世界最先端の研究「人工光合成」の技術開発に貢献

 この度、日本大学工学部生命応用化学科の加藤隆二教授が2011年光化学協会賞を受賞しました。光化学協会とは、光化学、光技術領域の基盤研究から幅広い応用技術を担う専門家集団および光化学の情報発信基地であり、1,000人以上の会員で形成されています。
 光化学協会賞は年1回行われる光化学討論会の中で、光化学の研究において顕著な業績をあげた会員に対し贈られる栄誉ある賞です。加藤教授に受賞の喜びの声とともに、最先端の光化学の研究についてお話を伺いました。

 

―光化学協会賞受賞おめでとうございます。受賞された研究についてお聞かせください

 ありがとうございます。賞をいただいた「過渡吸収分光法を駆使した光エネルギー変換反応の機構解明に関する研究」は、本学に赴任する前に勤務していた独立行政法人産業技術総合研究所で、約10年取り組んできた研究です。石油や石炭などのエネルギー資源はいずれ枯渇します。それに替わるものとして、再生可能エネルギーによる発電システムへの移行が進んでいるわけですが、現在の技術だけでは電力を充分に供給することは難しい状況です。そこで、工学技術の切り札として注目されているのが「人工光合成」なのです。自然界で行われている光合成を人工的に行い、太陽光のエネルギーを化学エネルギーに変換することを目指しています。現在、私は世界中で活発に進められている人工光合成に関する研究の中で、光エネルギー変換時の反応がどのように進んでいるのかを探る研究を行っています。

 

―どのようにして、エネルギー変換の反応を観察しているのですか

 パルスレーザーで試料に瞬間的に光を照射して光吸収を測定する「過渡吸収分光法」を使っています。わかりやすく言えば、化学反応をパラパラ漫画のようなアニメーションで見ることができる方法です。光を当てた時の色の時間変化を観察していきます。どのような反応が起こるのかを瞬間的に捉えることができ、速くてしかも非常にわかりやすいという特長があります。
 こうした実験結果を踏まえて、こうしたら効率良く発電できるのではないか、このように活用したらどうだろうかというような指導原理を提案しています。

 

―どんなところがこの研究の魅力ですか

 人類のために、絶対に取り組まなければならない研究に携われることが一番の魅力です。世界が注目する最先端技術の開発ですからやりがいがありますし、その学際領域に自分も身を置きながら、一緒に未来に進んでいる感じが楽しいですね。
 もともと、化学反応がどのように起こるのかということに興味を抱いて進んだ基礎物理化学の道。偶然に光化学の研究をすることにはなりましたが、興味の方向はずっと変わってはいません。しかし、もっと現実に役立つ技術を開発したいという気持ちが強くなりました。そうして出会ったのが人工光合成でした。基礎化学で導いた結果を活かして新しい技術に応用する―こうした研究成果が評価され、今回の受賞にもつながったのだと思います。

 

―今後の目標についてお聞かせください

 “種から育てる研究”に挑戦することです。誰も考えたことのない人工光合成の原理という種を、研究という肥料で育てながら構築し、世の中の役に立つ新種の花を咲かせる―という目標は掲げています。
 現在取り組んでいるのは、●色素増感太陽電池の反応機能の解明とデバイス応用●有機薄膜太陽電池の動作原理の解明●光触媒材料の機能発現機構の解明 などの研究です。次世代技術の開発を当面の目標として、国内の研究所、大学、企業、そしてオランダ、オーストラリア、シンガポールなど海外の研究者たちとも共同で研究を進めています。

 

―最後に、化学の道を志す学生たちにメッセージをお願いします

 化学の勉強は難しいと思っている人が多いと思いますが、化学“研究”は非常に面白いです。「化学って、こんなに楽しんだ!」ということを是非知ってほしいですね。それには、勉強の延長線上に研究があるのではなく、研究のためにこの勉強をやっているのだと考えてください。ノーベル賞を受賞した研究であっても、最初は誰も見向きもしない地味な研究だったはずです。研究者たちの地道な努力が実を結び、いつしか最先端の研究として脚光を浴びるようになっていくのです。皆さんも、好奇心の種と、“できる”というプラス思考を持ち、化学の基礎をしっかり身につけながら、化学の楽しさを存分に味わってください。

 

―ありがとうございました

 

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