低融点材料を衝撃から守る皮膜の研究が高く評価される

 6月14日(金)に開催された一般社団法人日本材料科学会北海道・東北支部の第2回北海道・東北支部材料科学コロキウムにおいて、生命応用化学専攻博士前期課程1年 田代敦也さん(無機材料化学研究室/指導教員:上野俊吉教授)が最優秀発表賞を受賞しました。本コロキウムは、学会所属の教員による研究概要の紹介に続き、その研究に携わる学生が研究発表し、教員が学生に30分間以上質問して議論を戦わせるコロキウムであり、昨年から実施されており、今年で 2 回目を迎えます。今回のコロキウムからは、教員と学生の参加者全員による投票で、優秀な発表を行った学生を1名選出し、最優秀発表賞を授与することとなり、その結果、『超急冷凝固法によって作製される酸化物共晶皮膜の組織形成』を発表した田代さんが、最も多くの投票数を獲得して最優秀発表賞に輝きました。
 田代さんに喜びの声とともに、研究について詳しくお話を聞きました。

―最優秀発表賞おめでとうございます。感想をお聞かせください。

 ありがとうございます。口頭発表は学部4年生の時に1回、院生になって2回経験しましたが、賞をいただくのは今回が初めてです。まさか受賞できるとは思っていなかったので、嬉しいと同時に驚いたというのが正直な気持ちです。コロキウムというものがどんなものであるか、事前に指導教員の上野先生に聞いていましたので、どんな質問が来ても答えられるように準備しました。準備段階が大変でしたが、賞をいただくのは大変うれしいです。

―発表した研究について詳しく説明いただけますか。

 もろい材料・やわらかい材料を保護するにはセラミックスのような強度の高いクラックのない皮膜の付与が有効です。普通のセラミックスは多結晶体ですので、結晶の粒界に密度の低い粒界ガラス相が存在し、もろい材料ややわらかい材料の封孔にはなりません。皮膜を一度溶融させると比較的簡単に粒界ガラス相のない、クラックの少ない皮膜が得られます。しかし、多少のクラックは溶融状態から冷やす過程で発生します。そこで、クラックが発生しないメカニズムを考えました。アルミナとチタン酸アルミの複合材料では共晶組織が形成し、大きな応力を吸収できるとともに、急激に温度が低下する高温域における降温過程では熱膨張係数が小さいチタン酸アルミが生じるため、応力を小さく抑えることができるとともに、1300℃以下の低温域での降温過程ではチタン酸アルミが分解して熱膨張係数の大きなアルミナ相とチタニア相ができるため、さらにクラック発生の抑制効果が期待されます。結果は、レーザを用いて溶融させると冷却過程で生成したチタニア相が成長してもろくなりそこにわずかなクラックが発生しました。一方、プラズマ溶射を使った場合でも一部のチタン酸アルミは分解するものの、適度な気孔が皮膜に形成されているため、クラックの発生は抑制されました。気孔の高次な構造制御により、強度の高い、クラックのないセラミックス溶融皮膜をもろい材料やや わらかい材料に付与することができると考えられます。

―どんなところが評価されたと思われますか。

 他大学の先生方からも面白い研究だと言っていただきました。結果の成功・不成功に関係なく、着眼点のユニークさも含めて研究内容そのものが評価されたと思います。発表に関しては事前に上野先生からアドバイスをいただき、自分の言葉できちんと説明できるように練習しました。当日は早口にならないよう、会場の反応を見て、ちゃんと伝わっているかを意識しながら発表しました。想定外の質問がきましたが、それも上手く答えることができたので、プレゼンテーションの内容も評価されたのかなと思います。

新しい技術や道具を生み出す化学の無限の可能性に魅力を感じます

―どんなところが化学の魅力だと思いますか。

 中学生の時から工学系に進もうと考えていましたが、高校でデジタルエレクトロニクスに興味を持ち、医療系も面白そうだと思ったのがきっかけで化学の道に進みました。でも、大学で学ぶうちに医療以外の分野もやってみたいと思うようになりました。化学と言っても、無機、有機、高分子など扱う物質が変われば実験方法も違うし、いろいろなことに挑戦できるのが化学の魅力でもあります。そもそも物質の元になるのは原子・分子であり、その性質を化学で解明することで、機械や建築などに使う様々な材料をつくることができるわけです。化学は全ての分野に関わっていると言えます。新しい技術や道具を生み出すための重要な役割を担っている化学の無限の可能性に魅力を感じます。

―今後の目標をお聞かせください。

 違う材料も試しながら、クラックができない皮膜をつくることが一番の目標です。実験を通して、組織と構造の形成原理、クラック発生の抑制メカニズムについても解明したいと思います。企業との共同研究なので、常に結果を求められ大変なこともありますが、やりがいを感じています。

―後輩たちにメッセージをお願いします。

 学部4年の時に同じ研究室の先輩を見ていて、自分も大学院に進学したいと思いました。大学院ではより専門的な研究に携わることができます。授業も難しく高度な内容になりますが、研究者としての意識が高い仲間がいる環境の中で、自分自身も成長することができます。将来、やりたい仕事に就ける可能性が高いのも大学院のメリット。研究への意欲があるなら、大学院進学をお勧めします。

―ありがとうございました。今後の活躍も期待しています。

 

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