健全で持続可能な橋の実現を目指し、世界初の実験に挑む

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 土木工学科コンクリート工学研究室は、民間企業や東京大学らと共同で、今後100年経っても使えるような、丈夫で長持ちするコンクリート橋の開発を目指す『ロハスの橋プロジェクト』を2014年にスタートさせました。特に社会基盤施設(インフラ)の老朽化問題の中で、最も深刻化すると言われている凍結防止剤による道路橋の鉄筋コンクリート製(RC)床版の劣化に焦点をあてて研究を進めています。この研究の大きな特徴は、キャンパス内に実物大の橋梁を再現したことです。実際の橋梁と同じ条件下で実験を行うことにより、現状に近い挙動を再現することができ、精度の高い実測データが得られます。研究の第1弾が終了し、また新たな研究が始まっている『ロハスの橋プロジェクト』。その第2弾について、岩城教授と現在研究に取り組んでいる土木工学科4年の津田ひかるさんにお話を伺いました。

ASRコンクリートの劣化メカニズム解明と高耐久性コンクリートの開発を目指す

土木工学科 岩城一郎教授

土木工学科 岩城一郎教授

 『ロハスの橋プロジェクト』がスタートしてから、丸2年が経ちました。 第1弾では、水とセメントの配合を変えたり、特殊な粉や薬剤を加えたり、タイプの異なる6種類のコンクリートで雨、雪、風、暑さなどさまざまな影響を調べてきました。実験開始から1年経って、現在、耐久性試験を進めている段階です。その結果、セメントに対する水の割合が45%以下、FA(フライアッシュ)を使用し、空気の含有量6%のものが高い耐久性を示すことが分かってきました。これらの成果は学会等でも発表し、すでに復興道路などに実装されているものもあります。
 第2弾では、新たな種類を加え、次の5種類のコンクリートを設置して劣化の変化を調べていきます。

①現在の基準に従い作製されたもの(標準)、②製鉄所から排出される高炉スラグを使用したもの、③FA(フライアッシュ)を加え、コンクリートの緻密性をさらに高めたもの(最高級)、④ASR(アルカリシリカ反応)のコンクリート、⑤二層打ちコンクリート

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 特に、④のASRを使用した実験は世界でも初の試みです。アルカリシリカ反応がどのようにしてRC床版を劣化させていくのか、そのメカニズムの解明につながることが期待されています。⑤は表層の数cmのみに高耐久コンクリートを使用した二層打ちコンクリートになっています。低コストで耐久性の高いコンクリートの実用化を目指し、新たにプロジェクトに参入した企業らと共同で研究を進めています。また第1弾は春・夏シーズンに計測を行いましたが、第2弾では秋・冬シーズンに施工を行い、気候による違いについても考察していきます。1年以内に耐久性試験も行い、学生の卒業研究で成果を発表する予定です。

災害を防ぐための維持管理に役立つロハスの橋の研究に魅力を感じて   

土木工学科4年 津田ひかるさん

土木工学科4年 津田ひかるさん

 東日本大震災を経験し、災害や防災に興味を持ったことがきっかけで、土木工学科に進みました。3年生の夏休みに国土交通省東北整備局のインターンシップに参加し、橋梁点検の仕事を体験した時、災害を防ぐためには日頃から維持管理し安全にしておくことが大切なのだと学びました。それで、ロハスの橋の研究をしてみたいと思ったのです。
 現在、コンクリートの伸びたり縮んだりする挙動や緻密性について計測を行っています。中でも、ASRによる病気の進行具合、つまり劣化状況を詳細に見ることが、私にとって最も重要なミッションです。1週間に2回データを整理し、グラフ化してその変化を分析しています。データ量が多くて整理するのは大変ですが、ひずみの状況をグラフ化すると膨張していることが一目でわかり、研究の面白さを実感できます。

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 また、ロハスの観点から環境や健康にも配慮しようと考え、土木女子の会のメンバーにも協力してもらい、ロハスの橋周辺に菜園をつくるなどの環境整備を行いました。ナスやトマト、キュウリ、ピーマン、ゴーヤ、オクラなど、健康に良さそうな野菜のほか、朝顔やマリーゴールドなどの花も植えました。特に力を入れたのは、ロハスの橋の看板づくり。研究者だけでなく、一般の方や子どもたちもロハスの橋の見学に訪れることを意識して製作しました。

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 先日も工学部キャンパスで「ちびっこマイスターズ・カレッジ コンクリート探検隊」が開催され、たくさんの子どもたちにロハスの橋を見学してもらいました。看板も大変好評でした。また、クイズをしながらコンクリートやロハスの橋について説明しましたが、子どもたちは真剣に話を聴いていました。コンクリートに興味を持ってくれて、とても嬉しかったです。

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 今、土木業界では女性ならではの感性や視点が求められています。環境整備もその一つ。これまで関心のなかった橋がきれいになれば、住民の方も大事にしようという気持ちになり、それが橋を長持ちさせることにつながるのだと思います。
ロハスの橋プロジェクト第2弾image011 将来は道路や橋の点検に携わる仕事に就き、これまで学んだことを活かして維持管理に努め、安全かつ、人々が当たり前に道路や橋を利用できるようにしていくことが私の目標です。

これからもロハスの橋の計測は続きますが、夏の炎天下にめげず、しっかり研究成果につながるように頑張ります。

コンクリート工学研究室