地中熱利用システムの高精度化を目指す研究が

世界から評価を受け講演論文賞に輝く

再生可能エネルギー国際会議2014image002 727()から81()に東京ビッグサイトで行われた「再生可能エネルギー2014国際会議」において、機械工学科再生可能エネルギーシステム研究室の船引彩子研究員が発表した『The effects of aquifer on vertical borehole ground source heat pump system(ボアホール式地中熱利用システムにおける帯水層の影響)』が講演論文賞を受賞しました。12の研究分野から約900件の研究発表があり、そのうち30件が講演論文賞に選ばれました。船引研究員は『Geothermal Energy & Ground-source Heat Pump(地熱・地中熱ヒートポンプ)』分野(2件受賞)での受賞となりました。船引研究員の喜びの声とともに、受賞した研究について詳しくお話を伺いました。

 

―講演論文賞受賞おめでとうございます。感想をお聞かせください。

 ありがとうございます。賞をいただけるとは思っていなかったので、正直驚きました。国際会議ではありますが、この研究に関して日本で発表するのは今回が初めてです。これまで同様のテーマを海外で発表する機会が何度かあり、研究を重ねながら毎回少しずつ内容を深めてきました。結果、日本では通説とされてきた地中熱の地下水利用に疑問を投げかけるような研究発表でしたから、今回は批判的に捉えられるだろうと思って臨みました。賞に結びついたということは、研究内容も評価されたのだと思います。私たちの研究に意味があると理解されたとしたら大変喜ばしいことですし、今後の研究への励みにもなります。

 

―研究内容について詳しくお話いただけますか。

 再生可能エネルギーシステム研究室では、地域イノベーション戦略支援プログラムによる技術開発を進めており、①浅部地中熱利用 ②遊休井戸転換型熱交換井による地中熱利用 ③地中熱リファレンスマップ を課題として研究に取り組んでいます。

私が専門とする研究分野は地形学・第四紀地質学で、地中熱を採熱するにあたり、福島県内市街地の任意地点における採熱量期待値を示す地中熱リファレンスマップの構築を進めています。

地中熱利用に有利な一般的条件としては、地温勾配が高い、地層の熱伝導率が高い、地下水流速が速い等が挙げられます。しかし、地下水の流速を実測した例は少なく、学術的に各地の地下水流速をデータベース化した例はまだがありません。地下水の流速には様々な計測方法がありますが、時間やコストが掛るうえ、流速が遅すぎて検証が難しいからです。果たして地下水の影響を地中熱利用システムの設計に組み込む必要性があるのかどうか、そのような出発点から検討を行いました。

我々の研究では実測はできませんので、熱交換井周辺の地下水・地質条件を変化させた3次元シミュレーションを用いて熱流束の変化を再現しました。数値解析を行った結果、確かに帯水層を充填する砂礫の熱物性が高く、帯水層が厚く、流速が早ければ相当の熱流束の増加が見込めることが検証されました。その一方で、砂礫の種類や間隙率などの様々な条件によって熱流束は変化し、砂礫を含まない地下水のみによる帯水層を仮定した場合、熱流束の上昇効果については影響が認められないことがわかりました。よって、地中熱利用システムの設計に地下水の効果を組み込みには、十分な注意が必要だと提言しました。

 

―国際会議で発表された時の反応はどうでしたか。

 日本ではこれまで、地下水が流れている場所が採熱に有利だとされてきましたから、日本の方 再生可能エネルギー国際会議2014image004は驚いたようです。海外の方は、それはどういうモデルなのか興味を示していました。地中熱の研究は北欧が主流ですが、岩盤を使った地中熱ポテンシャル評価を行っていて、地下水は条件に加味されていません。どちらにしてもこういう研究は今までなかったので、面白いと思われたのでしょう。外部の方々に私たちが研究していること、考えていることを客観的に見ていただき、評価してもらうことは大切だと思いました。

 

―今後の目標についてお聞かせください。

 最終的な目標は、事業者が事前設計データとして利用できる3次元地中熱リファレンスマップを開発することです。既往研究のマップでは、全国傾向を定性的に評価するマップとしては優れていますが、実際に事業者が設計する際にはまだ精度が粗く、活用できていないのが現状です。まずは採熱井の深さの違いによる影響や採熱パターンの違いによる採熱量の変化など、様々な条件下で実際にどれくらい採熱できるかを学術的に分析します。適地・不適地問わず、最低でもこれだけ確保できるという期待値の確かな熱交換量マップを作ることで、実用化を図るのが狙いです。さらに省エネ効果を算出できる設計ツールも含めたアプリケーションの開発を目指します。これまで設計するために掛っていた工事費の初期コストを下げるだけでなく、事業者にとって使いやすく、施主に対してもリスクのない提案ができれば、普及拡大につながっていくものと思います。

現在、福島県内の企業とともに、リファレンスマップをWEB上で表示させるためのGISを使ったアプリケーション開発について協議しているところです。リファレンスマップの精度を高め、実用化できるように研究開発を進めていきたいと考えています。

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―ありがとうございました。今後ますますご活躍されることを期待しています。

 

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