『住環境創生大学校 須賀川』いま発進

教授 狩野勝重

 平成21年度,福島県高等教育福島県高等教育協議会から文部科学省へ提案をした「大学 教育充実のための戦略的大学間連携プログラム」が,福島大学を基幹校として採択された。 日本大学工学部も「大学教育充実のための戦略的大学間連携プログラム」における「エリ アキャンパス・プログラム」の一員として参加することになり,平成21年10月19日,須賀 川市と須賀川商工会議所の協力を取付け,共催という形で『住環境創生大学校 須賀川』 を立ち上げることが正式に決まったところで,現在,4月開校を目指して準備に追われて いる処である。  大学校の目的は,学生自身がキャンパスから街に出て,実際の社会活動をサポートし得 る知識と能力を身につけることであり,街の営みをしっかりと認識するための研修の場と なるべき処である。本来であるなら,その活動の中には,小学生低学年の紛うことなき天 真爛漫さ,老いて益々盛んな熟練の技術者の心意気,明日を夢見て集う若者たちの熱き心 などが渦巻いている筈である。当然のこと,数多の学生諸君と街の人々が,『大学校』の フロアに集まり,侃々諤々,口角泡を飛ばして議論に熱中している姿を想像しながら‥‥ あ,これは夢か,と思う日を恐れつつ,でも,日本大学工学部の学生が将来的には新しい 社会の担い手になるべく研鑽を重ねることができる場を少しでも提供できれば幸いである と考えている。  この『大学校』には二つの目的がある。その一は,言わずもがな,建築の枠を超えた大 学生の幅広い思考形態の形成であるが,今一つ忘れてならないことが,地域に広がる知の 輪の拡大であり,アカデミック・ミュージアムの展開である。大学における「知」の蓄積 は,現在で見る限り,大学の古ぼけた図書としてしか機能せず,誇りに埋もれているのが 実態である。中には,社会に発信することも疑問に思われる「知もどき」のものも少なく ない。それらが,一度社会に発信された段階で,どのようなリアクションが得られるのか, 学生諸君はしっかりと受け止める必要があるだろう。  そこでも,『大学校』では二つの選択メニューを用意することとする。その一つは, ディスクリートで緩やかな縛りである。参加者は,4月に登録を済ませておけば,学生・ 社会人に拘ることなく研究会・講演会・ワークショップなどに参加できる仕組みであり, 小学校低学年との会話や協働作業に親しむプログラムが容易されるであろう。  一方,タイトでコンクリートなプログラムも用意される。そのプログラムは,一定以上 の回数,用意された研究会・講演会・ワークショップに参加して,レポートの提出を義務 付けられる(オープンデスクとして対応)ものである。こちらの部門では,ディスクリー トなプログラム設定の中で子供たちに提供されるワークショップの準備も兼ねている。  その事業計画を挙げておこう。 事業計画  平成22年度の事業計画は3種類の活動からなっており,@学生の須賀川地域における活 動,A須賀川地域における調査活動およびB研究会の立ち上げによる可能性研究,である。 1)学生の須賀川地域での活動, 平成22年度予定 @木箱が創り出す空間概念の把握 A竹のワークショップ(過去の副業の掘り起こし) B切り絵・折り紙による室内空間演出と「光と影」への試行 C地域の祭りとの協働 を中心に,なお,平成23年度以降は, @子供にわかる簡単な木の構造理論 A木造建築の基本的構造 B壁に描かれた子供のこころ C大学生による小学校三年生以下の子供教育実践 D無農薬野菜カクテルハウス開催 Eお気軽ネット配信 Fその他,思いっ切り遊び心 などを予定している。  『住環境創生大学校 須賀川』を開校するのに先立って,既に予備段階での活動が始まっ ており,昨年の12月12日には「小布施まちづくり大学の所長である川向正人東京理科大学 理工学部教授の講演会,年明けの1月7日には小布施視察と長野駅前再開発地区の研修会を 敢行した。  因みに,『大学校』の所長は筆者,副所長は市岡綾子専任講師で,随時参加者を受け付 けている。待つ,申込み。