復興に貢献する近未来住宅に高い評価

 建築、環境、自然エネルギーなどのキーワードで繋がる人・団体で構成する「パッシブデザインコンペ実行委員会」主催による「パッシブデザインコンペ」が開催され、本学部建築学科浦部智義准教授を代表とする、エントリー名「ロハスの家」が見事大賞を受賞しました。
 住宅部門にエントリーした作品「二地域居住のためのロハスの家―仮設住宅からはじまるサスティナブルな計画―」は、浦部准教授と建築計画研究室が中心となって行ったロハスの家3号の基本計画・設計をベースに、3.11震災後の木造仮設住宅(この配置・設計にも浦部研究室が実働)から土地や木材の再利用や「元の住まい」と「仮設住宅地」の二地域居住を視野に入れた復興物語を組み合わせた計画案です。多くの著名な建築家が審査員に名を連ねるコンペで、「ロハスの家」がどのように評価されたのでしょうか。
 浦部准教授に受賞の喜びと受賞作品について詳しくお話を伺いました。

 

―パッシブデザインコンペ大賞受賞おめでとうございます。まずは感想をお聞かせください。

 ありがとうございます。このコンペは日本大学工学部の「ロハスの家」の研究プロジェクトを広く世の中に知ってもらえる絶好の機会だと思い応募しました。実は、震災後は研究室では福島県が公募した応急仮設住宅の計画・設計・建設に追われていたので、5月末までに応募案を提出できるかどうか微妙な状況でしたが、皆で励ましあいながら何とか間に合わせることができました。その甲斐あって、今回大賞を受賞できたことを大変嬉しく思います。「ロハスの家」の研究プロジェクトに携わる関係者の皆様にも大変喜んでいただけましたし、プロジェクトメンバーとして一つの責務を果たしたような気持ちで、正直ほっとしています。

 

ー「ロハスの家3号」はどんな家ですか。

「ロハスの家3号」は、再生可能エネルギーのみを利用したパッシブ住宅を目指しています。それらに加えて、応募案にもある様に食の自給を目指すことで、エネルギー面だけでなく生活面でもサスティナブルな復興モデルになり得ると考えています。
 太陽光発電や太陽熱収集システムはもちろん、地中熱を採取するクール&ヒートチューブを利用した冷暖房、水の熱容量の大きさを利用したウォーターウォールによる冷暖房、家の断面形状を生かした空気循環システムなど、さまざまな要素技術を統合して造られています。また、バタフライ屋根で得られた雨水を集水して貯水・処理まで行う水自給システムも組み込まれています。まさに太陽・風・雨などを利用した自然との共生を図ったパッシブ住宅です。

 

ー「ロハスの家3号」に「仮設住宅」をどのように組み合わせたのですか

 震災直後福島県では、1万4,000棟の応急仮設住宅を必要とされ、プレハブの仮設住宅だけでは間に合わない状況でした。そこで、福島県内の業者を対象に公募を行い木造を中心とした仮設住宅を造ることになりました。本研究室も日本ログハウス協会東北支部に計画・設計側で企画段階から協力し、公募案で高い評価を頂き500棟割り当てられました。ログハウスは、基本的に材木を積み重ねて造られる点に着目し、仮設住宅で終わるのではなく、建設資材を復興住宅に再利用することを大きな柱としました。現在取り組んでいるこの仮設住宅の木材をリサイクルした半復興住宅モデルとして、県産材をふんだんに使った木造の「ロハスの家3号」を見たてたわけです。「元の住まい」と「仮設住宅地」の二地域居住を視野に入れ、木材再利用・復興物語を組み合わせたたことで、「ロハスの家3号」は2020年のパッシブ住宅としての価値も加わりました。

パッシブデザインコンペ大賞受賞作品.pdf

 

ー大賞を受賞した要因は何だと思われますか

 最終審査に残った作品の中には、震災を意識したものはありませんでした。そうした中で、「脱原発」「復興」をキーワードにしたこの作品への注目度は高かったように感じます。建築デザインのコンペでは、どの様なテーマであっても最終的には建築デザイン面が問われることが多いのが普通です。「ロハスの家3号」はそういった面ではもう少し綿密なスタディーが必要だったかと思いますが、それよりも重要なテーマ性・社会性を持つ作品だったということでしょう。審査員からは「3.11以降のコンペとして、この視点を持ったことを評価したい」「コンペのアイデンティティになる作品」というようなコメントをいただきました。震災後の福島県の復興ストーリーの一つのあり方として非常に高く評価されたことが大賞につながったと考えられます。

 

ーこの賞は「ロハスの家」の研究プロジェクトにとってどんな意味がありますか

 本学部で行っている研究プロジェクトとして、学内だけで完結させるのではなく、広く一般の方々や異分野・同分野の専門家にも理解してもらうことが大事だと考えています。その意味で、多くの方にロハスの家の研究について、いくらかでも知ってもらえるきっかけに繋がったことは大きいと思います。
 また、今回は仮設住宅との組み合わせによって評価を得たように、何かをプラスすることによってその重要性や研究意義が増すことも再認識できた様な気がします。何が求められているのか、それを知るために、社会の意見や評価を得る機会を持つことで、同時に理解者を増やし、その結果、少しでも多くの賛同を得ることができれば、研究の展開の幅も広がり実現への可能性も膨らんでくるのではないでしょうか。そういった意味で、大賞を取ったことで、少しでもこの研究が注目されることになればと思います。

 

ー今後の目標についてお聞かせください

 一つは、福島県をどう復興させるかという問題に取り組んでいきたいと考えています。元に戻すだけではなく、エネルギー問題も含めて、20年、30年先のビジョンに今から着手していくことは大切だと考えています。さまざまなアイディアを組み合わせる柔軟な思考と対応で研究に従事しながら、「ロハスの家」の成果だけでなく、一つでも多くのアイディアを社会に還元できるように研究を重ねていきたいと考えています。
 研究プロジェクトに携わった学生さんたちも、今回の受賞によってパッシブ住宅の重要性を認識するとともに、自分たちがやってきたことに少し自信を持つことができたようです。こうした教育的な面での役割も果たしていきたいと思っています。

 

ーありがとうございました。今後ますますのご活躍を期待しています

 

今回の作品づくりに携わった大学院生にもお話を聞いてみました。

渡邉洋一さん(建築学専攻博士後期1年)

 建築分野以外の方との議論を重ねながら、「ロハスの家3号」の設計から建設まで携わることができ、大変勉強になりました。「ロハスの家」に関わったことや、コンペで他の作品にも触れたことで、パッシブへの意識も高くなりました。大賞受賞は、「ロハスの家」がこれからの時代に必要不可欠であると評価されたもので、嬉しいと同時に、多くの人が関心を持っているテーマであることを改めて認識しました。

 

早川真介さん(建築学専攻博士前期2年)

 自分自身が考えている以上に、扱っているテーマの重さを認識しました。震災によって、再生可能エネルギーの本格的な活用に向かっている中で、実際に今、その研究を体感できる環境にいることは、大変貴重だと思います。難しい課題もたくさんあるかと思いますが、「ロハスの家」がどのような展開を図っていくのか興味深くなってきました。