膝関節音を聞くことで早期診断、予知・予防を可能にする
診断計測支援システムの開発研究が高く評価される

 7月27日(土)に開催された第2回福島テックプラングランプリ(主催・運営:株式会社リバネス)において、機械工学科長尾光雄教授が発表した『関節音から運動器症候群を予知・予防し健康でアクティブな社会を実現する』が企業賞(菊池製作所賞)を受賞しました。本コンテストは、株式会社リバネスと福島県が共に推進している福島県リーディング起業家創出事業の一環として、大学教員等の研究シーズと企業をマッチングさせ社会実装するためのイベントです。今年は、県内外の大学や事業者から計20チームのエントリーがあり、パートナー企業およびコンソーシアム構成機関による選考を経て、9チームのファイナリストが決定。最終選考会ではプレゼンテーションを行い、10名の審査員による審査の結果、8つの企業賞と最優秀賞が選出されました。長尾教授のプランは、パッション、ビジョン、そしてテクノロジーを併せ持ち、「科学技術の発展と地球貢献を実現する」ものとして、特に優れていたと評価され企業賞に輝きました。
 長尾教授に喜びの声とともに発表されたプランについて詳しくお話を伺いました。

歩ける“からだづくり”は、予知・予防で実現できる!
実現性の高いプランに企業も大注目

―企業賞受賞おめでとうございます。感想をお聞かせください。

 私の講演内容を聴いて興味を持ってくださった企業が何社もあり、その中でも、数多くの大学・研究機関との共同ベンチャーを手掛けている菊池製作所から、是非実用化したいとの要請をいただきました。大変光栄なことであり、自分の研究の価値を客観的に評価していただけたのは、大変貴重だと思っています。企業が審査するコンテストであることに意義を感じ、実際に研究開発を進める企業から様々なアドバイスをいただけることを期待して参加しました。自分の持っている技術を発信できる絶好の機会でもあります。コンテストを通して、企業のものづくりの考え方や、どういう方向性で進めていけばよいかを示していただけたので大変勉強になりました。

―プランについて詳しくご説明いただけますか。

 近年、人の寿命は延伸傾向にあり、生涯現役90年から100年時代を迎えています。そのような背景を踏まえ、健康でアクティブな社会を実現する対策が国家的重要施策の柱に挙げられています。特に推進されているのが、「歩けるー身体づくり」です。しかし、加齢や高齢になれば運動器機能が衰退するため、運動器症候群の予知・予防や機能回復は必須になります。中でも、膝関節の関節面軟骨がすり減ることで膝関節が変形する変形性膝関節症(膝OA)はその代表的な疾患です。早期診断による治療によって、その後の歩行やQOL(クオリティ オブ ライフ)に大きく影響するものと考えられます。そこで、我々の研究チーム『J-Acoustics』では、変形性膝関節症計測診断支援システムの構築に関わる研究を進めています。センサを使って健常な膝関節と変形性膝関節症の膝関節を計測し、これらを特徴付ける信号を数値化することで、変形性膝関節症の診断方法の確立を目指します。つまり、膝関節音を聞くことで早期に診断し、予知・予防を可能にする研究です。膝関節屈伸センサの開発と計測システム、そして診断エビデンスの構築と普及を近々の課題として います。

―どのような点が評価されたと思われますか。

 審査基準として、①新規性 ②実現可能性 ③世界を変えそうか ④パッション の4つの項目が挙げられています。学会の研究発表とは違い、こういう技術を持っているから貢献できるとか、将来どう実現したいかといったビジョンを打ち出すことが重要視されます。ファイナリスト決定までに事前審査があり、本番と同じようにスカイプを使ったプレゼンテーションがありましたが、そうしたビジョンの具体性と魅力を専門外の人にもわかるように伝えるためのアドバイスを受けました。最終選考会には地域開発パートナー企業の他に、製薬会社や化学機器メーカーなどの企業、NEDOや大学といった研究機関も会場に訪れていました。学会さながらの学術的なプレゼンテーションもありましたが、私の発表は一般の方にも明瞭でわかりやすく共感を得られたのかもしれません。また、菊池製作所の菊池功社長(写真左)は福島県出身で、故郷に貢献したいという熱い思いがあり、製品化に対しても大変意欲的でした。その菊池社長がマッチングを切望されたということですから、このプランの実現性の高さも評価されたのではないでしょうか。

新しいものづくりに挑戦できるチャンスを生かしてほしい

―今後の目標についてお聞かせください。

 菊池製作所からは、「全面的に支援するので、アイディアを実行する中心的な立場に立ってプロジェクトを推し進めてほしい」という有難い言葉をいただいております。実際に製品化を進める企業の参入も決まりました。NUBIC(日本大学産官学連携知財センター)も特許活用を大いに推奨してくれています。大学発ベンチャー企業創出モデルとなるよう、私の持っているノウハウを投入し実用化を目指していきたいと思います。

―最後に学生たちにメッセージをお願いします。

 福島テックプラングランプリには中学生、高校生も参加しています。自分のアイディアに興味を持ってくれた方と新しいものづくりに挑戦したり、ベンチャー企業を立ち上げることも夢ではありません。若いうちに視野を広げることは大切です。これまでと違った見方ができれば、新たな発想が生まれ、将来発展する可能性も高まるでしょう。是非、学生諸君にもチャンスを生かして挑戦してほしいと思います。

―ありがとうございました。今後益々ご活躍されますことを祈念しております。

 

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