浦部准教授と浦部研究室が携わる
県内の質の高い2つの建築プロジェクトが
グッドデザイン賞ダブル受賞

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 建築学科浦部智義准教授(写真前列中央)と浦部研究室が数年前から計画・設計・運営に携わっている2つの建築プロジェクト『木質構法を用いた復興住宅モデル:小規模コミュニティ型復興住宅技術モデル群-希望ヶ丘プロジェクト-』と『中山間地における集会施設とまちづくり活動:地形舞台-中山間地過疎地域に寄り添う集落づくり拠点-』が、2015年度グッドデザイン賞を受賞しました。

 浦部智義准教授と浦部研究室は、同賞を2012年にも金賞で受賞しており、3年ぶりの受賞になります。2つのプロジェクトは共に福島県内のもので、前者は、福島の復興はもとより、建築における木材利用や都市の小規模開発とも深く関係する建築群のあり方、後者は、建築ストック利用や地域のコミュニティと深く関係する建築とまちづくり活動を評価されての受賞です。

 浦部准教授に受賞の喜びの声とともに、プロジェクトの詳細についてお話を伺いました。

―この度はグッドデザイン賞ダブル受賞おめでとうございます。感想をお聞かせください。

 この2つのプロジェクトは、研究室の研究・活動のテーマの主軸の1つである、人と建築、人と人をつなげる施設を実践させて頂いたもので、一緒に苦労してくれた研究室の学生さん達と共に大変喜んでいます。また、同時に2つも受賞できたことは身に余る光栄です。後者の過疎地における暮らしやそこでの建築のあり方の計画や実践、つまり、ただ元に戻すのではなく伝統的な良さを大切にしながら現代的な要素を取り込み、日常的な集落の拠点として生まれ変わらせた古民家の改修や、高齢・過疎化に対応した寄り付きやすい社会教育施設づくりの実践は、復興過程でも避けて通れない問題かも知れず、前者のプロジェクトと深く関係しているとも言えます。実際、被災地の一部では急速に高齢・過疎化が進むことも予想され、そう言った意味では、この2つのプロジェクトは深く関係しているとも言えます。

 前者は、県産材利用や温熱環境測定なども行っており、かつて計画・設計にかかわらせて頂いた「ロハスの家」の外部への展開、また後者は、特に古民家を改修し再生してサスティナブルな地域づくりの活動を行っているという点で、工学部の研究・教育のコンセプトである「ロハスの工学」にも幾らか貢献できたかなと感じております。

グッドデザイン賞2015image003グッドデザイン賞2015image002 2つのプロジェクトの模型とパネルの展示風景
     
(上段:小規模コミュニティ型復興住宅技術モデル群、下段:地形舞台)
 

―作品について詳しくお聞かせいただけますか。
 避難者の方々が元の住まいに戻ることも含めて、住まい方の選択肢を広げることや、木造仮設住宅の再利用を想定して始まったのが、前者の小規模コミュニティ型復興住宅技術モデル群のプロジェクトでした。用途としては、福島の復興に向けた活動のプラットフォームを想定してつくられ、実際の使われ方としても復興に向けて、また県内外との協働プロジェクトなどのワークショップなど活動拠点としても使われています。
 ですので、もちろん主たるコンセプトは、木質構法を用いた復興住宅モデルなのですが、その建築群の配置やプランニングによって、小規模なコミュニティのあり方を建築として示しています。建築としては、敷地を分割して分棟とし各々に距離を保ちながらも、軒高やデッキのレベルをある程度揃えるなど、中庭に対する働き掛けによって棟間の関係性をつくり出しています。また、大通りに対して開放性が高い棟を配置し奥行き感を出し、通りに対して木仕上げを見せることも意識しています。

グッドデザイン賞2015image005グッドデザイン賞2015image004木質構法を用いた復興住宅モデル:小規模コミュニティ型復興住宅技術モデル群-希望ヶ丘プロジェクト-の俯瞰的な写真(左)と4棟の配置図(右)

 現代的なつながりを意識して、無理に統一することなく各棟の構法なども含めて自由度を保ちながら一体感を醸し出した結果、復興住宅のモデル群としてのみならず、空き地に対応した、まち中の小規模開発としても意味のあるプロジェクトになったと思います。敷地も4分割されており、今回もそうだったのですが、順次の建設も可能な都市におけるミニ開発の例としても捉えられます。また、この建築群を住宅モデルの集合体としてだけでなく福祉や社会的な施設として見ることもできるかも知れません。

グッドデザイン賞2015image007グッドデザイン賞2015image006
左図:交差点側から奥行きのある中庭を見る 右図:室内でのワークショップの風景

グッドデザイン賞2015image008希望ヶ丘のまち中に建つ建築群は、交差点や大通りに対する働き掛けも意識している

グッドデザイン賞2015image009 後者の『地形舞台』は、福島県の中山間地天栄村湯本地区にある築百数十年を超えて空き家となっていた茅葺の古民家を改修・用途変更して、日常的にも気軽に集落の人が集まる場所・舞台に再生したものです。集落では、「智恵子邸」と呼ばれている古民家を、背景や客席となる斜面と庭による「舞台」、間仕切りを取り払いシンプルで広い平面とした約10畳の「土間」、住人の記憶を留める居心地のよい2間の「座敷」からなる施設です。一言で言えば、梁や柱など構造も工夫をして、人が寄り付き集まりやすい空間をつくったという感じでしょうか。

 また、この地区は茅葺屋根の家が多く残っていたので、景観を形成する上でも茅葺は重要な要素でしたが、茅葺を全てあらわしにして維持していくことは集落の人にとって負担となります。そこで、軒先の部分だけをある程度あらわしにして、人の目線では茅葺が見え意識できる様な工夫をしました。

 裏庭は隣接する宿屋さんの土地とつながっており、公共の施設と個人の私有地が一体となったタイトルの所以である『地形舞台』をつくりました。土地・建物の所有が行政と民間にまたがっており、官民が互いに協力し合って地域にとって良いものをつくるという、既成の枠組みを超えた取り組みとしても大きな意味があったと思っております。このプロジェクトは、文化・風土がにじみ出るよう東北らしさも大事にしながら、新たなプログラムを取り入れていることが特徴と言えるかも知れません。

 関連して、研究室ではここ数年『東北地方に現存する野外舞台建築・芝居小屋の活用実態と地域における役割に関する研究』と題した研究で、そのハード・ソフト両面の研究に取り組んだり、私が主査を務める日本建築学会文化施設小委員会でも『地方におけるこれからの公共文化施設』というテーマで委員会活動に取り組むなど、各地方のこの様な文化(ハード・ソフト)の利活用も含めたあり方には関心が高いといえるのではないでしょうか。

グッドデザイン賞2015image010研究室で企画した地形舞台での歌舞伎公演の風景


 
今後も地域活性化の拠点として、日常的な寄り合いの場はもとより、落語や神楽などの伝統芸能や文化財の催し物、また朝市が行われるなど、新規に観光客・外部の方々といった交流人口を取り込んだ新たな形のコミュニティ施設となり、山間地の魅力を発信する拠点として上手く機能してくれればと考えています。

 

―今後の目標についてお聞かせください。

 今回、賞を賜った2つのプロジェクト以降に計画や実践でかかわった過疎地域の建築『針生ほしっぱの家』は、寄り付き易い家のイメージを持ちながら、集落拠点となることを目指した公共的な施設です。その主たる目的の一つは、多雪地帯である南会津の冬の過酷な環境で暮らす単身高齢者の方々の冬期間の避難施設となることですが、日常的には地域交流ホールをはじめ施設全体を開放し気軽に立ち寄れる場として、時に中庭の舞台を利用した多様なイベントの運営も行うなど公民館的な使われ方も意識しています。また、都市部などとの人口交流の促進も視野に入れた施設です。

 受賞した希望ヶ丘プロジェクトでも1棟はその構法ですが、私たちのチームで「縦ログ」と名付けた構法で建つこの建築は、地場の杉材を地域内で製材・乾燥を行うなど、一貫した地産地消システムの中でつくられているのも特徴です。「縦ログ構法」とは、平積みが一般的なログ材の活用方法を変革し、無垢材の杉を縦に合わせた木質パネルを基本とする構法です。地場材の大量利用や地元大工が参加できるプレハブ化など、システムとしても地域経済への定着を考慮しており、また壁に用いた厚めの杉材パネルによって、環境的にも次世代省エネ基準の数値を意識しながら、内外の仕上げが木のあらわしの心地よい木質空間の実現を目指しています。

 この施設は、今回賞を賜った2つのプロジェクトの融合的な位置づけになる感じもしますが、木材の材料としての潜在性、建築としての拡張性を追求し、さらに地域に根付くシステムの構築を目指しました。今後も、この様に過疎・地方創生といった問題に対して、建築が出来る役割をソフト・ハード面から考えていきたいと思います。

 グッドデザイン賞2015image011集落のコミュニティの拠点となる施設で、中庭の舞台を利用している風景

―ありがとうございました。今後ますますご活躍されることを祈念いたします。

 

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グッドデザイン賞2015受賞作の詳細はこちら

『木質構法を用いた復興住宅モデル:小規模コミュニティ型復興住宅技術モデル群-希望ヶ丘プロジェクト-』

『中山間地における集会施設とまちづくり活動:地形舞台-中山間地過疎地域に寄り添う集落づくり拠点-』