駅を題材にして、地域の生業や文化の集結点となり
人の賑わいを創出するための建築が高く評価される

 3月28日(火)にせんだいメディアテークで行われた、東北地区の主たる建築系9大学・高専の卒業設計の代表作品が出展する『JIA東北学生卒業設計コンクール2017』(公益社団法人日本建築家協会東北支部主催)で、長谷川周平さん(平成28年度建築学科卒業、浦部研究室)が、優秀賞を受賞しました。6月に行われる全国JIA各支部・地域大会から選抜された卒業設計の優秀作品50数点によるJIA全国学生卒業設計コンクール2017にも出展されます。なお、全国大会への東北の代表枠は2作品ですが、本学部からは4年連続の出展となります。
 現在、長谷川さんは、人と環境に優しい建築をつくる会社に就職し、住宅の設計に携わっています。長谷川さんに受賞の喜びと作品について詳しくお話を伺いました。

 

―優秀賞受賞おめでとうございます。感想をお聞かせください。

 ありがとうございます。このコンクールは、大学4年間の集大成になる卒業設計の作品を通して、社会に自分の思想を問うことができる最後の機会でした。そこで結果を出せたことは、大きな自信になりました。また、これまで先輩方が3年連続で全国大会出場を果たしており、プレッシャーもありましたが、その責任を果たせて良かったと思います。指導教員の浦部智義先生にエスキスをしていただき、大学院生の先輩にもアドバイスをいただきました。後輩にも模型作りを手伝ってもらっていますし、自分一人の力だけではこの作品を完成させることはできませんでした。この場をお借りして、ご協力いただいた方々に感謝の気持ちを伝えたいと思います。

 

―受賞した作品について、詳しく説明いただけますか。

 作品名は、『保原駅・前 ―文化と生業がつくる連続体―』で、福島県伊達市にある阿武隈急行線の保原駅を題材にしています。保原というまちは、私が小・中・高校時代を過ごした場所です。建築はその土地の気候や風土、暮らしぶりといった要素の上に成り立っているもので、卒業設計の題材として自分が育った場所を取り上げるのが相応しいと考えて選びました。かつて、保原は養蚕業で栄えていて、どこの家庭でも営まれていましたが、近代化の波にのまれて衰退してしまいました。現在は干し柿や青果販売などで成り立っていますが、福島市のベッドタウンとしての性格を持った土地のため、生業が見えづらく、地域のイメージや魅力もわかりづらくなってしまった地域でした。そこで、保原駅を拠点として、地域の生業や文化の集結点となり、人の賑わいを創出するための建築を計画・設計し提案しました。
 この場所でしか成り立たない建築にしたいと考えたので、ハードではなくソフト面から計画しました。プログラムの一番のポイントは、駅舎の中に青果市場の機能を持たせたことです。生業である青果の流通、販売を駅の中に組み込むことで、保原に住む人々が地域の魅力を知ることができるようにするためです。朝、通勤・通学する人たちが駅舎を通る時、市場で行われているせりの活気ある様子を横目で見ながら電車に乗り込みます。季節の野菜や果物を無意識のうちに目にすることで、地域の生業を感じることができます。昼間の市場には買物客が訪れたり、イベントが催されたりして賑わいます。市場で余った野菜や果物を使ってジャムやドライフルーツなどに加工できる加工所、それを提供するカフェなどの機能を設定しました。電車を利用しない人たちも駅に集まるようにすることが狙いです。祭りの時には提灯や神輿が飾られたり、秋には干し柿が干されたり、この地域の生活行為や文化によって建築が彩られていきます。市場で働く人や通勤・通学する人自体も生業と文化を表す展示品であると考えました。そこで、駅舎の中で行われている活動を外に表出するように、建物の構造は、面(壁)ではなく、細い線(部材)で設計しました。このような建築計画によって、駅舎から賑わいを取り戻すことができるものと考えました。

【市 場】 余剰空間の活用。

【イベント】 大空間の活用。

【干し柿】 生業を見せる。

【祭 り】 文化を飾る。

 

 

―どのような点が評価されたと思われますか。

 私はこの卒業設計で、「自分がつくりたい建築」ではなく「この場所にあってほしい建築」、「この場所でしかできない建築」を設計しようと考えました。ソフト面から計画したことで、この建築からさまざまなストーリーも生まれました。せりを横目で見ながら電車に乗るサラリーマンのストーリー、青果市場に買い物に来る主婦のストーリー。建築の中にストーリーが思い浮かぶようなところが評価されたのだと思います。今までの自分の作品は小規模なものが多かったのですが、建築内部の活動がわかるように、模型は50分の1のスケールにしました。そのため、製作は大掛かりなものになりましたが、友人や後輩に手伝ってもらい、おかげで迫力のある模型になりました。模型も作品を印象付ける大きな要因になり、評価いただけたのではないかと思っています。

 

―どんなところが建築の魅力ですか。

 その場所その場所で、人それぞれ思い出があるものです。積み重なっていく時間の中で、建築はその場所の風景となり、その人の思い出や記憶の中に残っていきます。建物は劣化していくかもしれませんが、記憶の中の建築は普遍的なもので、その普遍性が建築の魅力だと感じています。小学生の頃にサグラダ・ファミリアの映像を見た時、100年以上の年月をかけて、歴史や世代を超えて人を惹きつける建築の凄さに感動しました。それが建築を学ぼうと思ったきっかけです。高校から建築にとても興味ありましたが、日大工学部に進学し、建築が好きで幅広く学ぼうとする人たちが集まっている研究室で切磋琢磨しながら自分を高めることができたのは、大きな収穫でした。

 

―今後の目標についてお聞かせください。

 現在まで、様々な刺激を受けながら建築を学んで来ましたが、今後、本格的に実務に携わることで、新たな刺激や学びに出会えると思います。また、今までと仕事で得られる知識や経験をバランス良く活かして、地域のために貢献できる人になりたいと思っています。建築士の資格も取りたいと考えています。また、6月に行われるJIA全国学生卒業設計コンクールに向けても準備を進めているところです。特に、東北大会では緊張してあまり上手くできなかったプレゼンテーションを改善しようと考えています。プレゼンボードの質を高めたり、伝え方を工夫したりしています。全国大会で自分がどこまでできるのか、立ち位置を知る良い機会でもありますし、審査員の先生方と直接お話できるチャンスを活かして、自分の考えを問うてみたいと思います。

 

―ありがとうございました。今後の活躍も期待しています。

 

JIA東北学生卒業設計コンクール2017の結果はこちら