自然の浄化機能を活かした排水処理技術が高く評価され
実用化に向けて期待も高まる

 12月6日から8日に北九州市で開催された第53回環境工学研究フォーラム(土木学会環境工学委員会主催)において、「花壇を有効利用した水質浄化技術の開発」の題目で発表した「ロハスの花壇」の研究プロジェクトが、環境技術・プロジェクト賞を受賞いたしました。
 環境工学研究フォーラムは(公社)土木学会の環境工学部門の全国大会に位置づけられる学術発表会です。本賞は、環境工学研究フォーラムの「環境技術・プロジェクトセッション」で発表された技術のうち、最も優れた技術(複数可)に対して授与される賞です。今回は表彰対象テーマ20題の中で、5題が受賞いたしました。
 平成28年度の「ロハスの花壇」の研究プロジェクトは、土木工学科の中野和典教授と環境生態工学研究室の大附遼太郎さん、中村和徳さん、機械工学科の橋本純教授と材料工学研究室の河野嵩人さん、見田豪介さんで進められてきました。プロジェクトを代表して、中野教授に受賞の喜びの声とともに、研究について詳しくお話を伺いました。 

 

―環境技術・プロジェクト賞受賞おめでとうございます。感想をお聞かせください。

 この賞をいただけたことを大変嬉しく思います。工学部が推進するロハスの工学における研究プロジェクトの中で、水の自給自足は重要な研究課題の一つです。「ロハスの花壇」はその研究の一端を担い、機械工学科の橋本教授とともに取り組んできたものです。一研究室としてではなく、ロハスの工学研究プロジェクトの成果として賞をいただけたということは、工学部全体の取り組みが認められたのだと捉えています。また、新しい技術としても高く評価されたわけですから、大変意義のあることだと思っています。

 

―研究内容について詳しくご説明いただけますか。

「ロハスの花壇」は、大学のキャンパス内に設置した花壇型人工湿地です。5段構造になっている内部には、水質浄化用のろ材を敷き詰め、5回のろ過を行うことで生活排水が浄化される仕組みになっています。花壇の内部は十分に空気がいきわたり、花壇でろ過された汚れは、速やかに土壌微生物により分解されます。さらに分解産物は、植物が栄養として利用するので、肥料も要りません。このような自然が営む物質循環を利用することで、エネルギーを使わずに排水処理が行えるシステムになっているのが、「ロハスの花壇」の大きな特長です。実際に必要な電力は一日6分から20分の揚水ポンプ動力のみで、高度処理型の浄化槽と比較すると約10分の1の電力で同等の処理が行えます。

    花壇型人工湿地の外観             花壇型人工湿地の内部構造

 本発表では、「ロハスの花壇」で約2年間行った学生食堂排水処理の実証実験の結果を報告しました。738日間に232㎥の学生食堂排水を花壇に流入させ、浄化性能を評価した結果、栄養塩除去性能は5-6月にかけて低下することが明らかとなったものの、水の汚染を表す指標であるBODの除去率は99.4%、TKNの硝化率は87.8%など、高い値となりました。また、BODで見ると、処理した電力

花壇型人工湿地の消費電力の比較評価

は高度処理型の浄化槽と比べて90%の低炭素化を達成したことになります。このように花壇型人工湿地の処理性能は、高度処理型浄化槽と比べても遜色ないレベルであり、小規模分散処理の高度化・低炭素化・グリーン化に資する十分な性能を有していることを実証できました。

 

―どのような点が評価されたと思われますか。

 「ロハスの花壇」のように人工湿地化する利点として、一般家庭の庭や公園等の緑地を利用して高度処理が行えるだけでなく、緑化に必要な水と肥料が生活排水等で賄えることが挙げられます。さらに、排水処理に要するエネルギーを削減できるのも大きなメリットです。これらの効果的な新しい技術に対して、高い評価をいただけたのだと思います。地球温暖化によるエネルギー問題は様々な分野の重要課題となっていますが、土木分野においても「グリーンインフラ」と言われるように、自然の恩恵や仕組みを利用した新たなインフラの構築が必要とされています。そういった点でもこの研究が評価されたのではないでしょうか。

 

―今後の目標についてお聞かせください。

 次は、ひまわりを使ったロハスの花壇の展開を考えています。まだ構想中ではありますが、食の安全性も考慮して作物を栽培できるような資源循環型のロハスの畑についても検討しているところです。また、昨年、郡山市と下水道事業で連携協定を結びましたが、実際に湖南浄化センターにおいて、「ロハスの花壇」のシステムを設置した実装実験を行う予定です。大学が産業廃棄物を使った実験を行うことはなかなか難しいことですから、郡山市という行政の協力を得られたのは大きな価値があります。「ロハスの花壇」を使った下水処理性能の高さを実証できれば、郡山モデルとして全国の自治体に普及させることも可能になるでしょう。この研究は、日本大学本部が募集した平成29年度学術研究助成金「社会実装研究」にも採択されました。大学からのバックアップは、研究を促進させるための原動力になります。実社会に直ぐに役立つ研究として、多くの方が期待を寄せているわけですから、それに応えられるように成果を出していきたいと思っています。

 

―学生たちにメッセージをお願いします。

 開発によって得られるものと失われるものがあるということを忘れてはなりません。それを理解したうえで、開発を進めるべきか否かを判断していく必要があります。20世紀の技術革新により便利な社会になった一方で、きれいな水や空気、森林といった大切な自然を失ってきました。そして今は、失った自然を取り戻すために、お金をかけて再生しようとしているのです。自然が持っている様々な機能は、もっと私たちの暮らしに利用できるはずです。例えば、農家を廃業して田んぼだけが残ってしまったとしても、水を溜めるダムとして活用することも考えられます。身の回りの自然をインフラという観点で捉えて上手に活用する。それはロハスの考え方につながるもので、私たちが目指す地方創生の指標となるものです。日本の人口は一極集中していることからも、全国的にはほとんどが地方だという見方もできます。地方にある工学部だからこそ、地方ならではのグリーンインフラをつくっていくことができるのだと思います。自然に恵まれた田舎には、澄んだ空気、きれいな水、美味しい食物があります。それらはGDPといった数字には表れないものですが、実はそれこそが豊かな暮らしの象徴と言えるのかもしれません。自然と共生し、自然を利用しながら新しい技術を開発し、社会を支えていく―。学生の皆さんには、こうした次世代型インフラの構築を目指してほしいと思います。

 

―ありがとうございました。今後益々ご活躍されることを祈念いたします。

 

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