創造とデザインを軸に幅広い分野を研究

教授 湯本長伯

 本年度より工学部建築学科教室に加わりました湯本長伯です。1997年から2003年まで 大学院の非常勤講師として,現東京大学総合研究博物館教授の松本文夫さんと授業を担 当していました。若井教授に呼んで戴いてやって来て,当時一番驚いたのは院生のみん ながもの凄く純真で,何か間違ったことを教えると,そのまま信じ込んでしまいそうで, 当時教えていた慶応義塾大学SFCの院生と比べ,より真剣により真摯により優しく授 業を楽しまないと…と,2人で話していました。  3月まで居た九州大学では,九大全体のアート&デザインを研究センターとして統括 する立場で,それを「産学連携・知的財産」活動を通じて行うという位置づけでした。 つまりそれまでの建築都市インテリアの研究と実践に比べ,随分広いことをやっていた 訳です。しかしやっているうちに,全てが繋がっていて相互に作用していることに気づ き,随分と仕事の幅が広がりました。産学連携とは,異種異質なものの連携融合によっ て,新しい知を生産することです。そしてその知を生かして,イノベーションと言われ る新しい変化=革新を起こし事業・産業を発展させ,結果として地域を幸福にすること です。これは今後も続けて行きますが,少しは私のお蔭で九州の地元も,幸福になった かなと思います。  私の専門分野は,建築に限れば建築計画と建築設計で,計画としては「設計情報・設 計方法」,設計としては「教会,美術館・博物館,学校らしくない学校」に,主に取り 組んでいます。設計情報・設計方法については,半世紀近くの研究歴があり,アレグザ ンダーの理論等は私たちのグループが日本に紹介しました。また理論だけでなく,実践 からフィードバックしながら研究を深めているので,多くのプロジェクトを抱えていま す。設計としては,ここ5〜6年なのですが,パートナーの影響も有って,ヨーロッパ 建築の根底を成すキリスト教会の設計とその背景となるさまざまな事実・知識・思考を 調べながら,設計にも取り組んでいます。今こちらは熱海の美術館の改修設計(リノベー ション)を3年ほど手がけており,これはデザイン・コンペティションという形を採っ て進めようと計画しているところです。関わったコンペも多く,「ヤクルト独身寮コン ペ」は起案・計画・実施・審査と,全てに関わりましたし,その時の資料を全て持って います。誰か分析してくれると嬉しいのですが…。現在は,「都城市民会館・保存活用 再生コンペ」を進行中で,その次は「熱海美術館リノベーションコンペ」になりそうで す。こうしたプロジェクトは,計画や歴史,そして実は構造や設備とも深く関係します ので,それぞれの専門の先生方とできるだけコラボレーションをしていきたいと考えて いるところです。  最後に,私はインテリアプランナーやインテリアコーディネーターの制度創出や試験 の実施に関わり(一級建築士もですが),特にインテリアコーディネーター/ICは二 次試験の設計製図の問題を27年間も作っていました。IPもICも受験者が激減してい ますが,インテリアコーディネーターだけは,福岡インテリアコーディネーター協会会 長・九州インテリアコーディネーター協会協議会会長,そして日本インテリアコーディ ネーター協会協議会会長として,これからも発展に尽力して行きたいと考えています。 インテリアの勉強をしたい人、資格に挑戦したい人を歓迎します。  湯本研究室の名称は,「建築文化・社会構造設計 研究室」と言います。つまり幅は 思い切り広いので,どのような研究テーマでも,どのような就職相談でも,気軽に相談 して下さい。9号館311号室で,模型に囲まれて座っていますので,是非のぞきに来て 下さい。