『建築がイメージできますか』

教授 出村克宣 

 工学部では,今年の4月に次世代工学技術研究センター(呼称:NEWCAT)が,また, 東北高校には新しい体育館が建設されました。NEWCATは打ち放しコンクリートで仕上げ られています。体育館の屋根は,集成材を用いた木質トラス構造です。この他に,校内 を見渡すと,いろいろな建築物があり,書か不幸か,劣化して,醜くなった建物もあり ます。そのような建物から,例えば,様々な構造様式,空間の広さ,建具の収まりや外 壁の詳細と汚れの関係,材料の耐久性などを学ぶことができます。このように,学内を 見渡しても,建築を学ぶ上での教材が多く見受けられます。また,30周年記念館北側で, 学術フロンティア構想による環境保全・共生共同研究センターの建設が始まりました。 基礎工事から竣工までの様子を見ることができますので,是非,現場を覗いて見てくだ さい。現在,工事の様子をweb上で見られるように準備を進めています。  どうしてこんなことを書くのかといいますと,学生諸君には,机上の学問ばかりでは なく,建築を肌で感じてほしいと思うからです。学内ばかりでなく,街に出てみましょ う,旅行をしましょう,音楽を聞きましょう,美術館を覗いて見ましょう,そして,建 築を学ぶものとしての感性を養いませんか?建築設計演習でいろいろな建物の設計が課 題となっていますが,その図面を書くときに皆さんはどのようなことをイメージしてい るでしょうか。図面を書き上げるまでの過程で,建物がどのような工程を経て建てられ るのかを学んでいるのですが,皆さんが設計した建築物が実際に建てられたと仮定して, その実物の施工の様子や竣工した時の様子をイメージできるでしょうか。建築学科では, 計画,環境,意匠,構造,材料,施工などについて多くのことを学んでいますが,それ らを連続して結合することによる総合的な学問が建築であるとよく言われます。そのよ うな知識を有機的に結合することによって設計行為が行われます。そのときに,建築物 が立てられていく過程をイメージできるような建築教育ができればと考えています。現 在,平成13年度のカリキュラム改訂を踏まえて,学生諸君にとって有効な教育システム とは何か,どのような教材が有効かなど,建築学科の授業体系をどのようにすべきか思 考錯誤の状態で議論を進めています。その対応策の一つとしての教材開発は,教員に課 せられた使命と考えますが,建築を肌で感じることは,学生諸君が自主的にそのような 行動をとることに期待しなければならないことです。上述したように,学内を見渡した だけでも,多くの教材がありますし,学外にはもっと多くの教材が存在しています。街 の中や学内を散歩しながら,建築をイメージする訓練をして下さい。最後に,建築学科 ホームページの一部を紹介します。建築って,こんな学問だと考えています。  建築のベースになるキーワードを並べてみました。  ひと・・・一家族一→社会  自然環境を考慮しながら,美しく,安全・快適で,心豊かな,そして活気あふれる  居住環境を提供するのが建築の役目だと考えています。  建築学は,住む,余暇,教育,労働を対象にした  建築物(器)→その集合体一まちや都市の形成・環境整備等を考える学問です。  そこで,建築学科では次のようなことを学びます。  ◇建築に「いのち」を吹き込むために   →快適な空間を光・音・熱環境から捉る「建築環境・設備」   →要求環境や構造を提供する「建築材料・構法」   →建築物を安全に支えるための「建築構造」   →そのつくり方としての「建築施工」  ◇先人の知恵を理解し,文化を考える「建築歴史・意匠」  ◇建物・まち・都市を造るための「建築計画・設計」「都市計画・設計」  ◇形や空間にしていくための「設計製図・構造設計」  ◇「材料実験・計画実験・構造実験・建築測量」  ◇「建築法規・建築倫理・企画」                                など(主任教授)