地球温暖化を防止するためにCO吸収の新技術開発に挑む

 将来、世界の科学・技術をリードすることが期待される若手、女性、地域の研究者への研究支援及び「新成長戦略」に掲げられたグリーン・イノベーション、ライフ・イノベーションの推進を目的とした、2010年度独立行政法人日本学術振興会(JSPS)公募の「最先端・次世代研究開発支援プログラム」に、生命応用化学科の児玉大輔准教授の研究課題が採択されました。採択率5.8%という狭き門を突破した研究課題「イオン液体を利用した二酸化炭素物理吸収プロセスの構築」は、CO₂削減につながる有効的な技術として大きな期待が寄せられています。
 世界最先端の研究に挑む児玉准教授に、その意気込みを語っていただきました。

イオン液体で環境調和型プロセスを構築

 

―「最先端・次世代研究開発支援プログラム」に採択された研究課題について、詳しくお話いただけますか。

 研究課題「イオン液体を利用した二酸化炭素物理吸収プロセスの構築」とは、火力発電所などの大規模な施設から排出される二酸化炭素を効率良く分離回収し、隔離・貯蔵するための新しい技術開発であり、地球温暖化対策技術の一つとしてここ数年研究を進めてきたものです。
 現在活用されている技術では、多大な熱エネルギーを要するというデメリットがあります。例えば、アミン法と呼ばれる化学吸収法では、二酸化炭素を吸収した溶液を加熱してCO₂を分離するため、消費する熱エネルギーコストが問題になっています。そこで、着目したのが“イオン液体”です。イオン液体は、耐熱性があり、圧力を加減するだけで二酸化炭素のみを取り出せ、容易に再利用できるという特長があります。高圧下でも、駆動可能なイオン液体をCO₂吸収液として利用できれば、熱エネルギーコストを大幅に削減できます。

 

―イオン液体とはどういう物質ですか。

 イオン液体は、陽イオンと陰イオンのみからなる常温溶融塩です。常温時に固体である食塩とは異なり、液体である温度範囲が広く、“揮発しない”“燃えない”“劣化しない”という特性があり、環境に調和する溶媒としても最適なのです。また、太陽電池やリチウムイオン電池、潤滑剤など様々な用途で、その利用が期待されています。

世界に一つだけ!日本大学工学部オリジナル実験装置

 

―今回、採択されたことについてどう思われますか。

 実際、海外でも研究が進められていますが、国内での実績はほとんどありません。わが国として早急に取り組まなければならない課題だったことが、今回採択された理由の一つと考えられます。
 本研究室にあるイオン液体・二酸化炭素吸収実験装置は、この研究のために開発した世界に1台しかない日本大学工学部オリジナルの装置です。大きな装置であれば、使用する試料の量も多くなります。実験コスト削減のためにも、装置を小型化する必要がありました。また、イオン液体自体のコストも決して安価ではありません。本研究室では、独自に合成したイオン液体を使って実験を行っています。少ない試料で、既存の装置より精度の高い実験を行うことができるようになり、効率も良くなりました。
 このように、実験設備、実験方法も独創的であることが、採択につながったのではないでしょうか。

 

―研究の目標についてお聞かせください。

 本研究の目標は、安価でガス吸収特性に優れたイオン液体の合成と開発したイオン液体のCO₂吸収量を評価するとともに、イオン液体-CO₂熱力学物性推算モデルからガス吸収効果を明らかにし、イオン液体を利用した低コスト型の温室効果ガス吸収プロセスを実現することです。
 東日本大震災の影響で遅れていますが、国では福島県いわき市にある次世代の火力発電所(IGCC:石炭ガス化複合発電)から排出されるCO₂を分離回収し、いわき市勿来沖の枯渇したガス田に隔離・貯留する計画を進めています。CO₂を固定化する技術は5~10年以内の実用化を目指していますが、本研究の成果によって、さらにイオン液体の特性を活かした電気化学デバイス、化学反応溶媒や触媒としての利用など、高度で飛躍的な発展も期待できることから、ますます研究への意欲も高まっています。

 

―学生たちにメッセージをお願いします。

 本研究室の学生たちにとっては、最先端の研究に触れる絶好の機会。ここ工学部で学んだ先輩として、後輩である学生たちには「自分たちもやればできる」という達成感を味わい、自信につなげてほしいと考えています。
 そのためにも、このプロジェクトを成功に導くよう、研究活動に取り組んでいきます。

 

―ありがとうございました。今後のご活躍を期待しています。