日本とインドの鉄道開発の国際的プロジェクトに貢献する

  平成29年12月1日に幕張メッセ・国際会議場にて印度工科大学(IIT)同窓会(日本)主催の『Pan-IIT India-Japan Convention(日印コンベンション)2017-進展する持続的なパートナーシップ』が行われ、ゲストスピーカーとして招待された建築学科のサンジェイ・パリーク准教授に感謝状が贈られました。このイベントは、日本とインドの学術、産業、そして政治社会にわたる幅広い領域における可能性を開くことを目的に、日印友好年である2007年から開催されているものです。10周年を迎えた今年は、鉄道・スマートシティの分野に焦点を当て、官民の協業がより一層推進される新たな時機に、鉄道技術展と連携して盛大に開催されることとなりました。そうした記念すべき日印コンベンションに、日本の名だたる企業やインド国鉄などのインド有力組織から招待されたゲストスピーカーの一人として、パリーク准教授も招待されたのです。インド出身のパリーク准教授は、RC(鉄筋コンクリート)構造の実践的な耐震技術の開発や耐久性改善を目指して研究に取り組んでおり、インド国内のコンクリート製品に自己修復技術を応用するための普及活動にも寄与し、インド技術者協会から表彰を受けた実績もあります。また、日本で学ぶインド建設会社の技術者への指導やインド新幹線計画に関わるJR東日本の土木技術者への助言など、多方面から母国インドに貢献しており、その功績は高く評価されています。
 パリーク准教授に、コンベンションでのご活躍や今後の抱負についてお話を伺いました。

 

―日印コンベンションでゲストスピーカーとして招待された感想をお聞かせください。

 まず、このような国と国の代表が会する大きな国際舞台に招待いただいたことを、大変光栄に思います。主催者であるインド工科大学同窓会(日本)代表のサンジーヴ・スィンハ氏とは同じインドのジョドプール出身ということでお会いする機会があり、今回は2023年の開業を目指すインド新幹線計画を主題に行うイベントなので、ぜひ参加してほしいとの依頼をいただきました。ゲストスピーカーにはこの計画に関わる主要な方々が名を連ねており、同じ場で議論し交流を深められ、大変感動いたしました。イベントを通して、どのようにプロジェクトを動かしていくのかが見えてきましたし、その中で研究者としての自分の役割も明確になりました。今後の活動を進めていくうえでの貴重な経験になったと感じております。

 

―講演ではどのようなことをお話されたのですか。

 インフラ工事における新幹線計画の土木技術の見地から講演させていただきました。コンクリート構造体に最も必要なことは耐久性です。新幹線の土台も鉄筋コンクリートで造られることから、長寿命化の構造体であることが必須になります。しかし、インドの現状を見るとメンテナンス体制が貧弱で、特に激しい場合は20年程度で劣化している状況が見られます。脱線や構造物の崩壊などが懸念されるだけでなく、新幹線が走行するルートには2001年に大地震が起きた場所もあり、地震の影響も無視できません。講演の中では、新幹線でこうした問題が起きれば「安全な乗り物」という新幹線ブランドに傷がつく恐れがあると指摘しました。100年以上の使用に耐えうる構造物を造るための対策として、建設時にコンクリートや鉄筋などの素材を適切に使用できるかも重要な鍵を握っています。そこで、鉄筋をステンレスにしたり、自己修復コンクリートにするなどの対策を提案しました。在来鉄道や高速道路以上に、新幹線建設には常に完璧な技術が要求されます。インドにはこれまでにない文化であり、ハードルも高くなりますが、日本との連携により実現は可能だと考えています。

 

―コーディネーターを務めたパネルディスカッション『鉄道開発の技術移転の課題と機会』では、どのようなことを議論されたのですか。

 まず、インド新幹線計画に関わりのある3名のパネリスト、JR東日本国際事業本部インド高速鉄道部門次長の筑井裕之氏、インド国鉄技術ミッション代表のナリナクシュ・S・ヴィヤス氏、国際協力機構(JICA)南アジア部次長の松本勝男氏に、それぞれの分野におけるトピックについて発表していただきました。筑井氏はJR東日本の鉄道建設の現状と運用、そしてインドでの活用の展望について、ヴィヤス氏はインド鉄道事情と高速鉄道計画実行のための調査の動向について説明されました。インド国の高速鉄道における制度整備支援プロジェクトを進めるJICAの松本氏は、どこまで融資しプロジェクトとしてどう関わっていくかという課題を示されました。それぞれのお話を聞き、筑井氏には日本の新幹線の歴史からの想定される問題点を、ヴィヤス氏にはインドでの問題点を尋ねましたが、実際にインドにおいてどのような問題が起きるのかわからない状況で、これからの調査が重要だということがわかりました。JICAの松本氏のお話から、プロジェクトを実行していくうえで、マネジメントについては問題ないという確信が得られました。また、インドの労働者の水準向上が課題としてあげられました。 

 

―これまで研究活動を通して、どのようにインドと関わってこられたのですか。

 インドにおけるCO2削減を目的とした無焼成レンガの作製方法の提案や自己修復技術を応用したインドのコンクリート製品の提案などを行ってきました。インドは住宅もビルもほとんどがRC構造物で、老朽化が問題となっています。私が研究している自己修復コンクリートは、ひび割れすると自動的に特殊な液体が流れ出し、強度を回復させるシステムで、インドではまだ普及していない技術です。2014年にインド技術者協会での講演で発表した際には大変感謝され、功労賞という栄誉ある賞をいただきました。また、研究だけでなく、アドバイザーとして来日したインドの建設会社の技術者に指導を行うなど、教育の面でもサポートさせていただいております。

 

―今後の抱負についてお聞かせください。

 今回コンベンションに参加して、インドの技術者レベルをアップさせるための教育に関与していくことが、私自身の大きな使命だということを強く感じました。それがインド新幹線計画を成功させることにもつながってくるでしょう。インドと日本との最も大きなプロジェクトであり、少しでも貢献できたらと思っております。また、バクテリアを用いた自己修復コンクリートの研究を進めているところで、そうした研究成果をインドの構造物に役立てたいと考えています。

 

―ありがとうございました。今後益々のご活躍を祈念しております。

 

『Pan-IIT India-Japan Convention(日印コンベンション)2017-進展する持続的なパートナーシップ』サイト http://iitjapanconvention.com/jpn/