地球環境の把握につながる氷況観測に挑む

中村和樹先生インタビューEM-BIRDimage001 情報工学科の中村和樹准教授が開発に参画する氷況観測機『高機能型EM-BIRD』をヘリコプターに搭載しての初飛行が、3月3日に北海道サロマ湖及びオホーツク沿岸にて行われ、無事運用に成功いたしました。『高機能型EM-BIRD』は、JOGMEC(独立行政法人石油天然ガス・金属鉱物資源機構)の技術ソリューション事業『氷海開発を支援するための高精度氷況観測技術の開発』の一環として、JOGMECからの受託研究により本学をはじめ、北見工業大学、国立研究開発法人海上技術安全研究所、北日本港湾コンサルタント株式会社、東京大学が協力して開発した世界初の氷況観測機です。新たな観測技術確立への第一歩となり、地球環境を把握することにもつながる大きな成果と言えます。

 中村准教授にこの研究開発について詳しくお話を伺いました。

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―氷況観測機『高機能型EM-BIRD』はどのような目的で開発されたのでしょうか。

 地下資源が豊富な北極圏での石油天然ガスの探鉱・開発への取り組みが活発化しつつある中、安全で効率的な開発を行うためには、氷況を把握できる観測技術が必要不可欠です。そこで、氷海開発を支援するJOGMECは、航空機搭載型電磁誘導センサ『高機能型EM-BIRD』の開発の乗り出したのです。これは氷の厚さ、積雪の深さや表面の形状などが計測できるセンサで、同機をヘリコプターから吊下して海氷上を飛行することで、より安全で高精度に観測することができ、極地での観測が容易になります。将来的には衛星に搭載し、地球全域の観測を可能にすることが目標です。

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―中村准教授はこの開発にどのように関わっているのですか。

 私は主に、氷上での現場観測を行い、衛星データや『高機能型EM-BIRD』の計測データと照中村和樹先生インタビューimage003合して、同機の精度を検証する役目を担っています。氷況データベースシステムの構築にもつながる研究です。今回の飛行には本学と北見工業大学、海上技術安全研究所、北日本港湾コンサルタント株式会社、朝日航洋株式会社が参加しました。氷上にて『高機能型EM-BIRD』の精度を検証するための必要なデータも取得することができ、現在検証を行っています。 
 また、科研費に採択された『薄い一年氷の表層部における電気的特性の研究』(課題番号26340013)にも取り組んでおり、同時期に氷上観測を実施しました。

 

―科研費に採択された研究についても、ご説明いただけますか。

 人工衛星に搭載したSAR(合成開口レーダ)を用いて海氷の厚さ情報を抽出する場合、海氷の誘電率を正確に知る必要があります。氷には冬期にできて春先には融けてしまう一年氷と、夏期も融けずに冬期を迎え成長していく多年氷があります。一年氷は薄いと塩分が多く、誘電率中村和樹先生インタビューimage004も高くなります。そのため正確な誘電率を知ることで、氷の厚さもわかるというわけです。これまでは、海氷を特殊なドリル等により直接採取して塩分濃度を計測し、その測定結果から誘電率を計算して求めていました。最近では可搬性に優れたネットワークアナライザが利用できるようになり、これを用いて現場観測における誘電率の直接計測を実施して、効率的な計測方法やシステム構築の研究を進めています。最終的には、SARデータから求められる海氷の厚さ情報の精度向上を図る研究へと応用していきます。

 

―どんなところが研究の魅力ですか。

 “雪氷の面積=地球温暖化の指標”であり、雪氷の状況を知ることで地球の気候がどう変動しているかを知ることができます。白色をしている雪氷は太陽の光を反射するため、海洋が熱を吸収せず温暖化の抑制にもなります。とくに陸域の雪や氷が融けて海水が増えれば、日本も沈没してしまうかもしれません。氷況観測は地球全体に関わる大きな研究テーマだと考えます。中村和樹先生インタビューimage005 この研究に興味を持ったのは、大学1年のとき、研究室の先生に北海道サロマ湖に連れて行かれたのが発端でした。なぜ氷の色が違うのだろう、なぜ計測するのだろうといった疑問から漠然と興味を持つようになり、いつしか自ら進んでデータを取りに行くようになっていました。氷は暖かいと融けてしまうように、状態が変わりやすく計測が難しい面を持っていますが、だからこそますます興味が湧いてくる のかもしれません。
 凍った湖に立つと、自分が今まで見たことのない真っ白な景色が目の前に広がっています。そこにこそ真実があるのだと感じるのです。技術は進歩し、空から地球の今を手に取るようにわかったとしても、実際にその場で見ないとわからないこともたくさんあります。学生の皆さんにも机上でイメージするだけでなく、真実を探求するために自分の目で確かめることを大事にしてほしいと思います。

 

―今後の目標についてお聞かせください。

『高機能型EM-BIRD』や『海氷の電気的特性』を使った氷況を把握するための方法を提案し、その評価を通して地球の気候変動の理解に役立つよう、雪氷分野からアプローチする研究に尽力していきたいと思います。

 

―ありがとうございました。今後益々のご活躍を祈念いたします。

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