教員の活躍

情報工学科の源田浩一教授が電子情報通信学会フェロー称号を贈呈されました

通信業界にインパクトを与えた革新的な技術が
高く評価される

 情報工学科の源田浩一教授は、学問・技術面における先駆的な研究による学会への貢献等が評価され、一般社団法人電子情報通信学会より平成30年度フェロー称号を贈呈されました。源田教授は、現在、効果的、効率的に途切れることなく情報を運ぶための適切なネットワーク資源の配備や柔軟かつ持続的なトラヒックルートの制御を課題に、時代のニーズにあわせて、IoTやAI・機械学習などの最先端の技術を取り入れたネットワーク制御方法やネットワークアーキテクチャの研究を進めています。特に、「高速パケットスイッチシステム及びネットワーク最適化技術の研究」が高く評価されての受賞となりました。

源田教授に受賞の喜びと評価された研究内容について詳しくお話を伺いました。

―この度はフェロー称号おめでとうございます。感想をお聞かせいただけますか。

ありがとうございます。この受賞は私の力だけではなく、研究を進めるにあたり、各方面から支えていただいた方々のおかげであり、皆様には深く感謝しております。研究テーマに恵まれたことや私を推薦してくださる先輩方がいたことも幸運だったと思います。フェロー称号贈呈式の際には「フェローは学会の顔」との大変光栄なお言葉をいただきました。それに恥じぬよう更なる高みを目指して研究に励むとともに、後進の育成にも力を注いでまいります。

―評価された研究について、詳しくご説明いただけますか。

この度、フェローの対象となったのは2つの分野の研究です。一つは、「高速パケットスイッチシステム」の研究です。現在はインターネットの普及に伴い、動画や音楽などの多様かつ大容量の情報も飛び交うようになりましたが、それ以前の1990年代はじめは交換機の時代で、ネットワークで通信される主な情報は音声でした。私はその当時から、音声に加えて動画や音楽などの情報を小包(パケット)として通信する交換方法について研究を始めていました。提案したパケットスイッチシステムは、当時最速で情報をスイッチングでき、テラビット級の交換容量を可能にしたもので、高速パケットスイッチシステムのマイルストーンとなる技術でした。その後、インターネットのテラビットルータの高速パケット方式に活かされる等、通信業界にインパクトを与えることができました。
もう一つは「ネットワーク最適化技術」に関する研究です。ネットワークで通信される情報量は指数的に増加し続けています。情報量の増加を見据えて通信設備を効率よく増やすために、追加する設備量だけでなく、ネットワーク運用者のオペレーションリスクの低減にも着目したシステマティックな設計方法を提案しました。さらに、2011年の東日本大震災では、インフラ機能が停止したことで、国民生活に大きな支障が出ましたが、重要なライフラインである情報通信インフラにも甚大な被害が及びました。それを教訓として、災害時に想定外の大規模な被害を受けた通信ネットワークをどこからどう復旧すれば効果的か、それを導きだすための効率的なネットワーク復旧方法を考えたことも評価された点だと思います。

―今後の目標をお聞かせください。

機械学習等を取り入れて、ネットワークがインテリジェントに自律して最適的化される技術の研究成果を出すことが一つの目標です。その他にも、新たなテーマが次から次へと沸いて出るのが通信分野の特徴でもあります。私が通信関係の研究に携わるようになった1990年代から約30年の間に、ITの世界はドラスティックに変化しました。その時代に、ネットワークやコンピュータの研究に関われる環境にいられたのは大変ラッキーなことでした。研究テーマとの出会いは偶然ではありましたが、その都度自分なりに判断して必然性のある方向に進んできたように思います。これからの30年は更に目まぐるしくダイナミックに変わっていくでしょう。AIや機械学習、自動運転、IoT、そしてCPS(サイバーフィジカルシステム)など、加速的に技術や社会が進化していく中で、やるべきことはまだまだたくさんあります。我々研究者も、生まれたての技術の前では素人のようなものです。日々勉強しながら一つひとつの課題をクリアしてアウトプットする。そしてまた、次の課題に挑戦していくといったように、私たち研究者の使命は、「人類のためにテクノロジーを進化させる(IEEE)」ことです。工学は人の役に立つための学問であり、常にそれを意識しながら技術の実用化を目指していかなければなりません。本学工学部が推進する「ロハス工学」を具現化し、その成果を日本のみならず世界に発信し貢献していきたいと考えています。

―情報工学を学ぶ学生たちにメッセージをお願いします。

 情報工学は進歩の激しい世界であり、常に最先端の技術に触れられるという点では、面白くてやりがいのある分野です。様々なテーマの中から、ぜひ自分がやりたいものを見つけて挑戦してください。壁にぶつかったとしても、自分の選んだ道ならきっと乗り越えることができると思います。すぐに結果が出なくても、諦めずにチャレンジし続ければ、必ず成果に結びつき、そして素晴らしい達成感を得ることができるでしょう。興味のあることにはどんどんチャレンジし、自分の能力を試しながら乗り越える力を身につけてほしいと思います。

―ありがとうございました。今後益々ご活躍されますことを祈念いたします。

 

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