最先端の医工連携によるアプローチで人々を健康にする医療システム開発に挑む

2013%e9%85%92%e8%b0%b7%e5%85%88%e7%94%9fimage001 この度、電気電子工学科の酒谷薫教授は、大手化粧品メーカーの資生堂と共同で、ストレス状態を判定する小型診断システムを開発しました。

医学博士であり、工学博士でもある酒谷教授は、2002年から日本大学医学部脳神経外科に所属。2012年から工学部に赴任され、医学部でも教鞭を執りながら、次世代工学技術研究センターを拠点する統合生体医療工学研究室で、新たな医療機器開発に取り組んでいます。

 今年6月、酒谷教授はストレスについて学ぶ講演会を工学部にて行うとともに、7月には資生堂と共催で郡山市の東日本大震災の被災者等を対象とした『化粧療法セミナー』を開催しました。そこには、医学と工学の両面からのアプローチで、ストレスを抱えた女性たちを元気にしたいという酒谷教授の思いがあります。ストレス状態を測定する画期的なシステムの開発や工学部での取り組みについて、酒谷教授に詳しくお話を伺いました。

 

 

―先生はもともと日本大学医学部に所属されていましたが、なぜ工学部に来られることになったのですか。

 東日本大震災直後、診療のボランティアで南三陸に行ったことがきっかけで、その後も被災地のために何かお役に立ちたいと思っていました。そんな時、郡山にある工学部に臨床工学技士課程を設けるため、医学にも工学にも精通している教員を求めていると聞き、喜んで立候補した次第です。私自身、阪神大震災を経験していますから、震災でストレスを抱えている人々の気持ちが痛いほどわかります。被災地である福島のために尽力したいという思いで、工学部に参りました。

 

―開発されたストレス状態を判定する小型診断システムとはどのようなものですか。

2013%e9%85%92%e8%b0%b7%e5%85%88%e7%94%9fimage002 これまで、実際にストレス状態がどのくらいの度合いなのかを診断できるシステムはありませんでした。脳の障害の研究から、右脳と左脳のストレスに対する反応性の違いがあることはわかっていました。ストレスがあると前頭葉が働くのですが、右脳が強く反応すると心臓がドキドキしたり、肌荒れになったり、よりストレスを感じやすいのです。そこで、近赤外光を額の2か所に当て、前頭葉の左右の血流のバランスを測定することで、目に見えないストレス状態を数値化するシステ2013%e9%85%92%e8%b0%b7%e5%85%88%e7%94%9fimage003ムを開発しました。私は医学だけでなく、工学の研究にも取り組んでおり、光学的な生体計測機器やシステム開発を専門に研究してきました。光は体を通過しても害がないことやX線を使う機器より小型化できるので、移動も可能で応用範囲が広いというメリットがあります。今までにない、光を使って客観的にストレスを判定できるシステムということで、注目を集めるようになりました。

 

―先生は資生堂と共同で化粧セラピーのセミナーも行っているそうですが。

 10年ほど前から資生堂と共同でストレスに関する研究を始めました。化粧セラピーはリハビリや認知症に効果があるとされています。同様に、ストレス解消にも効果があるということが研究からもわかってきました。そこで、東日本大震災で目に見えないストレスを抱えている郡山の女性の方を元気にしたいと思い、資生堂と共催で7月から9月にかけて『化粧療法セミナー』を2013%e9%85%92%e8%b0%b7%e5%85%88%e7%94%9fimage004実施しました。化粧を体験した後に、診断システムを使って測定すると、どのくらいストレスが解消されたかがわかるのです。今後は、仮設住宅を訪問して『化粧療法』で少しでもストレスを緩和できるように支援したいと考えています。

 

 

―先生の研究が工学部にもさまざまな効果を生むと期待されていますが。

2013%e9%85%92%e8%b0%b7%e5%85%88%e7%94%9fimage005 これまでも、次世代工学技術研究センターは医工連携プラットフォームの拠点として、日本にとどまらず、世界と連携して技術開発を進めてきました。さらに医学を専門とする技術者を内包することによって、ますます実践的で幅広い研究が展開されていくことになるでしょう。私自身が医工連携のようなものですから(笑)。
 また、日本大学工学部が推進する『ロハスの工学』においても、私の研究が大いに活きてくると思っています。ロハスとは『Lifestyles Of Health and Sustainability』の略語。工学部では、再生可能エネルギーなどの持続可能(Sustainability)な社会を構築するための研究が盛んに行われていますが、健康(Health)についての研究はそれほど進んでいなかったように思います。私は、東洋医学も研究していますが、東洋医学では半健康状態の未病(みびょう)を治して病気にならないようにするための予防をメインにしています。鍼灸やマッサージ、呼吸法や香りなどを使ったリラクゼーション、つまり養生法です。これからの医学は、病気になってから治すのではなく、病気にならないように予防するための医療機器やシステムの開発が必要になると思います。現代科学技術と伝統的な東洋医学を融合させた研究は、まさに『ロハスの工学』の健康分野において象徴的なテーマになるのではないでしょうか。

 

―今後の目標についてお聞かせください。

2013%e9%85%92%e8%b0%b7%e5%85%88%e7%94%9fimage006 医工連携はもちろん、産学連携にも力を入れていきたいと考えています。そのための産学連携研究室が工学部内に設置されました。福島県・東北地方の企業と連携を深め、地域の方々を元気にするための健康増進機器の開発に取り組んでいきます。そして、他学科との垣根を越えて、災害に強いまちづくりや高齢者のアクティブエイジングを支援する医療システムの確立を目指します。また、次世代を担う若者を育てていくことも私たちの使命です。医療工学に関心を持つ学生の教育にも力を注いでまいります。

 

―最後に学生たちにメッセージをお願いします。

 工学部では、2013年度より機械工学科と電気電子工学科に臨床工学技士課程を設置しました。教職課程のように選択できるのは、大学としては初めての試みです。医療機関はもとより、資格を持った人材が医療機器の開発を行うことは大きな意義があります。医療機器は高度な技術2013%e9%85%92%e8%b0%b7%e5%85%88%e7%94%9fimage007を必要とし、商品価値も高いことから、日本の大手電気機器メーカーも開発に乗り出している分野です。これからますますニーズも高まり、資格を持つことで将来の道が拡がり、就職も有利になっていくことは間違いありません。
 しかし、医療の本質は弱者に対する思いやりの心です。体の弱い人を助けたい、病いに悩んでいる人を救いたい、そんなモチベーションを持つ人に携わってほしいと思います。やりがいがあり、生きがいを感じることのできる仕事ですから、高い志を持って臨んでください。

 

―ありがとうございました。今後ますますのご活躍を期待しております。

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