福島の文化的復興を目指した郡山「音と楽」施設の

設計が卒業設計コンクールの優秀作品に輝く

 JIA卒業設計コンクール2013image002平成26412()に公益社団法人日本建築家協会東北支部にて「JIA全国学生卒業設計コンクール2014東北支部審査会」が行われ、小林拓也さん(制作当時は建築学科4年で現修士1年,浦部智義研究室)の作品「聴衆の誕生 ―音・楽の器―」が全国大会への出展作品に選ばれました。

 628()に日本全国のJIA各支部・地域大会から選抜された卒業設計の優秀作品50数点による公開審査によるコンクールが東京で開催され、小林さんは東北支部の代表(2作品)として公開審査に臨みます。

 小林さんにコンクールへの意気込みと作品についてお話を聞きました。

 

JIA卒業設計コンクール全国大会出展おめでとうございます。

感想をお聞かせください。

JIA卒業設計コンクールありがとうございます。大掛かりな作品でしたので大変でしたが、ご指導頂いた先生やお手伝いしてくれた後輩たちのおかげで優秀作品にも選ばれることができました。自分が評価されたことも嬉しいですが、何より応援してくれたまわりの人たちに報いることができて本当によかったです。

 

―作品について詳しく説明していただけますか。

 私は福島県出身で、もともと復興に携わりたいと思っていました。震災以来、県外に出ていた人々がようやく郡山に戻ってきて、製造業者や情報関連企業も増えているようです。しかし、子ども目線から見た環境や真の復興(発展)に向けた動きなどは、まだまだ取り組むべき余地があると考えていました。また、震災以前から「楽都郡山」と銘打ってきた郡山市も、それらが根付くためには全体の文化的レベルを上げていく必要があると感じていましたので、人が戻りつつあるこの時期を活かして、それらを掛け合わして文化的レベルの底上げや子ども達の環境など複合的に捉えられる計画を考え、音楽ホールを中心とした建築群の設計を行いました。

 まちなか(中心市街地活性化)を意識しながら市民が日常的に流れるルートを取り込み、ともすれば日常から距離を取り過ぎる施設を日常に取り込める立地としたり、規模・形態も既存施設との競合を避けたり、学生の設計は非現実的なものになりがちなので市の実態に即して無理のないスタディーを心がけました。また、デザインには手こずりましたが、実態という意味では、敷地も含めて、ある程度、車での寄り付きも意識してデザイン的に浮かない規模・形態で一部に駐車場も設けました。

建築としては、968席収容の音楽ホールと可変性のある空間を持つホールが目立ちますが、単に音楽を聴くためだけでなく、補完的に関係する小劇場、子どものため託児所・劇場や遊び場、有名無名に関わらず県外のアーティストを招いてアーティスト・イン・レジデンスを意識した宿泊施設などをお互いに意識し合える形で空間を構成しながら、デザインとしてはまとまりを意識しました。独りよがりの建築デザインはあまり意味がないかも知れませんが、人がまた訪問したくなる建築デザインは必ずあると信じて、造形や空間は少し思いきってデザインした面もあります。

JIA卒業設計コンクール2013image006音楽ホールは、聴衆どうしが意識し合え、訪れるだけでワクワクできるダイナミックなアリーナ型を基本にしながらも、壁のつくり方などスタディーして、間延びしない空間を意識しました。施設内部には様々な用途に対応できるように取り入れた可変ホール部分もあり、内門・中門・外門の3つの門の開閉により空間が変化します。演目によって使い方も自在に可変するホールで、観客も一体的に楽しめる空間にしたいと考えました。そこは体育館(子ども目線で言えば遊び場)としての利用も可能で、広場を使えば屋外ステージにもなります。また、子どもに対しては、託児所や屋内で走り回れる遊び場のみならず、その近くにオープンスタジオなど文化創造系の空間を見える形で配置して、ここに来ることで子どもたちが身近に文化的活動を感じられる仕掛けになっています。その様な細かな仕掛け・デザインの積み上げが、全体の文化レベルの底上げや維持につながると考えました。

これら一連のプログラムの構築や設計に関しては、指導教員である浦部先生の専門分野であったことも大きいと思います。

「聴衆の誕生 ―音・楽の器―」pdf

  

―どのような点が評価されたと思いますか。

JIA卒業設計コンクール2013image008自分なりに解釈すると、復興(将来展望)や日々(日常生活)のリアルな分析と、丁寧に空間をデザインしたことかなと思います。一般的にはあまり大規模な建築がつくられない時代に、少し規模が大きな施設を扱うことになりますので、特に計画する意義と大味な建築にならないように注意はしていました。

また、学内で発表した経験を活かして、審査員の先生方への伝わり方をシミュレーションして、プレゼンテーションの内容も変えました。今回の審査では、4分間の発表の中でいかにわかりやすくコンセプトを伝えるか、ストーリーの組み立ても大切な要素になることを学びました。

 

―全国大会に向けての意気込みをお聞かせください。

 JIA卒業設計コンクール2013image010福島の復興(発展)やそれらを日常の中に取り込む重要性や、特に子ども達の目線で考える文化施設づくりの重要性は伝えたいと思います。その中で、ホールの空間性やデザインで考えたことが上手くプレゼンテーションできれば良いかなと思っています。せっかく全国大会に出展するので、出来るだけ頑張って、色んな方のご意見を聞ければと思います。

 

―これからの目標についてお聞かせください。

 仕事に就く前に、建築を含めた社会をより広い目で捉えて、様々な角度から物事を考えてみたい、そして出来れば未来志向の自分の得意な分野を身につけたいという理由から大学院に進学しました。今は、福島県が仮設から復興に向かう中での住環境の研究を進めています。今回の作品で考えたこともそうですが、少子高齢化など含めて今後の社会構築のために、これからの建築はどうあるべきか、という点においては、復興期の建築はある意味先行している部分もあると思うので、住環境を中心に研究を通してそれらを学んでいければと思っています。

 

―ありがとうございました。今後の活躍も期待しています。

 

JIA全国学生卒業設計コンクール2014東北支部審査会の結果はこちら