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建築学専攻の川崎浩長さんが令和3年度日本コンクリート工学会東北支部奨励賞を受賞しました

コンクリートのひび割れ自己治癒技術の進展・普及に
貢献する研究として高く評価される

この度、建築学専攻博士後期課程1年の川崎浩長さん(鉄筋コンクリート(RC)構造・材料研究室/指導教員:サンジェイ・パリーク教授)が、令和3年度日本コンクリート工学会東北支部奨励賞を受賞しました。この賞は、公益社団法人日本コンクリート工学会東北支部の表彰委員会委員7 名から構成した選考委員会にて査読による審査を行い、その審査結果に対し支部役員会が審議し、ふさわしいとされた論文が選定されます。奨励賞には 4 件の応募があり、うち2件が奨励賞に選定されました。川崎さんの論文『微生物を利用した自己治癒コンクリートの最適な調合に関する実験的検討』は、「独創性・萌芽性及び将来性に富む」と認められ、東北支部奨励賞に値するものとして、見事受賞するに至りました。
受賞した川崎さんの喜びの声とともに、研究について詳しくお話を聞きました。

奨励賞おめでとうございます。感想をお聞かせください。

この論文は、昨年6月に発行された『コンクリート工学年次論文集』に掲載されたもので、博士前期課程での研究成果の一部分をまとめたものです。筆頭著者として初めて投稿した査読付きの論文でしたので、それで受賞できたことを大変嬉しく思います。有識者の審査を経て採択されなければ論文集には掲載されません。更に推薦をいただいて奨励賞に応募した4件のうち2件のみが選ばれたということで、大変光栄なことだと思っています。
5月18日(水)にホテルメトロポリタン仙台で行われた東北支部の令和4年度通常総会の際に表彰式と受賞講演がありました。近年はコロナ禍の影響もあり、学会発表もオンライン参加だったため、きらびやかな会場のステージに登壇して学会員の方々の前で発表するのは今回が初めてでした。恐れ多い雰囲気の中で緊張しながら発表しましたが、メモを取りながら聞いてくださる方もいらしたので、丁寧に伝えることを心掛けました。論文賞を受賞した他大学の先生の講演も聴くことができ、発表の仕方やスライドの作り方など大変勉強になりました。いつか自分もこういう研究者になりたい、論文賞もとりたいという新たな目標もできました。とても貴重な経験ができたと思います。

研究内容について説明いただけますか?

コンクリート構造物の耐久性の向上や長寿命化を実現するためには、ひび割れへの対策が欠かせません。特にRC構造物のひび割れは微小なものであっても構造物の万病の元となり得ます。昨今、コンクリートのひび割れ補修方法に関する様々な研究が行われている中で、私たちの研究室では微生物の働きによってひび割れを閉塞する仕組みを確立し、実構造物に適用する自己治癒コンクリートの開発を目指しています。これまで、微生物を添加することによってひび割れから滴下する水量が減少したこと、微生物の添加量が増加するほどひび割れ閉塞までに必要な養生期間が短くなる傾向があるものの、その差は極めて小さいことを確認していました。本研究では、微生物を利用した自己治癒コンクリートの最適な調合を決定するために、微生物の添加量によるひび割れの閉塞効果の違いを明らかにすることを目的に実験的検討を行いました。本論文は、特定の微生物を添加したモルタルを用いて通水試験を行い、閉塞効果について検討した結果を発表したものです。

本研究に用いた微生物を含む混和材

通水試験に用いる供試体の概要

どんな点が評価されたと思われますか。

通水試験状況

既往の研究での通水試験方法の欠点を克服した新たな試験方法により、微生物を含む混和材の適切な量を見出した点が評価されました。また、「コンクリートのひび割れ自己治癒技術」の進展や普及に資するものであり、メンテナンスの省人化やメンテナンスフリーコンクリートを実現する足掛かりになる成果として、将来性も期待できるとの講評もいただいています。総合的に独創性・萌芽性・将来性に富む研究と認められたことが、奨励賞に繋がっていると思います。

今後の抱負をお聞かせください。

査読をクリアしたことは研究者としての第一歩であり、将来性を評価され賞をいただけたことで、更に大きな一歩を踏み出せたと思います。この進歩は重要な成果であり、今後研究を進めていく上でも大きな自信になりました。同時に、研究者としてひとつひとつ実績を積み上げていかなければならないことを実感しています。そして今、新たな研究にも取り組んでいます。微生物を用いた自己治癒コンクリートという大きなテーマは変わりませんが、微生物と環境条件の関係について検討を行っています。ロハス工学センターの『自己治癒・自己修復材料開発プロジェクト』にも関わる研究で、メンバーである生命応用化学科の春木満教授の研究室で、微生物の活動を分析する実験を進めています。
加えて、それぞれテーマの違う研究をしている後輩への指導も行っています。後輩へのアドバイスを通じて、新たな知識を身につけたり、新たな研究課題の発見につなげていくなど、幅広い研究活動の中で研究者としての資質を磨いていきたいと思います。
これまでは、強い構造物をつくるといった性能を追究していた建築業界でしたが、近年、環境負荷低減に向けた材料の開発を重視するようになってきました。私もこの研究を発展させつつ、更なる調査研究を通じて、SDGsの達成に向けたロハスな建築材料の開発を目指します。

ありがとうございました。今後益々、活躍されることを期待しています。

 
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