猪苗代湖の水草回収ボランティアから学ぶ

地域の水環境と水質保全の大切さ

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 この度、日本大学名誉教授の中村玄正氏(元工学部教授)が会長を務める『清らかな湖、美しい猪苗代日本水大賞座談会image002湖の水環境研究協議会』が第16回日本水大賞環境大臣賞を受賞しました。猪苗代湖の水質保全のための水生植物等回収活動が評価されたもので、工学部の学生も参加している取り組みの一つです。この活動にはどのような意義があるのか、中村先生と参加した学生たちによる座談会を開きました。

写真前列:中村玄正日本大学名誉教授(清らかな湖、美しい猪苗代湖の水環境研究協議会会長)

後列(左から):山下勇一さん(生命応用化学科3)・会沢晃穂さん(電気電子工学科2)・赤津佑芽さん(機械工学科3)

 

猪苗代湖の水質汚濁の原因とは!?

日本水大賞座談会image006中村:まず、皆さんに参加していただいている猪苗代湖の水草回収ボランティアがなぜ始まったのか説明いたしましょう。左下の図を見ていただくとわかるように、猪苗代湖は平成7年くらいから年々湖心のpH(水溶液中の水素イオン濃度)が上がり始め、それに伴ってCOD(化学的酸素要求量)も上昇してきました。もともと猪苗代湖は酸性で水質日本一を誇る湖だったのに、pHも中性に近くなり、ここ最近ではランキング対象外になるほど、一部水質が変化してしまったのです。水質汚濁の要因として北部水域に長年流入、蓄積されてきた汚濁物質の堆積と、これを栄養分として生育繁茂する水生植物の枯死と放置による有機物の蓄積にあると考えています。水の汚れの原因は有機物の混入によるもので、有機物一種である水草が枯れて湖内で腐食することで湖も汚れしまったというわけです。共同研究者の土木工学科藤田豊教授の調査から、北部水域では秋季に水生植物の漂着量が増えていることもわかりました。

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 汚濁を食い止めるためには、水草を回収することが必要であると考え、阿武隈川の水質保全の活動をしていた国際ロータリークラブ第2530地区(福島県)と連携し、組織的に活動を始めたのが平成21年のこ日本水大賞座談会image008とでした。その頃から工学部の学生にも手伝ってもらっていました。どうすればスムーズに回収できるかいろいろ試行しながらパターンを作っていく中で、その道具としてまず必要なのは軽トラックだということになりました。それで現在、軽トラックを自家用車兼水草回収に活用しているというわけです()

最初は6㎥ほどの回収でしたが、年々参加者が増えるとともに回収量もあがってきました。その効果もあってか、平成23年頃まで上がる一方だった数値も、ここ数年下がりつつあります。活動も今年5年目に入りました。ロータリークラブの方々をはじめとする大人の方から、ボーイスカウトの子どもまで幅広い層が参加しています。

 

活動を通して学んでほしいこと

中村:皆さんはどうして水草回収ボランティアに参加しようと思ったのですか。

日本水大賞座談会image014赤津:私は1年の時、機械工学科の「ロハス工学Ⅰ」の授業で猪苗代湖の水環境に関する中村先生の講義を聞いて興味を持ったのがきっかけです。我々3人が所属する水泳部が積極的にこのボランティアに参加していたのも理由の一つです。参加して正直大変な作業だと思いました。でも、みんなの力で大量の水草を回収していくと、目に見えて湖岸がきれいになっていくのがわかりました。とても達成感がありますね。

山下:1年の夏に福島県内の大学対抗の水泳大会があり猪苗代湖で泳いだときにはきれいだと思ったのに、なぜ汚れているのか関心がありました。湖の中でも日本水大賞座談会image016場所によって水質が悪化しているのですね。2年の授業でCODについて学んでからは、勉強も兼ねて参加しています。

会沢:最初は水泳部の活動の一環として参加したのですが、実際に水草が漂着していたところが濁っている現状を目の当たりにしてきれいにしなくてはと思い、今年も参加しました。

中村:福島県内の大学の中で工学部の学生の参加が一番多いですね。

山下:私は埼玉県の出身ですが、幼稚園児や中学生、お年寄りの方々まで、こんなに好きで守りたい場所がある福島県っていいなって、羨ましく思います。

会沢:それに福島県の方って心が温かいですよね。水草をトラックに積むとき、重くて大変そうにしていると一緒に手伝ってくださいました。住民の方々の優しさに触れることができるのも、このボランティアのいいところだと思います。

赤津:私もコンテナをトラックに積む係でしたが、予想以上に足腰にきました()。機械工学科の学生としては、水草を効率よくラクに回収できる機械が必要だと思いました。設計の研究室に入るので、そんな機械を開発したいですね。

山下CODの授業だけでは理解できなかった有機物による水質汚濁の状況を中村先生から聞いたり、体験を通して学べるのは自分にとってすごく実になっています。

 

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会沢:地道な作業ですが、自分が住んでいる地域の水がきれいになっていくと単純に嬉しいし、やりが日本水大賞座談会image022いもあります。今は直接勉強に関係ないかもしれないけど、将来のためにもいい体験をしているなと感じます。

赤津:水は人間にとって命の源。飲み水としてだけでなく、米や作物を育てるのにも水は重要だから、きれいにしなくてはいけないと思います。水質がよくなれば、私たちが食べる物も美味しくなる。自分たちのしたことがゆくゆくは自分に還ってくるという、これも広い意味でロハスですよね。

中村:ロハスの定義の中にもある“循環”というキーワード。地上の水は太陽エネルギーによって蒸発し、空で雲になり雨となってまた地上に戻ってくる。つまり循環しているわけです。実験などで使う蒸留水もこの自然のメカニズムを真似て作っているものなのです。熊本の民謡「五木の子守唄」に、「水は天からもらい水」という一節がありますが、自然の水はこの素晴らしい循環メカニズムによってもたらされているのです。どの源流に行ってもすぐ飲める日本水大賞座談会image024し、泳げる。それが本来の水です。それを学んでいただきたいですね。だから、人間の生活排水に含まれる有機物が水に混入し、汚濁の原因となっている現状を知っていただき、水をきれいにするためには自分たちが汚さないようにすることが大切なのだと感じてほしいのです。人間に豊かな自然の中で健全な日常生活を送る権利があるとすれば、常に水をきれいにしていくという義務もあるのではないでしょうか。

赤津:水の汚れは食べ物にも影響を及ぼし、その地域に住んでいる人たちの健康にも関わってくること。いかに大切かがわかります。水草回収に限らず、これからも環境に関わるボランティアがあれば積極的に参加していきたいですね。

会沢:私も今まで参加したことはなかったけど、ボランティアに対する意識が変わりましたし、その大切さを知る貴重な体験になりました。人の役に立つ仕事ができて参加してよかったと思いますし、私もいろいろなボランティアに参加していきたいなという気持ちが芽生えました。

赤津:会沢さんと私は茨城県の出身なんですが、茨城県にも霞ヶ浦という湖がありますので、こうした活動を地元でも行って貢献したいですね。

日本水大賞座談会image026山下:水草回収は誰かがやらなければいけないこと。地元の人たちにとっては当然のことかもしれないけど、みんな活動を楽しんでいたのが印象的でした。行政任せではなく、自分たちの住む地域は自分たちで守るということを当たり前に思えるのは素晴らしいなと。将来どこに住むかわからないけど、私も福島の皆さんのように、その土地に愛着を持って守りたいと思えるようになりたいです。

中村:実は長野県にある諏訪湖もアオコやヒシによって水質悪化しており、今は泳げない状況になっています。長野県にある大学の水泳部に猪苗代湖で泳いでもらって、本来湖とはこういうものだということを知ってもらいたいと思っています。このように水質汚濁は各地域が抱える課題となっています。日本で今泳げる湖は、猪苗代湖と琵琶湖の2つくらいしかないでしょう。全ての湖で泳げるようになってほしいと思っています。そのためにも全国に活動の輪を広げていくことが、私たちの今後の目標でもあります。

日本水大賞座談会image0285年間続けてきたこの活動が評価され、今年度「第16回日本水大賞環境大臣賞」に選ばれました。ご参加いただいたのべ6,000人の皆さまに対して贈られたものであり、深く感謝しております。これからも県民の皆さまとともに猪苗代湖の水質日本一復活を目指して、水草回収ボランティア活動に尽力していきたいと思っています。なお、活動現場での不行き届きが多々あるかと反省しています。この場をお借りしてお詫び申し上げます。

学生の皆さん方も今後とも是非ご協力ください。

学生一同:はい、頑張ります!

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