第一線で活躍するプロの建築家による講評会が行われ
最優秀作品1点にJIA福島地域会賞が贈られました

 『平成28年度日本大学工学部建築学科卒業設計作品展』が、2月22日(水)から24日(金)に、郡山駅前のビッグアイ6階市民ふれあいプラザにて開催されました。学内審査によって選ばれた8作品が展示され、一般の方々にも広く学修成果をご覧いただくとともに、初日には、11名のJIA(公益社団法人 日本建築家協会)福島地域会会員建築家の方々による講評会も行われました。今年度より、最も優れた作品1点にJIA福島地域会賞が贈られることになり、より一層闘志を燃やす学生たち。緊張感が張り詰める中、白熱したプレゼンテーションが繰り広げられました。学生たちの奮闘ぶりとともに、展示された8作品について詳しく紹介します。

『未完園 ―まちのこれからを刻む―』  桐井 翼さん

 観光開発によって魅力を失った湯河原町を取り上げ、住民が気軽に立ち寄れる場であることを第一として、周辺のランドスケープを取り入れた設計を考案。歴史と主要作物を手掛かりに、町民の作品を展示し残していく記念館、中学校卒業記念植樹の蜜柑畑を計画した。川沿い一帯に蜜柑が茂るランドスケープはこの町の特徴となっている。

『保原駅・前 ―文化と生業がつくる連続体―』 長谷川 周平さん

 魅力が分かりづらくなった地域を対象に、地域の生業や文化の集結点となり、人の賑わいを創出するための建築を提案した。保原駅周辺にある青果市場を駅前に集約し利便性の向上を図るとともに、市場で働く人や通勤通学する人々を生業と文化の展示品として機能させる。地域の生活行為や文化によって建築が彩られるよう設計した。

『LINE ―動くプラットホーム―』  作山 和輝さん

 山間にある廃線沿いの地域に着目し、公共的な交通手段が断たれて切り離されてしまった町や人との関係を再構築できるような動的な仕掛けを提案した。JR岩泉線廃線によって機能を失った茂市駅・浅内駅・岩泉駅の駅舎を改修・増築し、走る目的を失った電車を移動建築として再び走らせることで、フレキシブルなまちへの展開を図る。

『土地の楔 ―木を通した循環型システムの構造体―』 眞船 峻さん

 木材の循環を中心とした産業である『製材所』を計画し、豊富な森林資源を活用する地場産業を生み出すことを提案した。船津川上流の三代地区に建てた製材所が、製材前の林業、製材後の事務所建築といった建築的行為の原動力となる。木材の利用から、中山間地における環境的な循環システムの拠点になることを目指している。

『裏かるいさわ ―表と共存する手がかり―』  神子 小百合さん

 観光地『軽井沢町』を取り上げ、観光とまち、来訪者と地元住民が共存する地域となるような、奥行きのある空間を創出させることで、これからの観光地の在り方を提案。観光地化された表通りに対して、良い距離感を持って地域住民の生活空間を挿入し、『裏軽井沢』を形成した。空き地利用や土地の変転・建築の可変性も考慮している。

『犬の散歩にZ軸を ―バイリンガルな建築―』 佐々木 浩祐さん

 犬と飼い主が共存し、犬との散歩を充実できる建築・都市空間を計画・設計した。犬も入れる公民館と犬のケア施設の複合施設、犬の病院を主とする複合施設、ドッグランの3つの建築を歩行圏内に分散配置する。犬の散歩というアクティビティな延長線上に人々が集まることで、地域の賑わいを創出させる。

『トジルヲヒラク ―まちと人に寄り添う余白―』 折笠 美羽さん

 社会から隔離された高齢者施設を高齢者の『収容の場』から『生活の場』へ移行し、まちの福祉拠点となる施設を提案。閉鎖された空間に穴を開けることで、地域にとっても身近な施設になる。自由に空間を操作できる可動式間仕切りなどで持続可能な建築を目指す。また、路線バス機能を組み込むことで、高齢者の活動を多様にした。

『遺言ノ家 ―じいちゃんと考える住宅改修の選択肢―』 遠藤 麻衣さん

 大工を生業とする祖父の意向を丁寧に汲み取るプロセスを踏みながら、祖母のための住宅改修の計画・設計を考えた。人生の多くを過ごす住宅に刻まれてきた思い出に着目し、改修によって、その先にも記憶が生き続けることできるよう、『祖母が家族と暮らす家』、『祖母が元気に暮らす家』、『祖母に介護が必要になった時の家』を提案した。
 第一線で活躍するプロの建築家からの厳しい意見や鋭い質問を受けながらも、懸命に自分の思いを伝えようとする学生たち。また、違った角度から建築としての良さや欠点を指摘していただき、改めて建築の奥の深さや可能性を認識していました。数多くの貴重なアドバイスは、学生たちにとって大きな財産になったことでしょう。

 各作品のプレゼンテーションと講評が終了したのち、公開審査が行われました。作品に対して審査員がどのような視点で評価しているのか、学生も真剣に耳を傾けていました。今年度は社会性や問題意識の高い作品が多く、全体的にレベルが高いという評価で、一つひとつの作品の魅力を審査員自らが熱く語る場面もありました。様々な意見を踏まえたうえで、最後は挙手による投票により最優秀作品1点が決定。最多票を獲得した、作山さんの『LINE ―動くプラットホーム―』が見事にJIA福島地域会賞に選ばれました。受賞した作山さんは、「プロの目で見て評価されたことを、素直に嬉しく思います。褒めていただいところもありますが、今回の作品では表現しきれず厳しくご指摘いただいた点を重視し、今後に活かしていきたいと思います」と満面の笑顔で喜びを噛みしめていました。
 今年度より、学生を表彰することになった経緯について、JIA福島地域会会長で工学部の非常勤講師としてご指導いただいている阿部直人先生(写真右)にお話を伺いました。
 「これまでも、JIA会員による講評会を開催していましたが、我々も学生の皆さんに対してきちんと評価する責任があると感じ、今年度より本格的な審査を行い、選ばれた卒業設計作品を最優秀作品賞として顕彰することにしました。私は非常勤講師として学内審査にも携わっていますが、この審査に係るJIA会員には学内審査の結果を伝えず、先入観なく作品を見てもらいました。土俵が違うために評価が異なったかもしれませんが、より社会に、現場に近い立場からの有意義なメッセージになったことでしょう。設計という仕事を通して社会に貢献できる人材を育てることが我々の使命でもあります。学生の皆さんに、こうした場を体験することで、設計の面白さや魅力、やりがいや厳しさを感じていただき、ぜひ将来の仕事として設計の道に進んでほしいと願っています。」
 この場をお借りしまして、審査に携わっていただきました、JIA会員の皆様に厚く御礼申し上げます。
 学生の皆さんは、4年間の集大成としての卒業設計で、思う存分、力を発揮されたことと思います。それぞれ進む道は違うかもしれませんが、培った経験を糧に益々活躍されますことを祈念いたします。