高強度鉄筋コンクリート柱の耐震性能評価研究が高く評価される

 この度、堀川真之助教の博士論文(学位授与機関:日本大学)が、公益財団法人前田記念工学振興財団(The Maeda Engineering Foundation)に認められ、「平成29年度(第14回) 山田一宇賞(Yamada Kazuie Award)」を授与されました。
 前田記念工学振興財団は、我が国の工学(土木系、建築系)に関する学術の振興に寄与することを目的に設立され、毎年著しい成果を挙げた研究者に対する顕彰を目的として、応募された博士論文の中から独創性・新規性に富み、今後の学術振興に大きく寄与することが認められる論文に対して「山田一宇賞」を授与しています。本年度は、土木・建築系合わせて22件の応募があり5件に対して同賞が授与されております。堀川助教の論文、「時間依存性を考慮した高強度鉄筋コンクリート柱の弾塑性挙動に関する解析的研究(Doctoral Thesis ”Analytical Study on Time-dependent and Elasto-plastic Behaviors of High Strength Reinforced Concrete Columns”)」は、建築系での受賞となりました。
 6月2日(金)に世界貿易センタービル(東京都港区浜松町)にて授賞式が開催され、表彰状と目録が授与されました。堀川助教に受賞の喜びとともに、研究について詳しくお話を伺いました。

 

―「山田一宇賞」受賞おめでとうございます。感想をお聞かせください。

 このような素晴らしい賞をいただき、大変嬉しく思っております。人生の運を全て使いきってしまったのではないかと思うほど、身に余る光栄です。この論文は、修士課程から取り組み始め、博士課程とあわせて5年間の研究成果をまとめたものです。その間、周囲の方々には大変なご助力をいただきました。特に恩師には、ただただ感謝の言葉しかありません。この場をお借りしまして、厚く御礼申し上げます。

 

―研究内容について詳しくご説明いただけますか。

 建物も靴や衣服と同じように、長期間使用していくと、時間とともに当初保有していたさまざまな性能が低下していきます。しかし、建物がこの先どの程度の地震に耐えられるかといった、経年にともなう性能低下度合を適切に判断できる技術は未だ確立されていません。解決手段はいくつか考えられますが、実験ベースによる検証・検討は多くの制約条件が存在するため難航しています。そこで、時間に沿う性能低下を考慮した弾塑性挙動が予測できる数値解析モデルの構築に挑みました。

研究の全体像と学位論文の位置付け

 高強度鉄筋コンクリート柱は、コンクリートが固まる硬化過程において高い発熱を伴います。この発熱は、時間(材齢)とともにコンクリートに体積変化を生じさせ鉄筋拘束により柱内部にひび割れを生じさせます(若材齢挙動)。また、建設過程に目を移すと、上層階が建設されるにつれて、下層階の柱には高い軸方向力が導入されます。これにより、時間が経つにつれて体積が減少するクリープ現象が生じて柱の軸縮みが進行します(長期挙動)。それらを考慮して、高強度鉄筋コンクリート柱の短期弾塑性挙動までを統一的に評価する数値解析手法を提案し検証しました。その結果、地震を想定した水平力に対して、クリープが進行した柱は、クリープを無視した柱と比べて壊れ方に違いが生じることなどを明らかにしました。

 

―どのような点が評価されたと思われますか。

授賞式後の研究成果発表の様子

 高強度鉄筋コンクリート柱の若材齢期と長期・短期荷重時を経て終局時に至るまでの弾塑性挙動を統一的に解析する手法を開発したことが評価されました。これまでになく独自性に富んでいる点や萌芽性があると期待された点が、受賞につながったものと思います。

 

―今後の目標についてお聞かせください。

 今後は、検証実験を実施して、提案した手法の信頼性を高めるとともに、「この建物はあとどの程度の地震動に耐えられるか」といった住民の方が知りたい情報を提供できるようなシステムの構築を目指したいと考えています。構造系の技術者にとって、建物の一生を予測することは目標であり、夢でもあります。建物を少しでも長く使っていこうという傾向が強まる中で、建物の真の寿命がわかれば世の中にも大いに役立つことでしょう。研究を通して、長寿命化施策の構築・運用へ向けた一助になれればと考えています。

 

―建築を目指す後輩たちにメッセージをお願いします。

 授業だけではなく、建築現場を見たり、企業に出向いてインターンシップやアルバイトを経験したりして、自分は何をしたいのか、将来どうありたいのか、たくさん悩んでください。チャレンジすることを恐れずに、建築と自分とに向き合う時間をたくさんつくることが大切だと思います。皆さんの頑張りと活躍に期待しております。

 

―ありがとうございました。今後益々のご活躍を祈念申し上げます。

 

過去の受賞者ならびに公益財団法人前田記念工学振興財団の詳細についてはこちら