海外の魅力ある都市の在り方を
福島のまちづくりに活かすために

市岡先生image001日本大学では、学術の研究、学術の国際交流並びに大学の発展に資するため、専任教職員を海外に派遣する制度を設けています。建築学科の市岡綾子専任講師は、2014年3月から約1年間、海外派遣研究員として海外に滞在し研究活動に従事されました。その内容や成果について、市岡先生に詳しくお話を伺いました。

―約1年間の海外研修における、その目的についてお聞かせください。

 東日本大震災以降、復興やまちづくりに携わっていく中で、そのまちに住み続けるためには愛着を持つことが大切だと感じました。世界には魅力があると言われる都市がたくさんありますが、なぜそう言われるのか、何が魅力なのかを自分の目で確かめ、愛着の持てるまちづくりに役立てることが一番の目的でした。滞在先に選んだのはOECD(経済協力開発機構)が報告したコンパクトシティ先進5都市に選ばれたカナダのバンクーバー、911以降復興を遂げたアメリカのニューヨーク、歴史とデザインを融合させているイギリスのロンドンです。それぞれの都市で一市民としてそのまちに住み、市民生活を体験しながらコミュニティの在り方や考え方を調査しました。

―それぞれの都市に滞在してどのようなことがわかりましたか。

911以降、危険なまちにならないようにさまざまな対策が取られてきたニューヨークは、きれいで安全なまちへと変貌していました。美化活動に力を入れることでイメージアップが図れると同時に、その仕事に従事する人材の雇用にもなるという点では、単純ですが付加価値につながる効果的な対策だと言えます。

ロンドンは経済的に発展しているだけでなく、文化的にも充実しているまちでした。ほとんどの博市岡先生image002物館・美術館が無料で入館できるので、その中のカフェもよく利用しましたが、女性が一人でも気兼ねなく行けて違和感のない場所というのは貴重です。その人にとって居心地がよいと感じられる場所があれば愛着につながる要素になり得ます。

誰かとつながることのできるネットワークも大事なファクターです。バンクーバーは移民が多いまちですが、コミュニティを維持するために国ごとのフェアを開催するなど、いわば『県人会』のような結び付きを大切にしていました。また、北米は歴史が浅い国ですが、だからこそ歴史を重要だと考え、身近なレベルであってもまちのアイデンティティを感じる大切なものであれば維持し続けるシステムを確立しています。日本の地方都市においても身近にある魅力を発見し、まちの資源として共有していくことで、まちの発展につながるのではないでしょうか。

―建築の魅力とは何ですか。

建築は、 人間が生きる上で重要な『衣食住』の一つを担っています。すべてがオリジナルであり、同じものでも使う人によって、また季節や時間によってもその役割や良さも変わってきます。市岡先生image003そこが建築の面白さであり魅力だと思います。建築物単体でも集合体のまちでも答えは一つでなく、白黒では決められないところが建築の醍醐味とも言えるでしょう。だからこそ本質に向き合えるように自分自身を磨いていくことが大切です。

建築は生活全般に関わることになりますから、学生の皆さんも日々の生活を充実させて何事にも関心を持ってほしいと思います。素敵だと思えることをたくさんピックアップできる感度の良いアンテナを張り巡らせながら生活してください。

―今後の目標についてお聞かせください。

市岡先生image004 一つは、これからも変わらず学生の皆さんがここで学んで良かったと思えるような環境づくりと教育を実践していきたいと思っています。

研究の面では、こうして福島県の建築に携わっている者として、子どもたちにこのまちの良さを伝承しながら、住み続けたいと思えるまちづくりを支援していきたいと考えています。特に須賀川については、その場所で震災を経験したこともあり運命的なものを感じています。このまちに寄り添っていくことをライフワークとして、より一層研究活動に励みたいと思います。

―ありがとうございました。今後益々のご活躍を祈念申し上げます。