vector)などのリアクティブ型、そして常にネットワークが繋がっている状態のOLSR(Op-timized Link State Routing Protocol)などのプロアクティブ型の発着端末間経路構築プロトコルを応用しました。研究室の先輩方が行った先行研究では、ドローンの飛行に関して、国土交通省の許可の必要のない飛行可能な場所に限定し、なるべく遠回りせず最短距離で飛行できる方法を提案しました。それを踏まえて問題点等をあぶり出し、本研究では宅配サービスとしてのSLA(Service Level Agreement)を重視し、距離ではなく時間で評価するとともに、ドローン同士の衝突を回避する安全性を考慮した経路構築方式を提案しました。同じノード(同家屋上空)を利用しない経路を構築する方式と同じリンクを使用しない経路を構築する方式について、それぞれの提案方式と従来の方式をコンピュータシミュレーションにて評価し、有効性を検証しました。各方式ともドローンの台数を増やしていき、経路が無くなったら失敗とみなします。結果、ドローンの台数が少ない時はノードロックが有効的であり、ドローンの数が増えた時はリンクロックを使った方が有効的だということがわかりました。どのようなサービスに使用するかによって方法を変えることで、サービスの向上につながるものと考えられます。

シミュレーションのトポロジ

経路構築が失敗する確率

どのような点が注目されたと思われますか。

まずは、研究内容がイメージしやすいことから着目されたのだと思います。その中で2つのデータを検証し、異なる観点で評価しているところが良かったのではないでしょうか。もしくは、論文の構成が良かったのかもしれません。どういう論文の書き方がよいのか、参考にするためにダウンロードされた可能性もあります。これまで、学会での口頭発表の経験はありますが、査読付きの論文を投稿するのは初めてだったので、上田先生にはいろいろご指導いただきました。そのおかげで論文誌に掲載され、このような賞までいただけたと思っています。上田先生には大変感謝しています。

今後の目標をお聞かせください。

宅配サービスといっても郵便物などの比較的軽いものだけでなく、飲食関連のデリバリーや企業間でやりとりを行うサービスも考えられます。各サービスによって制限された時間内に対象物を目的地に届けることが重要な要件となります。要件に準じた異なる経路を複数候補選択できるようにして、サービスの多様化とレベルの向上を目指していきたいと考えています。今はシミュレーションで行っていますが、実際にドローンを飛行させる際は、天候も考えなくてはならないし、ドローンによって飛行距離や積載重量も違うので、実機で行わなければ分からない問題も出てくると思います。適切なプロトコルを確立するためには、まだまだやるべきことがたくさんあります。それだけ、いろいろ試すことができるわけで、それがこの研究の面白いところとも言えます。目指すところが明確で、自分にとっても生活に関わる身近な問題点だから、なんとか解決したいというモチベーションにもつながっています。

最後に後輩にメッセージをお願いします。

私自身、もともとパソコンは苦手な方でしたが、将来、どういう技術を身につけたらよいかを考えた時に、これからの時代はパソコンの技術を身につける必要があると思い情報工学科を選びました。最初のプログラミング入門での躓きはありましたが、日々パソコンに触れて慣れることで克服できました。それ以降は、単位を落とすことなく苦手意識もなくなり、研究も面白かったので大学院まで進みました。納得いく成果が得られなかったというのも理由の一つではありますが、一緒に大学院に進んだ友人の存在も大きかったですね。互いに切磋琢磨しながら、ここまで頑張ってこれました。今後は、自分の関連する研究を後輩に引き継ぐので、これまでやってきたことをしっかり伝授したいと思います。後輩のみなさんで更に研究を発展させていけるように頑張ってください。

ありがとうございました。今後益々活躍されることを期待しています。