元プロ野球監督を講師に迎えて、『日本大学工学部 課外活動学生応援特別講演会』を開催しました

継続することの大切さを学び、未来への目標を持ち続けるために

 日本大学工学部では、10月3日(土)、54号館5431教室にて、『日本大学工学部 課外活動学生応援特別講演会』を実施しました。この講演会は、新型コロナウイルスの影響で競技大会の中止や延期、課外活動の制限など、様々な影響を受けている学生等を対象に、トップアスリートと接することで、夢や希望を持つこと、継続することの大切さを学び、それぞれが未来への目標を持つことができる機会になればと企画したものです。講師には、元プロ野球監督の金本知憲氏と真中満氏をお迎えし、トップアスリートとして、また人生の先輩としてのアドバイスをいただくとともに、この場でしか聞けない現役時代や監督時代のエピソードなどについて語っていただきました。

『感謝』、『謙虚』、『笑顔』を大切にしてほしい

真中 満氏(野球解説者/元東京ヤクルトスワローズ監督)


 まずは、日本大学出身の大先輩である真中氏にご講演いただきました。真中氏は、高校時代には春夏連続甲子園出場を果たし、大学時代には秋季リーグ戦優勝に貢献し首位打者にもなりました。そんな高校・大学時代を振り返り、野球部で経験した辛さを語りました。しかし、心が折れそうな時でも、何か意味があるのではないかと前向きに捉えることも大事だと諭しました。その後、ドラフト会議3位指名でヤクルトスワローズに入団し、そこで出会ったのが、当時監督だった野村克也氏でした。野村監督は常々、「固定観念を捨てろ」と言っていたそうです。真中氏は「メンタルブロック」という言葉と重ね合わせ、「自分の中でここまでしかできないとラインを引いてしまうのではなく、何事にもチャレンジしてほしい」と学生たちに呼びかけました。監督時代は優勝も最下位も経験しましたが、選手の自主性を重んじていたそうです。「誰かに言われたからやるのではなく、自分で責任感を持って行動することが大事」だと説かれました。これは、自主創造の精神にもつながるものです。さらに、真中氏は様々な経験を通して培ってこられた教訓を話してくださいました。そして最後に語ったのが、「感謝」、「謙虚」、「笑顔」の3つの言葉。自身も野球をやってこられたのは周りの方々のおかげだと感謝していると言い、学生たちにも「常に感謝する気持ちを持ってほしい」と伝えました。そして、良い時ほど謙虚な気持ちを忘れず、日頃から苦しい時でも笑顔でいればきっと幸せになれるとアドバイスされました。

不貞腐れず、見返してやろうという気持ちが大事

金本 知憲氏(野球解説者/元阪神タイガース監督)


 続いてご講演いただいた金本氏は、前人未到の1492試合連続フルイニング出場及び13686連続イニング出場の世界記録を打ち立てた「鉄人」であり、2018年には野球殿堂入りを果たしています。東北福祉大学出身で、東北にもゆかりのある金本氏は、ドラフト会議4位指名で広島東洋カープに入団。プロになったからには活躍したいと思い、最初の3年間は誰にも負けないくらい練習したと言います。しかし、引退を迎えた時には、もっと練習しておけばよかったと後悔したそうです。レギュラーになり、成績もあげて自信もついてきた頃から、自分に甘えが出てしまい、ついつい練習をさぼりがちになってしまったと当時を振り返りました。そして、何かをやり遂げた時の後悔を小さくするために努力することが大事だと示唆しました。また、監督から、「自分の成績ばかり気にしてプレイしているんじゃないか」と嫌味を言われ不貞腐れてしまったことで、成績がどんどん悪くなった時期があったそうです。不貞腐れるのではなく、なぜ見返してやろうと思わなかったのかと反省した金本氏。翌年、2軍落ちした時にはその反省を活かして、「よし、見返してやる!」と一念発起し、過去最高の成績を収めることができました。金本氏は学生たちにも「不貞腐れずに人生を歩んでほしい」と叱咤激励しました。そして、チームのために、上司のために、誰かのために頑張る、そういう気持ち、モチベーションが大事だと言い、「メンタルが人生を左右することを覚えておいてほしい」とアドバイスされました。

ここでしか聞けない秘話や逸話で会場も大いに盛り上がりました


 その後、金本氏と真中氏にご登壇いただき、参加者からの質問に答えながら話題を掘り下げるトークショーも行われました。早速、司会者は2015年のドラフト会議での“事件”の真相について質問しました。当時、二人は監督として、1位指名選手の抽選に臨みましたが、真中氏が引いたくじを見て当選したと早とちりしガッツポーズしたため、当選した金本氏はくじを確認せず外れたと思い込んでしまったということです。その後事務局からくじの確認ミスと阪神タイガースの交渉権獲得が発表されましたが、実際の状況や互いの心境などが、二人の生の声で赤裸々に語られました。そのやり取りの妙味に会場からも笑いがこぼれていました。また、現役時代にフルイニング連続出場の記録を樹立した金本氏は、デッドボールで左手首軟骨を骨折したにも関わらず、翌日試合に出てヒットを打ったという伝説の持ち主でもあります。それについて、金本氏は裏話を交えながら解説するとともに、「継続は力なりと言いますが、続けてこそ意味がある」と明言しました。現役時代には、シーズン代打起用回数98回・代打31安打の日本記録を作り、「代打の神様」と称された真中氏。大事な場面で決めるための心構えについて尋ねられると、「準備をしっかりすることが大事」だと強調し、「準備しないで失敗したら後悔するし、準備することで心にも余裕が生まれる」とも示唆しました。その他、「野球で結果を残すために行っていたこと」、「体をつくるための食事やトレーニング方法」、「チャンスやピンチで打席に立った時、どんな気持ちで臨んだか」、「プロ野球選手は毎日どのようにモチベーションを高めているか」などの質問に対し、野球人・アスリートとして、勝負師としての信条をお話いただきました。また、監督目線で、「どんな選手が伸びるか」という質問には、両名とも意見が一致し、自分の信念を持ち、頑固さと素直さを兼ね備えた選手が伸びると断言しました。さらに、金本氏のご厚意により、会場からの質問にも直接答えていただきました。「WBC日本代表監督だったら決勝の先発は誰に?」、「体の限界と心の限界はどっちが先にきた?」「藤川球児選手が引退すると聞いた時、どう思ったか」など、ここでしか聞けない話もしてくださいました。「どうしたら野球人口を増やしていけるか」という課題については、プロ野球業界の実態や状況を説明しながら、「球場にくるファンは増えている。今後、野球人気をもっと上げていくことはできる」と力強く答えていました。

 人情味溢れるトークで、会場を魅了し大いに盛り上げた二人から、最後に学生たちへのメッセージをいただきました。金本氏は、「何かあったら不貞腐れずに見返そう!くやしさを持って頑張る、親のためでもいいし、友達のためでもいいし、誰かのために頑張ってほしい」というメッセージを、真中氏は、「自分をしっかりもって、自分の考えをしっかり貫いて、行動してほしい。これからいろいろ経験すると思うけど、頑張って立ち向かってください」とエールを送りました。会場に集まった160名の学生たちは、感謝の気持ちも込めながら大きな拍手で応えていました。

 講演を聞いた学生からは、「球場で見ていた方を実際に目の前で見ることができて大変光栄です。これからは固定観念を無くし、“メンタルブロック”せずに挑戦していきたいです」、「とても貴重な経験になりました。自分も不貞腐れず、誰かのために頑張ります」、「分野は違いますが、スポーツ選手として為になる話が聞けました。これから就活も始まるので、活かしていきたい」などの感想が聞かれました。大いに刺激になったようで、それぞれ次なる目標に向かって決意を新たにしていました。

 この場をお借りしまして、ご講演いただきました金本氏と真中氏に深く感謝申し上げます。今後益々ご活躍されますことを、学生・教職員一同祈念しております。