ロハスの花壇を活用した環境教育活動が国土交通大臣賞『循環のみち下水道賞』を受賞

子どもたちがロハスの花壇の技術を通して
下水処理の役割を学び水資源の大切さを体感

 この度、郡山市上下水道局、郡山市ふれあい科学館と日本大学工学部の3者で開催した「謎解き☆きれいな水へのかえりみち バスツアー(令和元年10月5日開催)」が、令和2年度(第13回)国土交通大臣賞『循環のみち下水道賞 (広報・教育部門)』を受賞しました。この賞は、健全な水循環、資源・エネルギー循環を生み出す21世紀の下水道のコンセプト「循環のみち下水道」に基づく優れた取り組みに対し、平成20年度に創設された国土交通大臣賞です。工学部は郡山市と連携協定を結んでおり、土木工学科環境生態工学研究室(中野和典教授)が開発した汚水を浄化処理する「ロハスの花壇」を湖南浄化センターの敷地内に設置し、現在、実証実験を行っています。企画されたツアーは、小学生に猪苗代湖を中心とした水循環(雨→川→水道→下水)を理解してもらい、水資源の大切さを体感してもらうためのイベントです。湖南浄化センターのロハスの花壇で育つカボチャの重さや大きさを参加者に測定してもらいながら、ロハスの花壇の浄化メカニズムを考える体験型ツアーも組まれていました。研究室の学生たちもスタッフとしてイベントをサポートしていました。

中野教授にツアー当日の様子や受賞の感想についてお話を伺いました。

―国土交通大臣賞受賞おめでとうございます。感想をお聞かせください。

「循環のみち下水道」のコンセプトは、ロハス工学のスローガンである「健康と持続可能」というコンセプトにも繋がります。受賞を通して、人手もエネルギーも使わずに汚水を浄化できるロハスの花壇の技術を行政の方々にも知っていただく良い機会になりました。普段は閉鎖され見ることのない下水処理施設ですが、湖南浄化センターはロハスの花壇によって下水を見える化し、環境教育ソフトの場としても活用されています。これをモデルケースとして、今後の下水処理場の姿になっていけば良いと思っています。

―ツアーではどんなことを実施したのですか。

 まず、ロハスの花壇がどのように汚水処理をしているのか、その仕組みについて説明しました。湖南浄化センターに設置しているロハスの花壇は3段のろ床(人工湿地)になっています。処理前の汚水とろ過された各段の処理水を見てもらい、実際に汚水がどのくらいきれいになるのか、その過程を確認することで、自分たちが使った生活雑排水について意識するきっかけづくりをしました。また、ロハスの花壇に植えたジャンボかぼちゃを実際に持って重さを計測し、何段目の花壇のかぼちゃが最も成長しているかを確認してもらいました。このツアーはクイズ形式で学習していくところも特徴であり、子どもたちにはなぜ一番成長するのか、その要因についても推理してもらいました。下水の中の栄養素である窒素やリンが残りやすい花壇が一番成長し、汚水が混ざりすぎていると成長を阻害することを知ってもらうとともに、水や肥料がなくてもかぼちゃが育つロハスの花壇の優れた技術についても体感していただきました。

―どのような効果があったと思われますか。

子どもたちは、これまで関心のなかった下水処理について楽しみながら理解を深めることができました。水の大切さと下水道の必要性を体験することで、より効果的に啓発することができたと思います。親御さんも楽しんでいたようですが、大人にも知っていただけたことが大きな効果に繋がったと思っています。単に下水処理場を見学するだけの企画では、賞には結びつかなかったでしょう。下水を使って緑化ができるだけでなく、人手もエネルギーもいらない、CO2も出さない、ロハスの花壇という技術を通して下水道の役割を学びながら、環境についても考える教育の場になっていることが重要なポイントになっています。

―今後ロハスの花壇をどのように活用していきたいですか。

湖南浄化センターではかぼちゃだけでなく、子どもたちが向日葵を植えるイベントも行っています。もちろん、向日葵もロハスの花壇で育てています。自分たちが植えた向日葵を楽しみに見に来る方もいますので、まちの花壇として展開していけば親近感もわき、下水処理場のイメージも良くなると思います。ロハスの花壇を活用したエコツーリズムを企画すれば湖南町の村おこしにもつながるでしょう。今後もロハスの花壇を活用した広報活動は継続していきます。さらに土木の観点から言えば、下水処理場をグリーンインフラにしていくことが大きな目標になります。ロハスの花壇が社会実装できる技術であることを多くの方に知っていただき、グリーインフラとして普及させていきたいと考えています。

―ありがとうございました。今後益々ご活躍されますことを祈念しております。

 

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