工学部の強みを活かそう
教授 千葉正裕
■就職に強い工学部
リーマン・ショック以降の景気後退により,大学新卒者の就職環境は依然として厳しい
状況が続いています。平成21年度の就職内定率は全国平均で80.0%でした。建築学科の内
定率は学部95.5%,大学院100.0%で,全国平均を大きく上回る結果となったことは,本紙
vol.45 No.1(通巻133号)でもお伝えした通りです。就職先としては一流企業や上場企業
が多く,率だけでなく,質の面でも充実していることがわかります。
工学部が就職に強い理由はいくつかあります。この春,工学部を卒業した学生の“3人
に1人”は,工学部就職セミナーに参加した企業に就職が決まりました。工学部の学生を
積極的に採用したいと考えている企業だけが集まるので,工学部就職セミナーが内定に結
びつくビッグチャンスにつながっていることは言うまでもありません。
全国に広がる卒業生のネットワークや早い段階からの就職支援など,工学部の優位性は
他にもたくさんあります。企業によっては学校推薦を活用することも可能です。工学部の
卒業生がリクルーターを務めている企業も多く,より親身になって相談にのってもらえる
ことも強さの秘密につながっています。
こうした状況を踏まえると,厳しい就職戦線を勝ち抜くためには,「就職に強い工学部」
のメリットを最大限に活用することが鍵を握ってきます。就職活動というのは一人ではで
きません。建築学科の就職指導委員の先生や就職指導課のスタッフなど,気軽に相談でき
る体制を活かしましょう。
また,「先んずれば制す」とはよく言ったもので,早めに動くことも大切です。首都圏
の大学と比べて,東北の大学は就職活動がスロースタートだと言われているので,どんど
ん先手を打つぐらいの気持ちで臨む必要があります。就職試験対策やSPI対策は,就職
活動の第一関門でしかありません。面接までスムーズにたどり着くためには,早い段階か
ら情報を逃さず,いち早く企業研究を始めること。工学部の就職支援も早めに活用して
チャンスを広げてください。
■日常の自分を大切に
よく学生から「就職活動では,どんな心構えが必要ですか」と聞かれることがあります
が,就職活動中だけ“特別な自分”を取りつくろっても良い結果は生まれません。大切な
のは日常の自分です。日常の自分が就職活動での自分になり,社会に出てからも活きてく
るのです。人間力を高めるためには,人としてできて当たり前のことを日頃から実践する
ことが大切です。
例えばコミュニケーションはどうでしょう。話し方や聞き方には気を配っていますか。
簡単だからという理由で,メールに頼ったりはしていませんか。東京大学大学院教育学研
究科 大学経営・政策研究センターの「全国大学生調査の追加調査(2009年)」によると,
就職して数年の若手社会人(348人)に「仕事をする上で必要な能力は?」と質問したと
ころ,「人とのコミュニケーション」という答えが一番多かったそうです。コミュニケー
ションは信頼関係を築く礎です。日頃から丁寧なコミュニケーションを心がけてください。
また,社会生活を送る上で必要なマナーやエチケットも,ふだんから気をつけていない
と,いざというときに実践できません。ある企業の面接で,こんな出来事がありました。
寒い中,会場に到着すると,いつものように玄関先でコートを脱いだAさん。折りたたん
だコートは手に持って,面接の控え室へと向かいました。一方,玄関を通るときコートは
着たままで,控え室に案内されて初めてコートを脱いだBさん。いずれも面接の本番前の
出来事ですが,その様子は面接官にしっかりとチェックされていたのです。どちらの学生
が就職への切符を手にできたかは,諸君の想像にお任せしますが,日頃から実践している
かいないか,その違いが出てしまったケースと言えます。
日常の自分を大切にすることは,今からでもすぐに始められるはずです。コミュニケー
ションやマナーなど,ふだんできることを実践するだけで,就職活動がぐんと有利になる
こともありますので,ぜひ日頃から意識して自分の人間力に磨きをかけてください。
■自分の可能性に挑戦
これからの社会を生き抜くうえでは,グローバルな視点を持つことも大切です。最近は
就職試験でTOEICの点数を参考にする企業も増えてきましたが,国際感覚を身につけ,
世界に目を向けるために英語を学ぶことも必要です。日本の建築技術は世界でもトップレ
ベルにあります。建築学科の卒業生が,大学で学んだ知識や技術を土台にしながら,やが
ては世界を舞台に活躍することを願っています。
世界といえば,10月28日,「若手研究者を育む」と題したノーベル賞受賞者を囲むフォー
ラム「次世代へのメッセージ」が54号館で開催されました。ノーベル化学賞を受賞した
田中耕一先生のお話を聞いて,感銘を受けた人は多いはずです。これからの時代を担う若
手研究者には「失敗や挫折を恐れず,自分の可能性に挑戦してほしい」というメッセージ
が贈られましたが,この言葉はやがて社会に羽ばたくすべての諸君に通用するものです。
可能性に挑戦する気持ち,それこそが自分の成長につながります。就職活動でも失敗を恐
れることなく,自らの力で可能性を切り拓いていってください。 (広報担当)
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